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症例クイズ12 50歳女性 胸部異常陰影、乾性咳嗽。

呼吸器症例クイズ!
Xで症例クイズ出していましたが、これからブログの方にも載せていこうと思います。

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症例提示

外来。検診異常。
50歳女性、胸部異常陰影、乾性咳嗽。

指導医「(この画像とデータは……!)
A先生、ファーストタッチ頼んだぞ!」

専攻医A「は、はいッ!」

——診察と検査——(スライド)

画像

専攻医A「せ、先生っ! 微妙です!
“アレ”か“アレ”で迷います!」

指導医「そうか。ちなみに、
どこに注目してる?」

専攻医A「自己抗体が気になりますが、
それらしい症状が……」

指導医「精査はどうする?」

専攻医A「は、はいッ!
膠原病内科に相談します。
あとは……呼吸機能は保たれてますので、
外科的肺生検も提案してみます!」

・・・・・・

指導医「さて、ここで問題です。」

問1.“アレ”の正体はなんだろう? 現時点での診断は? あなたはどう考える?
※NSIP:非特異性間質性肺炎
※IPAF:Interstitial Pneumonia with Autoimmune Features(自己免疫性特徴を伴う間質性肺炎)

  1. 分類不能型間質性肺炎
  2. 特発性NSIP
  3. IPAF
  4. 関節リウマチ関連の間質性肺疾患

問2.あなたらならどんな治療方針を選択する?

  1. 無治療経過観察
  2. ステロイド単独治療
  3. ステロイド+タクロリムス
  4. 抗線維化薬単独

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解説1

指導医「2026/2/7投稿の症例クイズ 解答・解説です」

※ まだ問題を解いていない方は、先に症例スライドをご覧ください。

問1.“アレ”の正体はなんだろう?
現時点での診断は?
あなたはどう考える?

症例の整理

今回の症例は、軽度の乾性咳嗽と胸部異常陰影で紹介された50歳女性です。
画像所見は後述しますが、間質性肺疾患が疑われる所見です。

臨床的には、明らかな環境曝露歴や薬剤使用歴はありません。
また、現時点では、膠原病や血管炎を強く示唆する身体症状・所見も認めません。
一方で、血液検査ではRFと抗CCP抗体が陽性です。

この点から、膠原病的背景、特に関節リウマチ(RA)の可能性が気になる症例であり、膠原病内科による専門的な評価が必要になります。

画像所見

胸部CTでは、
上肺野には異常が乏しく、
両側下肺野優位に、
・気管支血管束に沿った線状影
・すりガラス影
・網状影
・小葉間隔壁の肥厚
・牽引性気管支拡張
がみられます。

蜂巣肺はなく、
典型的なUIPパターンではありません。
すりガラス影が網状影より目立ち、
Alternative diagnosisパターンと考えられ、特にNSIPパターンが疑われる画像です。

考えどころ

実臨床では、膠原病内科に相談した結果として、
1)RAの診断に至るパターン
2)RAの診断に至らないパターン
の2通りが考えられます。

今回は「あなたはどう考える?」
という趣旨の症例クイズなので、
正解は一つではありません。

画像

① RAの診断に至るパターン

RAの診断に至った場合、
本症例は RA-ILD と診断可能です。この場合、外科的肺生検は必須ではありません。ただし、RAであっても、過敏性肺炎など他のILDが疑われる場合には、外科的肺生検を考慮することもあります。

問1の答え(パターン1):RA-ILD

② RAの診断に至らないパターン

二次性要因がない場合、
現在のガイドラインや手引きでは、特発性間質性肺炎として診断を進めることになります。
本症例では呼吸機能が保たれているため、本人の同意を得たうえで、外科的肺生検を検討します。

🫡外科的肺生検
病理所見は、
fibrotic NSIPパターンです。
ただし、『胚中心を伴ったリンパ濾胞が目立つ』『形質細胞浸潤がやや目立つ』といった所見があり、何らかの自己免疫機序の関与が疑われる病理像です。

それでも、RF・抗CCP抗体は陽性ではあるものの、膠原病内科医の評価で確立した膠原病、RAの診断には至らず、他の二次性病態も現時点で否定的です。
胸部CT、外科的肺生検のいずれも NSIPパターンであることから、定義上は「特発性NSIP」と診断されます。

