間質性肺疾患論文紹介

悪性腫瘍患者における細胞障害性抗がん剤による薬剤性肺炎とILAとの関連性(Oishi, et al. Respir Med. 2024)

Association of interstitial lung abnormalities with cytotoxic agent-induced pneumonitis in patients with malignancy

  • 最近はInterstitial lung abnormalities(ILA)に注目しているのでいろいろジャーナルを見ていたらこんな論文がArticle in pressになっていました。
  • ちなみにILAとは、「臨床的に間質性肺疾患(ILD)が疑われていない患者で偶然に発見される、ILDに適合する可能性があるCTの所見 (Hatabu et al. Lancet Respir Med 2020)」を指しています。
    • ground-glass abnormalitiesやreticular abnormalities、lung distortion、traction bronchiectasis、honeycombing、およびnon-emphysematous cystsを含む非依存性異常が偶発的に発見されること、
    • 肺の領域(上部、中部、下部の肺領域は大動脈弓下縁および右下肺静脈のレベルで区分される)の少なくとも5%を含むこと
    • ILDが疑われていない個人を対象とすること
  • ILAは分布や所見から以下の3つに分類されます。
    1. 非胸膜下型:胸膜下優位な局在ではないILA
    2. 胸膜下非線維化型:胸膜下優位な局在で、線維化がないILA
    3. 胸膜下線維化型:胸膜下優位な局在で、線維化の所見があるILA

ILAがあると放射線性肺臓炎の発症リスクが高まるとか1 2、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)治療で薬剤性肺炎の発症リスクが高まるなどの報告3 4はありますが、ふつうの細胞障害性抗がん剤ではどうなのかは確かに論文なかったですね。

研究の背景と目的

ILAは、薬剤性肺炎(DRP)を含むさまざまな状態や疾患と関連があることが報告されています。しかし、悪性腫瘍の標準治療の一つである細胞障害性抗がん剤を用いた化学療法を受ける患者において、ILAの存在がDRP発症に与える影響については不明な点が多く、早急な検討が必要である。

方法

  • 悪性腫瘍と診断され、細胞障害性抗がん剤(免疫チェックポイント阻害剤[ICI]を併用または非併用)で治療された患者を連続的に登録した。
  • Gray法および多変量Fine-Gray部分比例ハザードモデル解析を用いて、DRP(CTCAEのグレード3以上)の累積発生率と、ILAの存在とDRP発症リスクとの関連性を評価した。

主な結果

  • 786人の全患者のうち、58人(7.3%)がILAを有していた。
  • ILAを有する患者は、ILAを有さない患者と比較して、高齢で男性が多く、喫煙歴が多い傾向が見られた。
  • 細胞障害性抗がん剤(ICI併用または非併用)によるDRPの90日累積発生率は、ILAを有する患者で有さない患者よりも有意に高かった(6.0%対1.2%、p = 0.006)。
  • 年齢、性別、喫煙歴で調整した多変量解析では、ILAの存在は細胞障害性抗がん剤(ICI併用または非併用)によるDRP発症リスクの増加と関連していた(HR 3.11、95%CI 1.06–9.14、p = 0.039)。
  • 細胞障害性抗がん剤単独の場合も同様の関連性が認められた(HR: 5.53、95%CI: 1.55–19.7、p = 0.008)。

結論

ILAの存在は、細胞障害性抗がん剤を用いた化学療法を受ける患者におけるDRP発症リスクの増加と関連していることが明らかになった。
細胞障害性抗がん剤を含む化学療法レジメンを決定する前に、ILAの存在を評価することが推奨される。

細胞障害性抗がん剤を使うときも、前もってILAに該当しないか確認したほうがいいですね。ILAがあれば薬剤性肺障害リスクが高い薬剤使うの控えた方がよいかも。

  1. H. Kobayashi, K. Wakuda, T. Naito, N. Mamesaya, S. Omori, A. Ono, H. Kenmotsu, H. Murakami, M. Endo, H. Harada, Y. Gon, T. Takahashi, Chemoradiotherapy for limited-stage small-cell lung cancer and interstitial lung abnormalities, Radiat Oncol 16(1) (2021) 52. ↩︎
  2. F. Li, Z. Zhou, A. Wu, Y. Cai, H. Wu, M. Chen, S. Liang, Preexisting radiological interstitial lung abnormalities are a risk factor for severe radiation pneumonitis in patients with small-cell lung cancer after thoracic radiation therapy, Radiat Oncol 13(1) (2018) 82. ↩︎
  3. K. Shimoji, T. Masuda, K. Yamaguchi, S. Sakamoto, Y. Horimasu, T. Nakashima, S. Miyamoto, H. Iwamoto, K. Fujitaka, H. Hamada, S. Takeno, M. Hide, J. Teishima, H. Ohdan, N. Hattori, Association of Preexisting Interstitial Lung Abnormalities With Immune Checkpoint Inhibitor-Induced Interstitial Lung Disease Among Patients With Nonlung Cancers, JAMA Netw Open 3(11) (2020) e2022906. ↩︎
  4. M. Petranovic, S. McDermott, S. Mercaldo, B.P. Little, A. Graur, K. Huang, F.J. Fintelmann, S.R. Digumarthy, J.F. Gainor, Impact of Baseline Interstitial Lung Abnormalities on Pneumonitis Risk in Patients Receiving Immune Checkpoint Inhibitors for Non-Small-Cell Lung Cancer, Clin Lung Cancer 24(8) (2023) 682-688.e5. ↩︎
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