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間質性肺疾患論文紹介

健常人の健診CT:これはPPFEか?Apical Capか?どう扱うべきか?

Clinical Characteristics and Prevalence of Apical Scarring at Chest CT in a Healthy Population. Fukada et al. Radiology: Cardiothoracic Imaging, 2026

健診CTで偶然見つかる上肺野の胸膜直下病変。
それはPPFEの初期像なのでしょうか?それともapical capなのでしょうか?
最新の大規模な臨床研究データをもとに、有病率・関連因子・進行リスクを整理しながら、日常診療での考え方をわかりやすく解説します。

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はじめに

PPFE(pleuroparenchymal fibroelastosis)は、上葉優位の胸膜肥厚と胸膜直下の線維化を特徴とするまれな疾患で、特発性(iPPFE)のものは、予後不良と言われています。

一方で、「PPFE-like lesions(PPFE様病変)」という言葉は、あくまでCTで見える画像所見を指しており、臨床診断としてのPPFEそのものを意味しない点が重要ですね。

そして、このPPFE様病変は、膠原病や非結核性抗酸菌症、骨髄移植、シクロフォスファミドなどの薬剤性など二次性に発症するものもあれば、特発性PPFE以外の特発性間質性肺炎や、過敏性肺炎などの間質性肺疾患の副所見として認められる場合もあります。

さらにややこしいのが、昔から知られているapical capapical scarring(肺尖部の瘢痕性変化)と、CTで見えるPPFE様所見が同じスペクトラム上で重なる可能性があることです。

CTの方が感度が高いので、胸部X線でいうapical capと、CTで拾うPPFE様所見が同じものか別物かがなんとも言えないんですよね。

そこで本研究は、より広い概念として「apical scarring」という用語を採用し、健診CTを受けた“見かけ上健常”な集団での頻度・特徴・経時変化を調べた、という立て付けです。

背景と目的

pleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE)様病変とも呼ばれている肺尖部瘢痕(apical scarring)は、特発性胸膜肺実質線維弾性症(idiopathic PPFE)で特徴的な胸部CT所見である。

本研究の目的は、一見健常な個人において、この所見の有病率を明らかにし、関連する臨床的特徴を同定し、さらに経時的な進行を評価することである。

方法

本後ろ向き研究では、PPFEの原因として知られる基礎疾患を有さない者で、2014年4月から2015年3月に包括的健康診断(胸部CTを含む)を受けた者を対象とした(コホート1:n=1737、コホート2:n=1126)。

apical scarring(PPFE様病変)の有無に関連する臨床的特徴を、傾向スコアマッチングおよびロジスティック回帰分析で解析した。

さらに、追跡データが利用可能な一部の対象者では、ベースラインから4年間にわたるapical scarring(PPFE様病変)の画像的進行を評価し、潜在的なリスク因子をロジスティック回帰モデルで検討した。

結果

2863人(年齢中央値57歳[IQR 49–65歳]、男性2299人)のうち、158人(5.5%)にapical scarring(PPFE様病変)を認めた。

年齢層別の有病率は、20–39歳で1.6%、40–59歳で3.9%、60歳以上で8.1%であった。高年齢であること、ならびに体格指数(BMI)、体脂肪、腹囲が低いことが肺尖部瘢痕と関連していた。

これらの所見は両コホートで一貫していた。

apical scarring(PPFE様病変)を有する158人のうち、少なくとも20人(12.7%)が4年間で画像的進行を示し、これはベースラインで病変がより広範である者でより多かった(進行率:grade 1病変 19.2% 対 grade 2病変 66.7%;P=0.006)。

結語

一見健常な個人において、apical scarring(PPFE様病変)の有病率は年齢とともに増加し、その存在はやせ型体型と関連していた。一部の個人では画像的進行が観察された。

感想です。

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なぜ「apical scarring」という用語を使ったのか?

