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間質性肺疾患論文紹介

IPF急性増悪にステロイドは本当に有効なのか? グルココルチコイドとプラセボを直接比較するEXAFIP2試験のデザインを見てみる。

Glucocorticoids Versus Placebo for the Treatment of Acute Exacerbation of Idiopathic Pulmonary Fibrosis: a Randomized Controlled Trial

参加施設には、フランス各地の大学病院・専門施設が多数含まれており、EXAFIP2はフランスの研究者主導・全国多施設共同試験と考えてよいでしょう。

なお、Study DirectorのNaccache医師らは、これに先立ってシクロホスファミドの上乗せ効果を検証したEXAFIP試験も実施しています。EXAFIP2はその研究ネットワークと経験を引き継ぐ試験といえるでしょう。

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はじめに

IPF急性増悪は、IPF患者に急速な呼吸状態の悪化と新たな両側性肺胞陰影が出現する病態です。

急性増悪の年間発症率はおよそ5~10%、発症後の院内死亡率は50%を超えると言われています。

また、IPF患者の死亡のうち最大46%が急性増悪に関連する可能性があるとされています。

IPF急性増悪では、一般的にメチルプレドニゾロンのパルス療法を含む高用量ステロイド治療が広く行われており、これは本邦2023IPFガイドラインにも記載されています。

しかし、その使用を支持する推奨は、主として専門家の意見や低いレベルのエビデンスに基づいており、経験的治療といえます。

つまり、質の高いプラセボ対照ランダム化比較試験によって、ステロイドが死亡率を低下させると証明されたわけではありません。

さらに、一部の後ろ向き研究では、ステロイドを使用しても転帰が改善しなかったことや、かえって有害となる可能性が報告されています。

もちろん、観察研究では重症患者ほどステロイドを投与されやすいという交絡が避けられません。そのため、ステロイドが本当に有効なのか、有害なのか、あるいはほとんど影響しないのかを判断するには、ランダム化比較試験が必要だったというわけです。

先行研究『EXAFIP試験』とは?

EXAFIP試験では、IPF急性増悪患者全員に高用量ステロイドを投与したうえで、シクロホスファミドを追加する群とプラセボ群が比較されました。

Cyclophosphamide added to glucocorticoids in acute exacerbation of idiopathic pulmonary fibrosis (EXAFIP): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet Respir Med. 2022 Jan;10(1):26-34.

その結果、3か月全死亡率はシクロホスファミド群45%、プラセボ群31%であり、シクロホスファミドの追加による予後改善は認められませんでした。むしろ、死亡率が高くなる可能性が示唆されました。

ここで次の疑問が生まれます。

シクロホスファミドが効かなかったのは分かった。
では、そもそも、全例に投与されていたステロイドそのものは本当に必要なのか?

EXAFIP2は、まさにこの問いに答えるための試験といえるでしょう。

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試験の目的

IPF急性増悪に対するグルココルチコイド治療が、プラセボと比較して30日死亡率を改善するかを検証すること

つまり、この試験は、長年当然のように使われてきた治療が、本当に患者の利益になっているのかを検証する試験なのでございます。


試験デザイン

  • 第III相、多施設共同、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照比較試験
  • 予定登録数110例
  • 対象患者は、グルココルチコイド群またはプラセボ群にランダムに割り付け。

ClinicalTrials.gov上では2023年10月26日に試験が開始され、登録上の試験完了予定日は2026年12月31日。


対象患者

主な組み入れ基準

対象:18歳以上の成人で、以下の条件を満たす(主なものを抜粋)。

  1. 2018年の国際診療ガイドラインに基づいて、IPFまたはprobable IPFと診断
  2. 国際ワーキンググループの基準による「確実」または「疑い」のIPF急性増悪
  3. 急性の呼吸状態悪化を説明する別の原因が十分に除外

IPF急性増悪の具体的な基準(ATS2016):

  • 既存または同時に診断されたIPF
  • 通常1か月未満の経過で生じた呼吸困難の悪化
  • UIPパターンを背景として、新たな両側性すりガラス影または浸潤影が出現
  • 心不全や体液過剰だけでは説明できない呼吸状態の悪化

過去のCTがない場合や、必要なCT情報が不十分な場合には、「疑い急性増悪」として組み入れられる場合あり

主な除外基準

  • 感染症など、急性呼吸状態悪化の原因が明らか
  • 侵襲的人工呼吸管理を必要としている、またはすでに人工呼吸管理中である
  • 活動性の細菌、ウイルス、真菌または寄生虫感染症あり
  • 活動性悪性腫瘍あり
  • 過去15日間に、1 mg/kg/日を超えるグルココルチコイドを7日以上使用

すでに侵襲的人工呼吸管理を必要としている患者は対象外


介入内容

グルココルチコイド群

  1. メチルプレドニゾロン10 mg/kg/日を3日間静脈内投与
    ただし、1日最大1000 mg
  2. その後、経口プレドニゾンへ変更
    • 1 mg/kg/日:1週間
    • 0.75 mg/kg/日:1週間
    • 0.5 mg/kg/日:1週間
    • 0.25 mg/kg/日:1週間

その後の維持量として、体重65 kg超では10 mg/日、65 kg以下では7.5 mg/日を6か月目まで使用。

対照群

対照群には、メチルプレドニゾロンおよびプレドニゾンに対応するプラセボが投与される。

※ただし、プラセボ群でも酸素療法、呼吸管理、抗菌薬の必要性評価など、急性増悪に対する通常の支持療法は行われる。


主要評価項目

ランダム化後30日目までの全死因死亡率


副次評価項目

1.90日全死因死亡率

2.30日呼吸器疾患関連死亡率

3.臨床的悪化までの期間

4.入院期間

5.15日目の臨床状態

  1. 退院し、活動制限がない
  2. 退院しているが、活動制限または在宅酸素療法が必要
  3. 入院中だが、酸素投与を必要とせず、継続的な医療も必要としない
  4. 入院中で、何らかの酸素投与を必要とする
  5. 高流量酸素療法または非侵襲的換気療法を必要とする
  6. 侵襲的人工呼吸管理またはECMOを必要とする
  7. 死亡

6.集中治療および人工呼吸管理

7.安全性


この試験の注目点

1.本当にステロイドが治療に必要かどうかがわかる可能性がある。

2.ステロイドの有効性だけでなく、有害性も明らかになる


本試験の懸念点?

まず、予定登録数は110例。サンプルサイズが大きくないので、治療効果が小さい場合や、患者背景に大きなばらつきがある場合には、差を検出できない可能性あり。非劣性試験でもなさそう。

また、明らかな活動性感染症や、すでに侵襲的人工呼吸管理を必要とする最重症患者は除外されます。そのため、試験結果をすべてのIPF急性増悪患者に一律に当てはめることはできない。

「疑い急性増悪」も対象に含まれるので、感染、心不全、肺血栓塞栓症、誤嚥などが含まれてくる可能性あり。


まとめ

EXAFIP2は、IPF急性増悪に対する高用量グルココルチコイド治療とプラセボを比較する、フランスの多施設共同ランダム化比較試験。

主要評価項目は30日全死因死亡率であり、90日死亡率、呼吸器関連死亡、臨床的悪化、入院期間、呼吸補助の必要性、安全性なども評価される。

何十年も当然のように行われてきたステロイド治療が、本当に患者を救っているのかを問い直す試験である点にあります。

結果が陽性であっても陰性であっても、IPF急性増悪の治療方針に大きな影響を与える可能性があります。

個人的にも、間質性肺疾患領域で最も結果が待たれる臨床試験の一つだと思います。

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