救急外来
救急外来、50歳男性。 左胸痛? 顎(あご)も痛い!
指導医「胸痛+顎への放散痛→心筋梗塞?
B先生、ファーストタッチ急いでくれ!」
研修医B「は、はいっ!」
—— 数分後 ——
研修医B「せ、先生っ!!大変です!
むし歯からの敗血症性肺塞栓かもです!!
う~~ん、ルミエール?」
指導医「へ?むし歯?なんでそんな…」
研修医B「心電図と心エコー、
ぜんぜん異常なくてぇ…でも熱あってぇ
これ、心臓じゃなくね?って思ってぇ…
でぇ…… 口の中みたら、むっちゃむし歯あってぇ
首も、なんか腫れてて痛そうでぇ…
あれ?これって、毎月楽しみにしてる、
『日本内科学会雑誌 今月の症例』シリーズで見たやつじゃん!って思ってぇ……」
(おどおど)
—— そして頸部造影CTと胸部CT ——
指導医「それ思い出せるの、ハンパないって!!」
解説1
Lemierre(ルミエール)症候群
口腔や首の領域の感染を契機に,咽頭・扁桃周囲の軟部組織へ炎症が波及し,内頸静脈の血栓性静脈炎と遠隔臓器への敗血症性塞栓症を来す全身感染症です。
若年に多く,抗菌薬時代以前は高い致死率を示しましたが,現在でも診断や治療の遅れにより重症化するため注意が必要です。
発症の原因?
急性咽頭炎や扁桃炎が典型ですが,むし歯,歯周炎,智歯周囲炎,扁桃周囲膿瘍,副鼻腔炎,中耳炎など,口腔・咽頭領域の感染症全般がリスクとなります。
加えて,口腔衛生不良,喫煙,免疫低下、粘膜障害も発症に関与すると考えられています。
→むし歯の放置は要注意ですよ!
上記の炎症が咽頭周囲に進展すると内頸静脈の血栓性静脈炎を生じ,血栓を介して敗血症性塞栓が全身に播種されます。
菌を含む血栓の転移巣は肺が最も多く,多発結節影や空洞性病変,肺膿瘍,膿胸などを呈し、『敗血症性肺塞栓』とも呼ばれます。
その他、関節,肝臓,脾臓,中枢神経系,皮膚・軟部組織などにも及ぶことがあり、中枢神経に飛ぶと、脳梗塞をきたすこともあります。
起炎菌
嫌気性グラム陰性桿菌の Fusobacterium necrophorum が最も代表的で,そのほか Fusobacterium nucleatum,嫌気性レンサ球菌,Bacteroides 属,まれに Staphylococcus aureus などが報告されています。
診断
①先行する口腔・咽頭感染,
②画像検査で確認される内頸静脈血栓性静脈炎,
③血液培養などでの起炎菌検出,
④遠隔臓器の敗血症性塞栓症
…の所見を総合して行われ,特に頸部造影CTが重要です。
治療
嫌気性菌を十分にカバーする抗菌薬の早期・長期投与で,βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンやカルバペネム系,あるいは第3世代セフェム+メトロニダゾールなどが用いられます。
膿瘍形成例では外科的ドレナージを要することがあり,抗凝固療法は症例ごとに慎重に検討されます。
解説2
本症例:
50歳代男性で、左胸痛と顎の痛みを主訴としており、いずれも狭心症や心筋梗塞を強く想起させるキーワードでした。しかしB先生は、研修医でありながらも的確な心エコーと心電図の所見から、虚血性心疾患の可能性は低いと判断しました。
一方で、顎の痛みを「歯の痛み」、さらに放散痛として捉え直し、診察を進める中で片側頸部の圧痛と腫脹を発見します。そこから「むし歯+内頸静脈血栓性静脈炎では?」「これ、内科学会誌で見たことがあるぞ?」と連想がつながったのです。
正直、そんな症例を普通は思い出せません。
しかしB先生は筋金入りのマニアで、内科学会誌をいつも楽しみに読んでおり、その印象が強く残っていたからこそ、この疾患に辿り着けました。
本症例は、若手医療者に「むし歯に注意すること」「症例報告を通じて症例を疑似体験する意義」を伝えることを目的としております。 今回のエピソードも過去の実例を基に再現したものです。
掲載している匿名画像は、Radiopediaより引用しています。

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