本研究では、「PPFE-like lesion」という用語ではなく、より包括的な概念としてapical scarringという用語を採用しています。

その理由は、

  • CTでみられる上肺野胸膜直下の線維化所見は
    • いわゆるPPFE-like lesion
    • apical cap
    • 加齢性瘢痕
      と連続的なスペクトラムを形成している可能性がある

からです。

つまり、特定の疾患診断を意味するのではなく、あくまで画像所見としての名称という位置づけですね。

具体的定義

本研究における apical scarring(PPFE様病変) は、胸部CTにおいて以下を満たす所見

  • 両側肺尖部
  • 胸膜直下に存在する線維性の濃度上昇(subpleural dense consolidation)
  • 胸膜肥厚を伴う
  • 少なくとも、1cm以上、胸膜上に広がる
  • 肺尖部から1cm以内の領域を越えて、尾方向に広がる

Grade定義
Grade 1病変が気管分岐部より頭側に限局
Grade 2病変が気管分岐部より尾側まで及ぶ

(A)apical scarringもapical capも認めない症例

(B)apical capに一致する所見(赤矢印)を認めるが、その広がりは肺尖から1cm以内に限局しており、apical scarringの診断基準は満たさない。

(C)Grade 1のapical scarring(赤い矢頭):病変は肺尖から尾側1cmを超えて明らかに尾側へ進展しているが、気管分岐部レベルではapical scarringは認めない。

(D)grade 2のapical scarring(赤い矢頭):気管分岐部レベルを超えて尾側へ進展している。

どんな結果だった?

1) 有病率:年齢とともに増える

対象2863人中158人(5.5%)にapical scarring(PPFE様病変)がありました。
年齢別は以下です。

年齢群(性別を問わない場合)有病率
20–39歳1.6%
40–59歳3.9%
60歳以上8.1%

高齢になるほど増える、というのは直感にも合いますね。

2) 体型:やせ型と関連

apical scarring(PPFE様病変)あり群は、なし群よりもBMI、体脂肪率、腹囲が低いという結果でした(年齢・性別でマッチング後も差が残っています)。

また、多変量ロジスティック回帰では、高年齢低BMIがapical scarring(PPFE様病変)の存在と関連。

  • 年齢:OR 1.05(95%CI 1.03–1.06)有意
  • BMI:OR 0.76(0.72–0.82)有意

3) 進行:4年で少なくとも12.7%が画像的に進行

ベースラインでapical scarring(PPFE様病変)があった158人のうち、少なくとも20人(12.7%)で4年間に画像的進行。

しかも、進行は初期の広がりが大きい群(grade 2)で多いです。
(進行率は、grade 1の19.2%に対しgrade 2は66.7%、P=0.006)

結果をどう解釈するか?

“やせ”とapical scarring(PPFE様病変)

まず、特発性PPFE(iPPFE)では低BMIや体重減少が特徴的所見として報告されています

さらに、他の間質性肺疾患(ILD)に合併したPPFE様所見を有する患者や、二次性PPFEの患者においても、低BMIとの関連が指摘されています

本研究は「基礎疾患のない集団」ですが、それでも低BMIが関連しました。

つまり、疾患の有無を超えて、やせている人はPPFE様所見の存在しやすい共通する機序や素因がある可能性を示唆しています。

  • apical scarringが低BMIを招くのか
  • 低BMIがapical scarring形成に寄与するのか
  • 共通素因が両者を生むのか

なぜそうなるのかはまだわかりませんが。

進行する人がいる:grade 2は要注意かもしれない

少なくとも12.7%で進行し、とくにgrade 2は進行リスクが高かったため、将来的にiPPFEと診断されうる集団が含まれる可能性に言及しています。

一方で、これらが加齢性変化の範囲である可能性も否定できず、健診で偶然見つかったapical scarringに対して「一律に精査・厳密フォローを推奨すべきかどうか?」についてはこの研究からはまだ主張できないと思います。

ただし、健診でこういう所見の用語・定義を明確にして実際に用いるという流れはあってもよいのかもしれません。

注意点 リミテーション

  • 後ろ向き研究。
  • 健診受診者という集団であり、真の一般人口と異なる可能性(自費・健康意識・企業補助など)による選択バイアスがある。
  • 健診データ由来のため、ILD診療でよく使う検査や死亡アウトカムが欠落。つまり、「進行した人が臨床的PPFEに診断されたかどうか?」が不明。
  • 病理学的な裏付けなし。

まとめ:臨床現場でどう活かす?

  • Apical scarring(PPFE様病変)は、健常と考えられる集団においても一定割合で認められ、有病率は年齢とともに増加する。
  • 本所見は健常者においても「やせ型」「低BMI」と関連している。
  • 病変が広範囲に及ぶ場合(気管分岐部より尾側まで進展する場合)には、将来的に画像的進行を示す可能性がある。
  • その一部は、PPFEの初期病変を捉えている可能性も否定できない。
  • 健診で偶発的に認められた本所見を、どの程度追跡・精査すべきかについては現時点では明確な基準はない。
  • しかし少なくとも、用語と定義を統一したうえで健診レポートに適切に記載することには意義があると考えられる。

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