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肺癌や悪性腫瘍論文紹介

免疫チェックポイント阻害薬治療後の晩発性の有害事象とは?

今回は、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療後に「かなり時間が経ってから」発症する免疫関連有害事象(irAEs)について、注目すべき論文を解説します。

Durbin SM, et al. “Late-Onset Immune-Related Adverse Events After Immune Checkpoint Inhibitor Therapy.” JAMA Network Open. 2025;8(3):e252668.

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はじめに

ICIは、がん治療に革命をもたらしましたよね。
最近では、進行がんだけでなく、手術後の再発予防や、手術前の治療(ネオアジュバント)でもICIが使われることが増えています。

しかし、ICI治療で気をつけなければならないのがirAEsです。
これまでの臨床試験では、「治療開始後6か月以内」に起こるirAEsが主に注目されていました。

でも最近は、
✅ 治療開始から半年以上たってから
✅ あるいはICIをやめてだいぶ経ってから
発症する”晩発性irAEs“も問題になってきています。

そこでこの研究では、
「晩発性irAEsの頻度はどれくらい?どんな患者に起こりやすい?」
を明らかにしようとしました。

重要性

ICIの使用は増加しているが、irAEsの頻度や、それに関連する患者特異的なリスク因子についてはほとんど知られていない。

目的

持続性または新規発症の晩発性irAEsによる入院の発生率を評価し、晩発性irAEsのリスクに関連する患者因子を特定すること。

デザイン、セッティング、対象

2011年1月から2022年10月までにICIを投与され、irAEによって米国の学術医療センターに入院した患者を対象とした後ろ向き観察コホート研究である。

除外基準は、院外でのICI投与または入院時にirAE診断がなかったことである。

データ解析期間は2022年11月15日から2025年1月8日である。

曝露因子

晩発性irAEs

主なアウトカムと測定項目

主なアウトカムは以下の2点である。

(1) ICI開始からの期間別(0~6か月、6~12か月、12か月超)におけるirAEによる入院の発生率
(2) 晩発性irAEsのリスクに関連する患者因子

結果

795人のirAEで入院した患者の中央値年齢は67.3歳(四分位範囲58.3-74.8歳)、59.9%が男性であった。

65.0%は抗PD-L1または抗PD-1単剤療法を受けており、主な適応はメラノーマ(42.1%)と肺癌(21.0%)であった。

ICI開始から入院までの中央値は2.7か月であり、6~12か月後に14.7%12か月超後に10.8%が入院した。

特に腎臓(31.3%)および血液系(21.7%)のirAEsは晩発性で発症する傾向がみられた。

単変量解析において、ICIの種類はirAE入院時期と有意に関連し、
抗PD-L1ベース療法患者の13.5%が晩発性であったのに対し、
抗CTLA-4併用療法では5.4%であった(P<0.001)。

また、周術期療法を受けた患者は、転移性疾患の患者に比べて中間期(6~12か月)の入院が多かった(23.5% vs 12.8%、P=0.03)。

さらに、晩発性irAEs患者では直近60日以内にICI投与を受けていない割合が高かった(26.4%、P<0.001)。

結語

この後ろ向き観察研究により、ICI開始から何年も経過した後でもirAEsが発症しうることが示された。

ICI使用が拡大し生存期間が延長する中で、臨床医は治療開始からの経過期間にかかわらずirAEsの発症に注意を払い続ける必要がある。

晩発性irAEsのリスク因子および基礎となる免疫学的経路をより深く理解するために、さらなる研究が必要である。


解説しつつ、まとめたいと思います!!

研究の概要

  • 対象:2011年〜2022年にICIを受けたがん患者のうち、irAEで入院した795例
  • 方法
    • ICI開始から入院までの期間で、
      • 0〜6か月(早期)
      • 6〜12か月(中間期)
      • 12か月以上(晩期)
        に分類
    • 晩発性irAEsのリスク因子も分析
  • 施設:米国・マサチューセッツ総合病院(MGH)

主な結果まとめ

それでは、気になる結果を見ていきましょう!

① 晩発性irAEの頻度は?

  • 6〜12か月後に入院した患者:14.7%
  • 12か月以上経ってから入院した患者:10.8%

つまり、ICI開始から半年以上たっても4人に1人くらいがirAEで入院しているのですね!


② どんな臓器のirAEが晩発性で多い?

晩発性に発症しやすかった臓器は、

臓器晩発割合
腎臓31.3%
血液系21.7%
リウマチ性疾患15.4%

特に腎障害は要注意ですね。
一方、心臓や神経のirAEも発症はしますが、多くは早期に起こる傾向がありました。


③ どんな治療の患者に晩発性が多い?

  • 抗PD-L1単剤療法を受けた患者で晩発性が多かったです(13.5%)
  • 抗CTLA-4併用療法では晩発性は少なめ(5.4%)

また、周術期治療(手術の前後)でICIを受けた患者は、半年〜1年の間にirAEで入院しやすい傾向がありました。


④ 治療が終わったあとでも油断禁物!

晩発性irAEで入院した患者のうち、約半数近くはICI治療をすでに中止していたこともわかりました。

つまり、
「治療が終わったからもう安全!」
ではないのですね…。

患者さんにも、「治療後しばらくたっても副作用が出る可能性がある」と伝えておく必要がありそうです。


この研究からわかること

この研究は、次のことを教えてくれました。

🔵 ICI治療後、半年以上たっても重篤なirAEが起こるリスクがある
🔵 特に腎障害や血液障害は晩発性に注意
🔵 抗PD-L1単剤治療では晩発リスクが高いかも
🔵 治療終了後でもirAEを疑う意識を持つことが大事

今後、晩発性irAEの予測因子やバイオマーカーを探る研究が進めば、もっと個別化医療ができそうですね!


この研究の限界

もちろんこの研究にも限界はあります。

  • 単施設・後ろ向き研究なので、一般化には注意が必要です。
  • 重症例(入院例)しかカウントされておらず、軽症例は含まれていません。
  • irAEのグレード(重症度)までは評価されていません。

とはいえ、晩発性irAEに焦点を当てた大規模データは非常に貴重ですね。


まとめ

この論文は、「ICI治療後、たとえ何年経ってもirAEは起こりうる」ということを改めて示しました。

🔵 治療が終わった患者さんでも、何か異常があれば「irAE再燃かも?」と疑う。
🔵 特に腎障害、血液障害が遅れて出る可能性を頭に置く。
🔵 ICI単剤療法後の晩発リスクに注意する。

こうした視点が、これからますます大切になってきますね!

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