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【研修医・医療職一般・患者さん向け】パルスオキシメーターでSpO₂が低く出る原因


今日は、臨床でよく使う パルスオキシメーター(SpO₂測定) についてお話しします。

患者さんに 重症感がないのにSpO₂が低く表示される ことがあり、「あれ?低酸素かも!?」と焦ることがありますよね。しかし、実は 測定誤差 が原因のことも少なくありません。

今回の内容は、特に 看護師さんや研修医の皆さんにおすすめ ですが、これから医療職を目指す学生さんや 患者さん自身にとっても重要な情報 です。ぜひ、臨床の場で役立ててください!


まず、パルスオキシメータって何のために使うの?

✅ 動脈血の酸素飽和度(SpO₂)を測定する!
✅ 低酸素(hypoxia)の早期発見に役立つ!
✅ 呼吸状態のモニタリングに必須!


📌 具体的な使用シーン

  1. 低酸素血症のスクリーニング
    • 呼吸困難、肺炎、心不全、ショックなどでSpO₂が低下(例:SpO₂ < 90%) していないかチェック!
  2. 酸素療法の効果判定
    • 酸素投与(O₂ 2L, 5Lなど)の前後でSpO₂が改善するか確認
    • SpO₂ 92-96%を目標に調整する(COPDでは88-92%)。
  3. 周術期・鎮静時のモニタリング
    • 麻酔や鎮静下で低酸素になっていないかをリアルタイムで確認。
    • 手術・鎮静時はSpO₂モニターが必須!
  4. 急変対応(CPA, ショックなど)
    • 心肺停止やショック状態での呼吸評価(ただし脈がないと測定不能)。
    • 人工呼吸器装着中の患者では、SpO₂低下が換気異常のサインになる。

パルスオキシメータの基本原理

パルスオキシメータは 「光」 を使って、血液中の 酸素飽和度(SpO₂) を測定する装置です。

フクダ電子ホームページより引用

📌 仕組みはたったの3ステップ!

  1. 2種類の光を当てる
    • 赤色光(660nm) と 赤外線(940nm) を指に照射。
  2. ヘモグロビンが光を吸収する
    • 酸素と結合したヘモグロビン(HbO₂) は 赤外線を吸収 しやすい。
    • 酸素を持っていないヘモグロビン(Hb) は 赤色光を吸収 しやすい。
  3. 光の吸収量の違いを計算してSpO₂を算出!
    • 動脈血の拍動による変化を利用し、動脈血だけの酸素飽和度を測定。

なぜ動脈血だけ測れるのか?

光は皮膚や静脈血も通過しますが、動脈血は脈拍によって血流量が変わるため、それを利用して動脈血の酸素飽和度をピックアップしています。だから「パルスオキシメータ」なんですね。

パルスオキシメータがどのようなもので、何の目的で使用するのか、ご理解いただけたでしょうか?
次に、実際には低酸素でないのにSpO₂が低く表示される原因について解説します。

末梢循環不全(低灌流)

パルスオキシメーターは 動脈の拍動を感知 して測定するので、末梢の血流が悪いと正しく測定できません。

🔍 確認方法

パルスオキシメータの脈拍波形を確認 → 波形が乱れている or 低くなっている場合は測定誤差の可能性大
橈骨動脈や大腿動脈を触れる → 末梢が冷たく、触知が弱いなら低灌流の可能性

重要
低酸素もそうですが、むしろショックでないか注意しましょう!!
血圧などのバイタル測定を行って評価しましょう。

🔧 対処法

温める → ブランケットや温罨法で指を温める
測定部位を変更 → 耳たぶや鼻翼で測定すると改善することも
原因疾患の治療 → ショックなら補液・昇圧薬、敗血症なら抗菌薬、心不全なら強心薬や利尿薬


