Epidemiology and Prognostic Significance of Cough in Fibrotic Interstitial Lung Disease. Khor YH, Johannson KA, Marcoux V, Fisher JH, Assayag D, Manganas H, Khalil N, Kolb M, Ryerson CJ; CARE-PF Investigators. Am J Respir Crit Care Med. 2024 Oct 15;210(8):1035-1044.
ILD患者さんへの、咳の管理の重要性が高まっています。
- 咳嗽は、間質性肺疾患(ILD)患者においてQOLに大きく影響を与える重要な症状の一つです。
- さらに、特発性肺線維症(IPF)を含む線維化性疾患では、咳嗽や呼吸による肺への機械的な進展刺激が、線維化を進行させる要因となる可能性が指摘されています。
咳ってもう何周も回った研究テーマのように思いますが、奥が深いですね。
また咳の研究がブームになるかもしれません。
- このような機械的刺激は、通常の呼吸運動に加え、咳嗽によっても発生します。
- 咳嗽は急激で大きな進展刺激を生じさせるため、線維化に及ぼす影響が特に注目されています。これらの知見を踏まえると、咳嗽が単なる症状にとどまらず、疾患の進行にも深く関与する可能性が考えられます。
- このような背景から、咳嗽の評価や管理は、線維化性疾患の治療戦略において重要な位置を占めるといえるでしょう。
背景
咳嗽は線維化性間質性肺疾患(ILD)患者における重要な症状である。
目的
本研究では、線維化性ILD患者における咳嗽の重症度の有病率、経時的変化、関連因子、予後的意義を評価することを目的とした。
方法
- 本研究では、特発性肺線維症(IPF)およびnon-IPFの線維化性ILD患者を対象とし、カナダ間質性肺線維症多施設前向き登録研究において100 mmの咳嗽重症度ビジュアルアナログスケールを完了した連続患者を組み入れた。
- ベースラインにおける咳嗽の重症度と患者の人口統計学的および臨床的要因との関連を調査した。
- また、ベースラインの咳嗽重症度と健康転帰との関係を評価した。
測定および主要結果
- IPF患者(n = 1,061)はnon-IPFの線維化性ILD患者(n = 2,825)に比べ、ベースラインの咳嗽重症度中央値が高かった(24 mm対20 mm、P < 0.001)。
- 両コホートで胃食道逆流症がより重度の咳嗽と関連していた。
- 咳嗽の重症度が高いほど、ベースラインにおける健康関連QOLの悪化、年間DLCO低下率の増大、疾患進行の発生、および Transplant-free survival(移植のない生存率)の低下と独立して関連していた。
- IPFコホートでは、non-IPFの線維化性ILDコホートに比べ、咳嗽重症度の年間増加幅が大きかった(2.2 mm、95%信頼区間1.6-2.9 mm 対 1.1 mm、95%信頼区間0.8-1.4 mm、P = 0.004)。
- ILDに対する治療の有無や肺機能低下の有無による咳嗽の悪化には差が認められなかった。
結論と意義
咳嗽はIPFおよび非IPF線維化性ILD患者において一般的であり、ILDに対する治療に関係なく時間経過とともに重症化する。患者報告による咳嗽の重症度は、健康関連QOL、疾患進行、生存率に予後的意義を持つ。
- ちなみに、胃食道逆流(GERD)がでてきたので、著者のなかにガネーシャ・ラグー師匠(Ganesh Raghu)がいるかと思いましたがいませんでした。
- 今回の研究では咳嗽とGERDが関連していたので、咳の管理にはGERDの管理も必要という議論がでてくるかもしれませんね。これらの因子は疾患進行や生命予後への影響として交絡しているのかもしれません。
- 咳嗽は、IPFおよび非IPF線維化性ILD患者において非常に一般的な症状です。また、治療の有無に関係なく時間経過とともに重症化することが知られています。
- この論文によれば、患者さんの報告による咳嗽の重症度は、健康関連QOLの低下だけでなく、疾患の進行や生存率にも予後的意義を持つことが示唆されています。
- そのため、咳嗽が疾患進行を防ぐのか、さらには生存期間を延ばすことにつながるのかを明らかにするには、前向き研究が必要不可欠です。
- もし咳嗽が疾患進行や予後に影響を及ぼすことが示されれば、呼吸機能検査や画像検査といった客観的な指標が安定している場合でも、患者さんの咳を正確に評価し、可能な限り咳を軽減する治療が重要になるでしょう。
- 特に、咳嗽が日常生活に与える影響を考慮すると、これを適切に管理することが、QOL向上や長期的な疾患管理において大きな役割を果たすと考えられます。
- 今日からの診療では、患者さんの咳嗽に改めて注目し、その重症度や影響を丁寧に評価していきたいと思います。
- 咳嗽に対する治療が将来的な予後改善に寄与する可能性を念頭に置き、日々の診療に取り組んでいきたいと思います。
- Froese AR, Shimbori C, Bellaye PS, Inman M, Obex S, Fatima S, Jenkins G, Gauldie J, Ask K, Kolb M. Stretch-induced Activation of Transforming Growth Factor-beta1 in Pulmonary Fibrosis. Am J Respir Crit Care Med. 2016 Jul 1;194(1):84-96. ↩︎
- Martín-Vicente P, López-Martínez C, López-Alonso I, Exojo-Ramírez SM, Duarte-Herrera ID, Amado-Rodríguez L, Ordoñez I, Cuesta-Llavona E, Gómez J, