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間質性肺疾患いろいろ解説深掘り

過敏性肺炎④~線維性過敏性肺炎(fHP)の画像診断をマスターしよう!

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過敏性肺炎(HP)は、反復する抗原吸入によって誘発される免疫性びまん性肺疾患であり、2020年ガイドラインでは、非線維性(nonfibrotic HP)線維性(fHP)に分類されました。

fHPは、びまん性肺疾患の中でも診断が難しい疾患の一つ。
とくに画像所見は特発性肺線維症(IPF)など他のILDと非常に似ることがあり、確定診断には“画像+病歴+BAL+病理”の総合評価が不可欠です。

ここでは、2020年のATS/JRS/ALATガイドラインに基づいて、fHPに特徴的なHRCT画像所見をわかりやすく解説します。(非線維性HPについては別の記事で掘り下げています。)

尚、本記事は、前回の記事「過敏性肺炎②~画像所見の読み解き方~」の内容を踏まえて構成しています。未読の方は、ぜひ先にそちらをご一読いただくことをおすすめします。

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線維性過敏性肺炎とは?

線維化所見を伴わない非線維性HPとは異なり、
fHPは線維化を主体とする慢性進行性の病型であり、IPFや非特異的間質性肺炎(NSIP)、分類不能型間質性肺疾患(unclassifiable ILD)、膠原病関連ILD(CTD-ILD)など、他の線維化を伴うILDとの鑑別が極めて重要です。

そのため、単に“線維化がある”というだけではHPとは診断できず、「HPらしさ」を画像からどう拾うかが鍵になります。

再燃症状軽減型 vs 潜在性発症型とは?

非線維性HPでは、主に急性発症型が中心となりますが、
fHPでは、病型として重要なのが、以下の2タイプです:

  • 再燃症状軽減型
  • 潜在性発症型

ここでは、まずこの2つの病型における画像の特徴をざっくり整理し、
その後に、ガイドラインに基づいたHRCTパターン分類(typical / compatible / indeterminate)へと進んでいきます。


再燃症状軽減型とは?

抗原曝露のたびに軽い急性症状(咳・発熱など)を繰り返しながら、徐々に線維化が進行していくタイプです。

HRCTで見ると…

  • 主役はすりガラス陰影:リンパ球性胞隔炎を反映しています。
  • 線維化のサインもあり:蜂巣肺、牽引性気管支拡張、コンソリデーションも合併。
  • 早期には… 肺野の半分がすりガラス陰影+小葉中心性粒状影に占められます。
  • 進行すると… すりガラス陰影と粒状影が減少して、線維化病変が目立つように。
  • 分布パターンに個人差あり
    • 約6割:びまん性 or 上肺野優位
    • 約4割:下肺野優位
  • 注目ポイント!:モザイクパターンとすりガラス、線維化が混在し、「three-density pattern(3 density pattern)」がよく見られるのもこのタイプ

潜在性発症型とは?

近年、MDD(multidisciplinary discussion)が一般的になり、このタイプの認識が進んできました。症状が目立たず、知らないうちに線維化が進行するため、IPFとの鑑別が難しいケースも少なくありません。

HRCTで見ると…

  • すりガラス陰影が少ない:再燃症状軽減型より控えめ。
  • 小葉中心性粒状影も控えめ:はっきりしない症例が多い。
  • 線維化はしっかり存在蜂巣肺や強い牽引性気管支拡張も見られ、IPFと非常に似た像に。
  • わずかなヒントを見逃さない!
    • 約20%の症例で、上・中肺野に小さな粒状影(肺野の10%程度)
    • 同じく20〜40%程度ですりガラス陰影がみられる(やや中等度)
  • PPFE様の所見にも注意!
    • 上葉優位に楔型のコンソリデーションが出現することあり

💡 three-density patternは?

観察できることはあるが、すりガラスが少ないため頻度は低下します。


若手医師へのTips!

  1. 「three-density pattern」は再燃症状軽減型で見つけやすい!
  2. 潜在性発症型では、すりガラスも粒状影も目立たないが、探せば“わずかに”存在することが多い
  3. 画像だけでIPFと誤診しないよう、上中肺野の細かい変化に目を向けよう
  4. PPFE様の上葉のコンソリデーションも見逃さない!

