2025-01-02

間質性肺疾患

間質性肺疾患による肺高血圧症に対する吸入トレプロスチニル ~INCREASE試験~(Waxman A, et al. N Engl J Med. 2021)

すこし古いのですが、気になったのでピックアップしてみました。Inhaled Treprostinil in Pulmonary Hypertension Due to Interstitial Lung Disease.引用文献トレプロスチニル(Treprostinil)の登場以前、特発性肺線維症(IPF)や間質性肺疾患(ILD)に合併した3群肺高血圧症(PH)に関しては、酸素療法やリハビリテーションが中心であり、特定の薬剤による治療は限定的だったと思います。トレプロスチニルは、プロスタサイクリンの安定した類似体であり、肺および全身動脈血管床の直接的な血管拡張を促進し、血小板凝集を抑制します。1 また、吸入型トレプロストは、第1群肺高血圧症の患者において12週間の治療後に運動能力を改善することが示されています。2 これまでに行われたパイロット研究のデータによれば、吸入トレプロスチニルは第3群肺高血圧症の患者において血行動態および機能的能力を改善する可能性が示唆されています⁹⁻¹²。3 4 5投与経路として、吸入、経皮、静脈注射、経口などがあり、トレプロスト®吸入液は、肺動脈性肺高血圧症...
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Fine-Gray比例ハザード解析(Fine-Gray subdistribution hazard model)ってなあに?

Fine-Grayモデルは、競合リスクを考慮した統計モデルです。Cox比例ハザードモデルと同じく、生存時間分析に用いられますが、競合イベント(例:異なる原因の死亡、治療中止など)が存在する状況で、特定のイベントの発生確率を直接的に評価できる点が特徴です。Fine-GrayモデルとCoxモデルとの違いCoxモデルとFine-Grayモデルは、基本的な考え方や使用するデータ形式が似ています。したがって、大まかな概念は、Coxモデルのページを参照してください<こちら>。ちなみに、両モデルには次のような違いがあります:Coxモデル: 特定のイベントの「ハザード比」を評価する。競合リスクを考慮しない。Fine-Grayモデル: 特定のイベントの「累積発生率」(Cumulative Incidence Function: CIF)を評価する。競合リスクを考慮する。この違いにより、Fine-Grayモデルは競合リスクを含むデータでの解析に適しています。競合リスクについてはこちらのページを参照してください。Fine-Gray解析に必要なデータFine-Grayモデルを適切に解析するには、以下のデータが...
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Cox比例ハザード解析(Cox Proportional Hazards Model)ってなあに?

Cox比例ハザード解析は、ある出来事(イベント)が発生するまでの時間を、さまざまな要因がどのように影響しているかを調べる統計解析の方法です。呼吸器内科では、例えば患者の死亡や症状悪化といったイベントが研究対象になります。Cox比例ハザード解析の概要何を解析するか?Cox比例ハザードモデルは、どの要因(例:年齢、性別、喫煙歴)が、興味あるイベント(例:死亡、発作)の発生リスクにどのように影響を与えるか?を解析するモデルです。特に、時間に対するリスク(ハザード)の相対的な影響(ハザード比)を評価します。解析に必要なデータ影響を与える要因(共変量)患者の基本情報(例:年齢、性別、病状)を「共変量」として使用します。共変量は、イベント(例:死亡、発作)が発生するリスクにどのように影響を与えるかを解析するための変数です。例:年齢、性別、病気の重症度(FEV1、酸素飽和度)、喫煙歴など。Coxモデルでは、基本的にベースライン共変量(観察開始時点での固定された値)を使用しますが、特定の解析では時間依存性共変量(時間とともに変化する値)を含めることも可能です。後者は上級者向けです。イベントの有無:解析...
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競合イベント(Competing Events)ってなあに?

競合イベント(Competing Events)は、研究で関心のあるイベントが発生する前に、他のイベント(競合イベント)が発生することで、興味あるイベントが発生不可能になる状況を指します。例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の急性増悪に関心がある場合、患者が急性増悪を経験する前に死亡した場合、その患者では急性増悪の発生を評価できなくなります。これが競合イベントの典型的な例です。なぜ競合イベントを考慮する必要があるのか?競合イベントを考慮しないと、興味あるイベントの発生確率が過大評価される可能性があります。たとえば、死亡を無視した解析では、「全員が生存している」と仮定するため、実際の臨床現場で観察される確率とかけ離れた結果になります。具体例と競合イベントになる理由COPD患者の急性増悪の累積発症率興味あるイベント: 急性増悪の発生競合イベント: 死亡理由: 死亡した患者は急性増悪を経験することができないため、興味あるイベントが発生不可能になる。IPF患者の肺癌発生の累積発症率興味あるイベント: 肺癌の発生競合イベント: 死亡理由: 死亡すると肺癌の発生を確認する機会が失われるため。肺...
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一般化可能性(Generalizability)と過適合(overfitting)ってなあに?

臨床研究などである疾患におけるリスク因子を同定するとき(例えば、IPFにおける死亡リスク因子)やバイオマーカーやAI、診断モデルの開発では、「開発(探索)コホート」と「検証コホート」を分けて解析を行うことが一般的です。まず、開発コホートでリスク因子の同定やモデル構築を行い、検証コホートでそれが機能するかどうかを確かめます。その目的は、モデルや結果の一般化可能性を確保し、過適合を防ぐことにあります。以下では、これらの概念を解説します。一般化可能性(Generalizability)とは?一般化可能性とは、モデルや研究結果が新しいデータや異なる集団に対しても同じように適用できる能力を指します。つまり、「特定のデータセットや環境だけでなく、他の状況でも有効に機能するか」を評価する概念です。なぜ一般化可能性が重要なんでしょうか?一般化可能性が高い研究やモデルは、リアルワールドのさまざまな状況で有用であり、信頼性の高い結果を提供します。逆に、一般化可能性が低い場合、そのモデルや結論は特定の環境に依存しており、新しいデータでは役に立たない可能性があります。具体例臨床研究例: ある薬の効果を調べる臨...
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