Effect of Admilparant, an LPA1 Antagonist, on Disease Progression in Pulmonary Fibrosis. Michael Kreuter, Toby M. Maher, Wim A. Wuyts, et al. CHEST 2025.
はじめに

特発性肺線維症(IPF)や進行性肺線維症(PPF)は、進行すると肺の線維化が進行していく疾患です。従来の薬でも進行を完全に止めることは難しく、新たな治療薬が求められています。
2025年、CorteらはLPA1という受容体をブロックする新しい薬「Admilparant」が、肺機能の低下を抑える可能性があると報告しました。1
詳細は以前の記事<肺線維症におけるLPA1拮抗薬Admilparantの有効性と安全性:第2相ランダム化臨床試験>をご参照ください。

今回の研究は上記の研究の二次解析になります。
この薬が疾患の進行を遅らせる効果(FVC低下だけでなく、急性増悪や入院、死亡などのリスク低下)を持つかもしれないことが示されています。
背景
特発性肺線維症(IPF)および進行性肺線維症(PPF)は、不可逆的な肺機能低下と早期死亡に関連する慢性線維性間質性肺疾患である。
Admilparant(BMS-986278)は、IPFおよびPPF治療のために開発中の経口LPA1受容体拮抗薬である。
目的
IPFまたはPPF患者における疾患進行までの時間に対するAdmilparantの効果を評価する。
方法
第2相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験にて、IPFおよびPPFの患者をそれぞれ1:1:1で30mg群、60mg群、プラセボ群に割り付け、26週間にわたり1日2回投与した。
背景治療として抗線維化薬の併用は許可された。
疾患進行は、FVCの相対的10%以上の低下、急性増悪、全原因による入院、全死亡の複合評価で定義された。
結果
IPF患者255例、PPF患者114例が登録された。
ベースラインの%FVC中央値はIPFで77.3%、PPFで64.7%。
60mg Admilparant投与は両群において疾患進行のリスクを有意に低下させた(IPF: HR=0.54、PPF: HR=0.41)。
サブグループ解析でも一貫した傾向がみられた。
結語
AdmilparantはIPFおよびPPFの病勢進行を遅延させる可能性があり、第3相試験による更なる検討が支持される。

まとめたいと思います!!
まとめ
🔹対象
- IPF患者:255名
- PPF患者:114名
🔹主要評価項目:26週時点の疾患進行までの時間
- 疾患進行:VCの10%以上低下、急性増悪、全原因入院、全死亡のいずれかが生じること
(つまり、これらの複合アウトカム)
🔹60mg Admilparantの効果(vs プラセボ)
疾患群 | ハザード比(HR) | 95%信頼区間 |
---|---|---|
IPF | 0.54 | 0.31–0.95 |
PPF | 0.41 | 0.18–0.90 |
→ いずれも疾患進行リスクが有意に低下。
🔹サブグループ解析(%FVC中央値で層別)
- 軽症例(%FVC高値群)でも重症例(低値群)でも一貫して効果あり
- 特に重症群ではプラセボとの差が顕著でした
🧪 新規性
Admilparantは、新しいメカニズム(LPA1拮抗)に基づくファーストインクラスの経口薬であり、以下の点で新規性があります。
- 従来薬と異なる標的(抗TGF-βやVEGFではない)
- IPFとPPFを同一試験で並行解析(並列コホート)
- PPF群において、背景治療の有無やUIPパターンの有無にかかわらず効果を示した
先行研究では第1世代LPA1拮抗薬(BMS-986020)が肝毒性で開発中止になった経緯がありましたが、Admilparantはそれとは異なる構造であり、より安全性に優れる可能性があります。
🛠 改善すべき問題点
- 長期的アウトカムが未評価:26週では、死亡や入院といったイベントの真の頻度が評価困難です。
- イベント数が少なく、統計的パワーが限定的
- 複合アウトカムの定義に含まれる「入院」というのが非特異的な基準であること
- 免疫抑制併用例の詳細データが不足(特にPPF)

この研究は、IPFとPPFに対して新しい作用機序の薬がFVC低下だけでなく、疾患の進行(急性増悪や死亡を含んだ複合エンドポイント)を抑える可能性を示しました。
ただ、これは第2相試験の結果。
先日の呼吸器学会でLuca Richeldi先生も言ってましたが、第2相で良くても第3相で全然ダメな薬もあるので、まだ最終結果がでるまでは油断はできませんね…。
- Efficacy and safety of admilparant, an LPA1 antagonist, in pulmonary fibrosis: a phase 2 randomized clinical trial.Corte TJ, Behr J, Cottin V, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2025;211(2):230–238. ↩︎