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間質性肺疾患いろいろ解説ガイドライン深掘り

「間質性肺疾患の標準用語ガイド」―iBIP・Idiopathic DAD・AMP 編―

Ryerson CJ et al. Standardized Clinical Terms and Definitions for Interstitial Lung Disease: A Consensus Statement from the Fleischner Society. AJRCCM, 2025.

間質性肺疾患(ILD)の分野では、かつてからあいまいな用語や、病態にそぐわない古い呼び方が混在してきました。
2025年に発表されたFleischner Societyのコンセンサスステートメントでは、こうした用語の見直しが本格的に行われ、診療・研究・教育における共通言語が整備されつつあります。

本記事では、その中でも注目すべき3つの重要な名称変更に絞って、解説します:

  • Idiopathic bronchiolocentric interstitial pneumonia(iBIP)
  • Idiopathic diffuse alveolar damage(Idiopathic DAD)
  • Alveolar macrophage pneumonia(AMP)

それぞれがどう変わったのか?なぜ変わったのか?臨床でどう使えばよいのか?

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Idiopathic bronchiolocentric interstitial pneumonia(iBIP)

―「気道中心性だけど原因不明」な病態に、新たな診断用語が誕生!

これまで、気道中心に線維化や炎症が集中するILDで、既知の原因(過敏性肺炎、CTD-ILD、吸入曝露など)が見つからない場合には、
「cryptogenic HP」「airway-centered fibrosis」など、統一性のないさまざまな名称が使われていました。

今回、これらに代わる新しい標準用語として導入されたのが――
➡️ Idiopathic bronchiolocentric interstitial pneumonia(iBIP) です。

🔹 なぜ「新たに」導入されたのか?

  • HP(過敏性肺炎)に類似する細気管支中心性パターンを示すものの、抗原曝露の証明ができない症例が一定数存在
  • それらを包括的に表現する共通言語がこれまで存在しなかった
  • 「bronchiolocentric(細気管支中心性)」という表現で、病理・画像的特徴を的確に捉えられる

🔹 HPとの違いを整理すると:

特徴HPiBIP
抗原曝露あり(鳥、カビなど)不明(精査しても見つからない)
診断抗原、臨床経過、BAL、画像などで確定原因除外のうえで「idiopathic」
治療方針抗原除去+免疫抑制など臨床判断に基づく個別対応

🔹 ポイント:
「HPっぽいけど、抗原不明 or 特定できない」症例で、診断名に困っていた方こそ、
この「iBIP」という用語をぜひ今日から検討してみて下さい。


Idiopathic diffuse alveolar damage(Idiopathic DAD)

―「AIP」という用語はもう使いません

「Acute interstitial pneumonia(AIP)」という言葉は、一見便利ですが、実は多くの誤解を生んできた用語でした。
「急性に発症するILD」は多くの病態に該当し、AIPという表現では病理的な裏付けが不十分だったのです。

そこで今回から推奨されるのが
➡️ Idiopathic diffuse alveolar damage(Idiopathic DAD)

🔹 なぜ「AIP」ではダメなのか?

  • 急性間質性肺炎という言葉では、肺胞損傷を伴わない他の急性疾患(OPなど)とも混同される
  • 病理的にはDAD(びまん性肺胞損傷)が中心であり、その所見が診断の要
  • 「idiopathic DAD」は、病理学的に正確で、臨床的誤解を防ぐ用語

🔹 若手医師が押さえるべき臨床での使い方:

  • ARDS様の急性呼吸不全で、感染・薬剤・膠原病などすべて除外された症例
  • 生検や臨床経過からDADが示唆されるが、原因が特定できない

🔴 重要:

「AIP(Acute Interstitial Pneumonia)」という用語は、今後は使わないことが推奨されています。


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Alveolar macrophage pneumonia(AMP)

―「DIP」からついに卒業!本当の病態に即した名前へ

「Desquamative interstitial pneumonia(DIP)」という用語は、かつての常識でした。
しかしこの「desquamative(脱落した)」という表現は、重大な誤認に基づいていたのです。

実際に肺胞内に存在するのは脱落した上皮細胞ではなく、マクロファージであることがわかり、
➡️ Alveolar Macrophage Pneumonia(AMP) という用語が正式に推奨されました。

🔹 なぜ「DIP」は使わないのか?

  • 歴史的に誤った病理観に基づく名称
  • 喫煙関連の病態として、マクロファージ蓄積が主要所見
  • AMP の方が病理学的にも臨床的にも正確

🔹 AMPはこういう症例:

  • 喫煙者 or 喫煙歴のある患者
  • 肺胞マクロファージのびまん性蓄積
  • 他の原因(薬剤、職業曝露など)を除外

※稀に喫煙歴のない症例もありますが、その場合は
➡️「Idiopathic AMP」と表現することで対応可能です。

🔴 重要:

「DIP(Desquamative Interstitial Pneumonia)」という用語は、今後は原則として使わないようにしましょう。

Smoking-related ILDについて:

これは喫煙に関連する様々な間質性肺疾患(ILD)の総称です。

AMPは、このSmoking-related ILDのカテゴリーに含まれる可能性のある病態の一つです。しかし、両者は同じものではありません。

  • 喫煙が原因のAMPは、Smoking-related ILDの一部です。
  • 喫煙が関与しないAMP(idiopathic AMPなど)は、Smoking-related ILDには含まれません

このように、喫煙の関与の有無によって分類が異なるため、この点を理解しておくと、両者の使い分けが明確になります。


総まとめ:3つの大きな変更点

旧用語新しい標準用語意義・背景
cryptogenic HP / airway-centered fibrosisIdiopathic BIP気道中心+原因不明を包括する新用語
AIP(急性間質性肺炎)Idiopathic DAD病理所見(DAD)に即した表現。AIPは今後使用推奨されず
DIP(脱落性間質性肺炎)Alveolar Macrophage Pneumonia(AMP)実際の病理=マクロファージ蓄積。DIPは誤解を生むため非推奨

最後に

診断用語のアップデートは、ただの言い換えではありません。
それは、病態への理解を深め、誤解を防ぎ、患者と未来の医療に貢献する行為です。

今回紹介した3つの用語は、いずれも従来の混乱を解消し、より明確なコミュニケーションを可能にする新しい共通言語です。

ぜひ、若手の皆さんから先陣を切って、これらの用語を日常診療に取り入れていきましょう!



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