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間質性肺疾患いろいろ解説ガイドライン深掘り

「間質性肺疾患の標準用語ガイド」―Fleischner Societyコンセンサスを読み解く―

Ryerson CJ et al. Standardized Clinical Terms and Definitions for Interstitial Lung Disease: A Consensus Statement from the Fleischner Society. AJRCCM, 2025.

「ILD」と「Interstitial Pneumonia」——同じように見えて実は違う?
言葉の選び方ひとつで診断の精度も、チーム間のコミュニケーションも変わります。
このブログでは、2025年に発表されたFleischner Societyの国際コンセンサスをもとに、若手医師が迷いやすいILD関連の用語をわかりやすく整理していきます。

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はじめに:「この言葉、正しく使えてる?」

CTに映るびまん性陰影を前に、こうつぶやいたことはありませんか?

「ILDとIP、どう違うの?」
「Interstitial Pneumoniaって“肺炎”なのに感染じゃないの?」
「“特発性”ってついてるけど、原因があることもあるよね?」

実はこれ、あなた一人の悩みではありません。
世界中の呼吸器専門医も、同じ疑問を持っていたのです。

そこで2025年、Fleischner Societyは間質性肺疾患に関する診療用語を標準化するための国際的なコンセンサス文書を発表しました。


何が問題だったの?:用語がバラバラで混乱

間質性肺疾患(ILD)は病態も疾患も多様ですが、それ以上に「呼び方」がバラバラだったことが問題でした。

たとえば…

  • 「同じ疾患なのに、複数の名称が存在」
  • 「“特発性”と名がついても、後から原因が見つかる」
  • 「“Pneumonia”なのに感染症ではない」

このような曖昧さが、診断・研究・記録・コミュニケーションの妨げになっていたのです。


この論文の目的:用語の“共通言語”をつくる

論文の正式タイトルは:

Standardized Clinical Terms and Definitions for Interstitial Lung Disease: A Consensus Statement from the Fleischner Society

つまり、「ILDに関する診療用語を統一し、世界中の医療者・研究者・患者間の共通言語にする」ことが目的です。

具体的には、

  • 60の主要用語を対象に
  • 多職種の専門家がディスカッション
  • 最終的に94%の用語で合意形成

キーワード別に見る:正しく言葉を使おう

🫁 Interstitial Lung Disease(ILD)

肺の間質に障害が起きる非感染性疾患の総称。
小気道や肺胞も巻き込むことがありますが、大気道・血管・胸膜が主座ではないのがポイント。

💬 よくある類語:「diffuse parenchymal lung disease」「fibrosing lung disease」など
推奨語:「ILD」
➡ 一番広く、明確に使えるから

📌 使用例:
「CTでびまん性陰影あり。間質性肺疾患(ILD)の精査が必要。」


🦠 Interstitial Pneumonia(IP)

主に、組織学的/放射線学的に分類された非感染性肺炎の一群。
「Idiopathic Interstitial Pneumonia(IIP)」として知られる分類群(IPF、NSIPなど)に該当。

推奨語:「Interstitial pneumonia」
➡ 歴史的な文脈と診断分類にフィットするため

📌 使用例:
「HRCTでUIPパターン。Interstitial pneumoniaの一型としてIPFを疑う。」


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❓「Idiopathic」は外すべき?

従来の分類(IIP)では「Idiopathic(特発性)」という語がついていましたが、最近はこう考えられています:

「今はわからなくても、後から原因がわかることも多い。もはや“特発性”とは言えないのでは?」

実際、薬剤、自己免疫、職業曝露など、後から明らかになる要因は少なくありません。

✅ 結論:
「Idiopathic」という語は今後外していく方向が検討されています。ただし、IPFなどでは引き続き使用されます。


🔥「Pneumonitis」じゃダメなの?

代替語として「Interstitial Pneumonitis」も一部では使われていましたが、論文では以下の理由で推奨されません:

Pneumonitis = 炎症を強調しすぎる
➡ 一部の疾患(例:線維化主体のIPFなど)に合わない

✅ 結論:「Pneumonitis」は用語として限定的に使用すべき


どう使い分けるべき?まとめ表

用語意味適した場面注意点
ILD間質性肺疾患全般(広義)疑い例、初期評価、包括的表現疾患名ではない
Interstitial Pneumonia非感染性の肺炎分類群診断確定時、組織分類に基づくときILDよりも狭い概念といえる
Idiopathic原因不明(特発性)IPFなどに限定的に使用今後は除外の動きあり
Pneumonitis肺炎症(炎症が主)放射線肺炎、薬剤性肺炎など線維化主体では不適切

まとめ

間質性肺疾患の診療は、正確な用語の使い分けから始まります。

たとえば:

  • 「この患者はILDの可能性がある」と言うのと、
  • 「Interstitial pneumoniaのひとつであるIPFが疑われる」と言うのとでは、

意味も重みも大きく変わります。

まだ用語の使い分けに自信がない場合は、診断がつくまでは「ILD」としておき、ある程度疾患が絞れてきた段階で「IP(Interstitial Pneumonia)」へ切り替えるというイメージでもよいでしょう。

つまり、「ILD」は広い意味での“間質性肺疾患の疑い”を表す際に便利な総称、「IP」はパターンや診断がある程度明確になったときに使う、という使い分けです。

カルテや紹介状、カンファレンスで自信を持って言葉を使えるように、ぜひこの標準用語を身につけておきましょう。


次回は…

今回は、言葉の基本を整理しました。
次回はより深く、以下のような重要用語についても解説していきます:

  • Progressive Pulmonary Fibrosis(PPF)
  • Unclassifiable ILD
  • Alveolar Macrophage Pneumonia(AMP) など


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