線維性過敏性肺炎のCTパターン

次に、線維性過敏性肺炎のCTパターンについて整理していきましょう。

正直なところ、ATS/JRS/ALAT 2020ガイドラインの内容は非常に詳細で参考になる一方、情報量が多くて少々とっつきにくい印象があります。

そこでまずは、『過敏性肺炎診療指針2022(日本呼吸器学会)』の整理された分類を先に押さえておくことをおすすめします。こちらは、日本の実臨床に即した視点でざっくり・わかりやすくまとめられており、導入として最適です。

この2022年版の指針で基礎を固めておけば、その後にATS/JRS/ALAT 2020の原文や表を読んだときに、理解が格段にスムーズになります。

過敏性肺炎診療指針2022でわかりやすく改訂されたもの

HRCT patternTypical HP
(HPの確率が高い)
Compatible with HP
(HPの可能性そこそこ)
Indeterminate for HP
(可能性が否定できない)
定義以下の所見と分布を示すもの以下の所見と分布を示すもの以下の所見を示すもの
HRCT
所見
線維化病変¹
+ 細気管支病変²
線維化病変¹
+ 細気管支病変²
下記の線維化病変のみ
分布*³以下のいずれか
– 水平・頭尾方向共にびまん性/ランダム
– 頭尾方向で中肺野優位
水平・頭尾方向のいずれかで分布に偏り
※ ただし、頭尾方向で中肺野優位を除く
※ いわゆるsubacute on chronic HP
(肺底部の線維化病変+広範な小葉中心性すりガラス陰影)はcompatibleに含める
IIPs分類に相当する病変:
– UIPパターン
– Probable UIPパターン
– Indeterminate for UIPパターン
– NSIP+OPパターン
– Truly indeterminate UIP

【脚注】

*1:線維化病変とは以下のいずれか。

  • 牽引性気管支拡張を伴う網状影/すりガラス陰影
  • 蜂巣肺

*2:細気管支病変とは以下のいずれか。

  • 小葉中心性陰影・粒状影
  • 低吸収域またはモザイクパターン(モザイクパターンのうち、正常肺+すりガラス影の領域が混在し、低吸収小葉を持たないものは、細気管支病変の意義を持たない)
  • Three-density pattern
  • 呼気CTでのair trapping

ATS/JRS/ALAT 2020ガイドラインより

HRCT patternTypical HPCompatible with HPIndeterminate for HP
定義HP診断を示唆するもので、
a) 後述のいずれかの分布を示す所に明らかに判別される線維化の1つを持ちかつ、
b) 下記の細気管支病変の少なくとも1つを持つ
線維化の分布やパターンがtypical HPとは異なるが、細気管支病変を示唆する所見が併存するものTypicalにもCompatibleにも該当しない肺の線維化病変
画像
所見
構造変化を伴う不整な線維化・網状影で構成された肺の線維化病変:
牽引性気管支拡張や蜂巣肺も含まれる場合があるが必ずしもではない

– 水平・頭尾方向共にランダム
– 中肺野優位(頭尾方向で)
– 比較的肺底部がスペアされる

以細気管支病変を示唆する所見:
– 境界不明瞭な小葉中心性粒状影 and/or すりガラス影
– モザイクパターン、three density pattern, and/or air trapping(多くの場合、小葉単位)
Typicalとは異なる線維化病変
– IPFガイドラインのUIP相当
– 広範なすりガラス陰影に軽度の線維化病変

分布のバリエーション
– 水平断面:中枢/気管支血管束周囲優位や胸膜下優位、
– 頭尾方向:上肺野優位

細気管支病変を示唆する所見:
– 境界不明瞭な小葉中心性粒状影 and/or すりガラス影
– モザイクパターン、three density pattern, and/or air trapping
肺の線維化病変単独:
– UIPパターン(IPF-G)
– Probable UIPパターン(IPF-G)
– Indeterminate for UIPパターン(IPF-G)
– Fibrotic NSIPパターン
– OP-likeパターン
– Truly indeterminate HRCTパターン

IPF-G:2018 IPFガイドライン
(Raghu G, Remy-Jardin M, Ryerson CJ, et al. Diagnosis of hypersensitivity pneumonitis in adults. An official ATS/JRS/ALAT clinical practice guideline. Am J Respir Crit Care Med 2020; 202: e36–e69 より翻訳転載)

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fHPの画像パターン:まず大前提「線維化+細気管支病変」が必要!