測定部位の問題

測定部位の影響で誤差が生じることがあります。

🔍 確認方法

指を変えて測定
→ 低く出た場合は別の指や耳たぶで再測定 血流がよい指を選んで測定してみて下さい。
基本的には爪の血色がよい指を選ぶとよいでしょう。
マニキュアやジェルネイルをつけてないか?
→ マニキュアが透過光を吸収するため、光を用いて測定するパルスオキシメータへの影響が大きいです。
特に濃い色や金属成分を含むものは影響大です。

🔧 対処法

人差し指がだめなら別の指で測定する
ネイルがある場合は爪の横側や耳たぶで測定
圧迫を避けるため、指をリラックスさせて測定
動かさないように患者に説明し、測定時に静止してもらう


体内の異常ヘモグロビン

パルスオキシメーターは 通常の酸素化ヘモグロビン(HbO₂)と還元ヘモグロビン(HHb) を識別しているため、異常ヘモグロビンの影響を受けます。

CO中毒 vs. メトヘモグロビン血症の検査まとめ

項目CO中毒メトヘモグロビン血症
主な原因吸入(火災、排気ガスなど)薬剤・化学物質によるヘモグロビン酸化など
主要検血ガスでCOHb%測定血ガス検でMetHb%測定
COHb%上昇(>10%)
MetHb%上昇(>3%)
PaO₂正常 or 高値正常
SaO₂低いことがある低い
SpO₂正常 or 高め(過大評価される)低い
乳酸高値(組織低酸素の影響)通常は変化なし
特徴的な症状頭痛、めまい、意識障害、心筋虚血チアノーゼ、呼吸困難、チョコレート色の血液
血液の色普通(赤色)チョコレート色(暗褐色)

強い動揺や心房細動 (Af)

意外と盲点! 心房細動などの不整脈では 脈が不規則 なのでSpO₂の測定精度が低下します。

🔍 確認方法

✅ 脈拍とSpO₂の表示を比較 → 測定値がバラバラならAfや不整脈の可能性
✅ 心電図(ECG)でリズムをチェック

🔧 対処法

✅ 複数回測定して平均値をとる → 1回の測定では誤差が大きいため
✅ 動脈血ガス(ABG)でSaO₂を測定 → SpO₂が低くても、ABGでPaO₂が正常なら測定誤差の可能性大
✅ 心房細動が強い場合は心拍数コントロール(β遮断薬やCa拮抗薬)
✅ 我慢強く待っていると数値が安定することもある。


測定機器のトラブル

機器の問題で誤った数値が表示されることもあります。

🔍 確認方法

別のパルスオキシメーターで測定して比較
バッテリー残量を確認
センサー部分の汚れや劣化をチェック


まとめ

SpO₂が低く出たときは、すぐに低酸素と決めつけず、測定誤差を疑うことが大事 です!

原因確認方法対処法
① 末梢循環不全脈拍波形・橈骨動脈触知末梢を温める・測定部位変更・原因疾患治療
② 測定部位の問題指を変える・ネイルや圧迫の有無を確認爪の横や耳たぶで測定・動かないよう指示
③ 異常ヘモグロビンCo-oximetry(ABG)で測定CO中毒なら酸素投与、メトHbならメチレンブルー
④ 不整脈(AFなど)脈拍とSpO₂を比較・ECG確認複数回測定・ABGで確認・心拍数コントロール
⑤ 機器のトラブル別の機器で測定・バッテリー確認接触不良改善・バッテリー交換・メンテナンス

✅ 臨床でSpO₂が低く出たときのチェックリスト!

1️⃣ 末梢循環が悪くないか?(冷たくない?ショックじゃない?)
2️⃣ 測定部位に問題はないか?(ネイル・圧迫・動き)
3️⃣ 異常ヘモグロビンが原因では?(CO中毒・メトHb)
4️⃣ 不整脈で測定誤差が出ていないか?(AF・VT・PVCs)
5️⃣ 機器が正常に動作しているか?(バッテリー・接触不良)

これらを確認すれば、本当に低酸素なのか、測定誤差なのか を見極められます!
臨床の場で落ち着いて判断し、正確な評価ができるようにしましょう!💪✨

それでは、今日も頑張ってください!🚀

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