問1の答え(パターン2):特発性NSIP

ただし、ここが大事です。
過去の文献では、RAにILDが先行する症例があることが知られています。

特に、抗CCP抗体陽性は、経過中にRAを発症する可能性がある、という報告が本邦からいくつか出ています。
また、外科的肺生検で胚中心を伴うリンパ濾胞形成、形質細胞浸潤が目立つ症例も、後に膠原病を発症する可能性を残すと考えられます。

そのため、この時点で特発性NSIPと診断したとしても、RAを含む膠原病の発症がないか、慎重な経過観察が必要です。

  • Frequency and clinical relevance of anti-cyclic citrullinated peptide antibody in idiopathic interstitial pneumonias. Katsumata M, et al. Respir Med. 2019. PMID: 31229943
  • Rheumatoid arthritis development and survival in idiopathic interstitial pneumonia patients with anti-citrullinated protein antibodies. Ito M, et al. Respir Investig. 2025. PMID: 40300410

<IPAFについて>
本症例は IPAF(自己免疫的特徴をもつILD)の基準は満たします。ただし、IPAFは研究用の概念であり、
オリジナルペーパーでも「実臨床では診断名として用いない」と記載されています。そのため、本症例は IPAFとは診断しません。

画像
画像

引用:膠原病に伴う間質性肺疾患診断・治療指針2025

解説2

問2.あなたらならどんな治療方針を選択する?

本症例では、
膠原病内科医の診察結果により、
1)RA-ILDと診断される場合
2)特発性NSIPと診断される場合
いずれも考えられます。

どちらの場合であっても、
現時点では自覚症状に乏しく、
呼吸機能も比較的保たれている状況です。

① RA-ILDの場合

RA-ILDの治療アルゴリズムは、現時点では十分に確立しているとは言えませんが、本邦の「膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025」では、治療アルゴリズム(案)が提示されています。

画像

今回のような慢性経過のILDでNSIPパターンを示す症例では、関節炎があればまずその治療が行われます。
そのうえで、ILDがすでに進行しているのか、あるいは現時点では軽度であっても進行性かどうかを評価し、治療適応を判断することになります。

🫡本症例では、
現時点では症状に乏しく、呼吸機能も保たれているため、経過観察とすることも可能と考えられます。
ただし、FVCは低下傾向にあり、この段階で治療を開始するという戦略も十分にあり得ます。
私の場合は、後者を選択すると思います。

🫡治療を行う場合、
NSIPパターンであり、背景の病理所見でも炎症細胞浸潤が目立っていたことから、ステロイドに免疫抑制剤を併用する治療が考慮されます。
免疫抑制剤としては、RAへの保険適用があり、血中濃度のコントロールが可能である点から、個人的にはタクロリムスの併用を考えます。
抗線維化薬であるニンテダニブについては、抗炎症治療を行っても進行がみられる場合に検討する位置づけになります。

②特発性NSIPの場合

特発性NSIPの治療についても、十分に確立された治療法があるわけではありませんが、「特発性間質性肺炎の手引き2022」では、ステロイド単独、あるいは免疫抑制剤併用が考慮されます。

画像

免疫抑制剤の選択肢にはタクロリムスも含まれています。本症例では、背景にRAが潜在している可能性を考慮すると、RA-ILDの場合と同様の方針にタクロリムスを検討したいと思います。

以上を踏まえ、
私の場合は、現時点では経過観察とするか、あるいはステロイドにタクロリムスを併用する治療を考慮しますが、どちらかといえば、後者の立場です。

問2の答え:私の場合…
無治療経過観察<ステロイド+タクロリムス

尚、今回の症例クイズは、「あなたならどうする?」という趣旨で提示しています。
RA-ILDや特発性NSIPについては、いまだエビデンスレベルの高い治療が確立しているとは言えず、現状では、関連する診断・治療指針や手引きに記載されている治療アルゴリズム案や治療例を参考にしながら、各施設で治療が行われているのが実際のところかと思います。
そのため、治療方針には施設ごとの考え方によるバリエーションがあって当然です。

本症例クイズが、そうした日常診療における判断を考えるうえでの一つの材料として、少しでもご参考になれば幸いです。

引用:特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き2022
膠原病に伴う間質性肺疾患診断・治療指針2025


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