それでは、前述の表を参考に解説します。

「typical」「compatible」はどちらも、

  • 線維化性肺病変(網状影、牽引性気管支拡張、蜂巣肺など)
  • 細気管支病変(小葉中心性粒状影、すりガラス陰影、モザイクパターン、three-density pattern、air trappingなど)

この両方がある程度存在していることが前提条件です!

違いは何かというと、病変の“分布”にあります。


【Typical HP】…「ばらけて分布している」パターン!

定義

  • 線維化+細気管支病変あり
  • びまん性/ランダムに病変が存在(上下左右どこにも偏らない)

画像所見の特徴

  • 中肺野がやや目立つこともあるが、肺全体に広がる
  • three-density pattern(モザイク+すりガラス+正常肺)
  • 呼気CTでのair trapping も併存しやすい

ポイント

病変が「ここだけ濃い!」ではなく、「肺のいろんな場所に満遍なく出ている」イメージ。
three-density pattern がバッチリ出ていると、典型例!


【Compatible with HP】…「どこかに偏っている」パターン!

定義

  • 線維化+細気管支病変あり
  • 分布が“上下どちらか”または“中枢寄り”に偏っている

画像所見の特徴

  • 上肺野 or 肺底部に偏る
  • 気管支血管束まわりや中枢優位の所見
  • 広範囲のすりガラス影が目立つが、線維化は軽めのことも

ポイント

特発性間質性肺炎(UIPやNSIP)に似ているが、
「粒状影・モザイク・air trapping」など細気管支病変があればHPの可能性が出てきます。


【Indeterminate for HP】…「どちらとも言えない」パターン

定義

  • 線維化はあるけど、HPらしい細気管支病変が乏しい
  • 分布も典型ではない

対応するパターン

  • UIPパターン(IPFとそっくり)
  • Probable UIPやNSIP、OP型など、他のIIPと鑑別困難
  • three-density pattern も見られず、診断は困難

ポイント

このタイプでは画像だけでHPとは言いづらい…。
MDD(多職種カンファ)での診断が不可欠になります。


ざっくりまとめた表

HRCTパターン条件分布コメント
Typical HP線維化+細気管支病変びまん性/ランダムthree-density patternがカギ
Compatible同上偏在(上下/中枢)他疾患と似るが、HPの所見があれば可能性あり
Indeterminate線維化のみ or 非典型UIPやNSIPパターン画像だけでは判断困難、MDD必須

fHPの診断、画像だけで終わらせない!

しかしfHPの診断には、画像だけでなくさらに以下の3つのエビデンスがカギになります:

  1. 抗原曝露歴
     ➡ 質問票や環境調査で、吸入抗原の存在を探る
  2. BAL(気管支肺胞洗浄)でのリンパ球増多
     ➡ 20%以上が目安(ただし線維性では低めになることも)
  3. 病理所見
     ➡ 非乾酪性肉芽腫、細気管支周囲のリンパ球浸潤や線維化などが重要

✅ この3つがそろえば、診断の信頼度はグッと高まります!



診断に迷ったら、以下のステップを踏みましょう:

  1. HRCT読影
     ➡ 分布と細気管支病変、線維化の有無を確認。
  2. 呼気CT撮像
     ➡ モザイクパターンair trappingがあるか評価。
  3. BAL検査
     ➡ リンパ球比率が20%以上か確認(なくても除外できないけど….)。
  4. 抗原検索
     ➡ 質問票と住環境、職業、趣味などを徹底調査!
  5. 病理検査
     ➡ 外科的肺生検 or TBLB or クライオで、肉芽腫や細気管支周囲の炎症や線維化を確認。
  6. MDD
     ➡ 放射線科・病理・呼吸器内科の専門家で情報統合→診断確定へ

📝 まとめ

fHPの診断キーワードは「線維化+細気管支病変」
🔍 three-density pattern や air trapping を見逃さない!
📸 画像は“手がかり”であり、決して“診断のゴール”ではない。

臨床・画像・病理の総合評価が不可欠です!



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