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肺癌や悪性腫瘍論文紹介

肺がんにおける間質性肺異常(ILAs)の有病率と予後的意義のメタアナリシス

最近、CT検診で偶然見つかる“間質性肺異常(ILAs)”が注目されていますよね。

「ILAsがあるからといって、どうすればいいの?」
「ILAsって肺がんと何か関係あるの?」

そんな疑問に、今回の論文が明確に答えてくれます!

Prevalence and prognostic significance of interstitial lung abnormalities in lung cancer: A meta-analysis. uiyuan Yang, Haoyu Wang, Dan Liu, Weimin Li. Lung Cancer 2025.

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はじめに

皆さんは、肺がんスクリーニングの胸部CTで偶然見つかる「間質性肺異常(ILAs)」という所見をご存知でしょうか?

ILAsとは、5%以上の肺野にすりガラス影や網状影などの異常陰影が存在する状態を指します。

近年、低線量CTによる肺がんスクリーニングが進むにつれて、ILAsの検出機会が増えています。

本研究では、肺がん患者におけるILAsの有病率と、その後の治療転帰や生存に与える影響を、24件の研究を対象としたメタアナリシスで明らかにしています。

背景

肺がんスクリーニング(LCS)の普及により、CT検査で偶発的に発見される所見が増加しており、特にILAsが注目されている。

ILAsと肺がんの関係については複数の研究で報告されているが、その関連性は包括的には検討されていない。

目的

肺がんにおけるILAsの出現頻度と、それが肺がんの予後に与える影響を明らかにすること。

方法

PubMed、Web of Science、Embase、Scopusを用いて関連研究を検索した。

有病率、オッズ比(OR)、ハザード比(HR)をプール解析し、ILAsの有病率と肺がんにおける臨床転帰との関連を評価した。

本研究はPRISMAに準拠し、PROSPEROに登録された。

結果

合計24件、7859例の研究を含めた。

ILAsの未補正有病率は17%(95%CI: 13%-21%)、補正後は9%(95%CI: 6%-13%)であり、

画像パターンとしては網状影とすりガラス影が主要であった。

ILAsは、

  • 肺がんの全生存期間(OS)の短縮と関連し(HR = 2.01, 95%CI: 1.71–2.36)、
  • チェックポイント阻害薬関連肺炎(CIP: OR = 2.86, 95%CI: 1.42–5.75)、
  • 放射線肺臓炎(RP: OR = 2.98, 95%CI: 1.39–6.38)

のリスク増加とも関連した。

結語

ILAsは肺がん患者の治療転帰および生存に悪影響を及ぼす無視できない所見である。

診断・治療においてILAs保有患者への注視が必要であり、胸部CTでのILAsの標準化された識別と報告が重要である。


このあと、解説しつつ、まとめたいと思います!!

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🔎 ILAsって何だっけ?

ILAsとは、間質性肺疾患(ILD)と診断されていない人に見られる、肺野5%以上に広がる非依存性の異常陰影のことです。
たとえば、こんな画像所見👇

  • すりガラス影(GGA)
  • 網状影(reticulation)
  • 牽引性気管支拡張
    などなど。

ざっくり言うと、「肺線維症の手前かもしれない所見」と理解するといいですね。


🧪 この研究でわかったこと!

✅ 肺がん患者の約1割にILAsがある!

  • ILAsの未補正の有病率:17%
  • 出版バイアスなどを補正すると:9%

つまり、10人に1人の肺がん患者がILAs持ちということになります。見逃せませんね。

✅ サブタイプ別では…

  • subpleural fibrotic ILAs:12%(最多)
  • 主なCT所見はすりガラス影と網状影

肺がんの早期でも進行期でも出現しますが、進行期のほうがやや多めでした。


⚠️ ILAsがあるとどうなるの?

ここからが本題です。

❗ 全生存期間(OS)が短くなる

  • ILAsあり:HR = 2.01(=死亡リスクが約2倍)
  • 早期肺がんではさらに顕著(HR = 2.63)

❗ 免疫療法・放射線療法の副作用が増える

  • 免疫チェックポイント阻害薬関連肺炎(CIP):OR = 2.86
  • 放射線肺臓炎(RP):OR = 2.98

ILAsがあると、肺がん治療後の“副作用”が出やすいというわけですね。


🧠 どうしてILAsが肺がんに影響するの?

ILAsの多くは肺線維症の初期像や前段階と考えられています。

肺線維症の背景には炎症や線維化に関連するサイトカインが関与していて、それが腫瘍の発生や進行に関係する可能性があると言われています。

また、一部のILAs(とくにsubpleural fibrotic type)は、IPFの前段階もしくは軽度の段階ということも考えられます。


💡 じゃあどうすればいい?

ILAsが肺がんに与える影響を考えると、以下のような対応が重要になります。

📌 術前評価では…

  • ILAs(特にsubpleural fibrotic型)を見逃さないこと!
  • 術後肺合併症のリスクとして評価しておくと◎

📌 免疫療法・放射線療法を使う前には…

  • ILAsの有無で副作用のリスクを見積もることが必要
  • 必要なら、呼吸器内科での事前評価や共同フォローも検討しましょう

📉 この研究の限界は?

  • 全て後ろ向き研究で、前向き研究はゼロ
  • 主にNSCLCのデータで、SCLCの情報は不足
  • ILAsのタイプ別の予後差までは詳しく評価できていない

今後は、より詳細な解析や前向き研究が必要ですね。


📢 まとめ:ILAsは“見逃さないべき所見”に!

この研究を通して、私たちは次のように認識をアップデートすべきです。

  • 「ILAsは肺がんのリスク因子・予後因子である」
  • 「CTでILAsを見つけたら、それを“情報”として活用すべき」
  • 「治療選択・リスク評価にも関わる重要なファクター」

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