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いろいろ解説

裏ワザ:疑似ネーザルハイフロー

15LリザーバーマスクでもSpO₂が上がらない…

そんなときは、さらにカヌラ5Lを同時併用。

『疑似ネーザルハイフロー』 ERや病棟の急変対応で、ハイフローにつなぐまでの―― 一手先を行く“つなぎの裏技”です。

この方法でFiO₂は理論上上昇しますが、PEEPは上昇しません。

あくまでも“疑似”ネーザルハイフローであり、陽圧の追加は期待できないでしょう。

とはいえ、15L/分のリザーバーマスクに5L/分のカヌラを併用することで、FiO₂は理論上上昇します。

さらに、仮に20L/分のリザーバーマスクが存在した場合と比較しても、FiO₂がより高くなる可能性があります。

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なぜか?

本来であれば、FiO₂は吸気1回あたりの流速の影響を受けますが、ここでは理解を簡便にするため、呼吸困難で分時換気量30L/分に上昇した患者さんですが、『呼吸流速が一定』で『呼気の再吸入がない』という理想的な条件モデルで説明します。

FiO₂の理論値比較(分時換気量30L/分のモデル)

  • 15L/分リザーバーマスク単独 吸入ガス:
    100%酸素15L + 室内空気(21%酸素)15L → 理論FiO₂:約60.5%
  • 15L/分リザーバー+5L/分カヌラ併用 吸入ガス:
    100%酸素20L + 室内空気10L → 理論FiO₂:約73.7%

分時換気量30L/分に対して、酸素の供給量が不足すると、足りない分は室内空気で補われることになり、その結果、吸入酸素は希釈されます。

一方で、供給される純酸素の絶対量が増えることで、相対的に空気による希釈の割合が減少し、FiO₂は高くなるという理屈です。 したがって、分時換気量が小さい患者ほど空気の混入が少なくなり、FiO₂は理論上100%に近づくことになります。

カヌラ併用による追加的メリット

高換気量の患者における酸素供給の補完

リザーバーマスクは一回吸った後にマスク内への酸素チャージが必要ですが、換気量が多い場合にはリザーバーバッグへのチャージが追い付かない場合があります。

しかし、この場合、マスク内のカヌラから直接酸素が供給されることで、酸素チャージ不足をある程度補えます。

リザーバーマスクがお休み中カヌラが頑張ってくれているわけです。

複数ルートからの酸素投与によるメリットですね。

マスク内酸素濃度の持続的な上昇

呼気中にも酸素が供給されることで、マスク内FiO₂を安定的に高めやすくなる。

デッドスペースガスの洗い出し

カヌラ酸素がマスク内や鼻腔の死腔ガスを押し出し、再呼吸ガスを減らす効果が多少あります。

このような機序により、仮に酸素20L/分のリザーバーマスクが存在していたとしても、15Lリザーバー+5Lカヌラ併用には独自の理論的優位性があると考えられます。

まとめ

もちろん、ここで述べた内容は理論的な条件下(再吸入なし・流速一定)でのFiO₂の推定であり、実際のFiO₂は患者の呼吸様式、マスクのフィッティング状況、口呼吸の有無などによって変動します。

しかし実臨床では、この方法を用いることでSpO₂が上昇する場面が多く経験されており、特にネーザルハイフローの準備が整うまでの「つなぎ」として非常に有用です。

  • セットアップが簡便で、
  • 実施中のリスクもほとんどなく、
  • 酸素化改善が期待できる

という点から、“低リスクかつ即効性のある裏技”として、ERや病棟での酸素化不良時に覚えておくとよいテクニックだと思います。

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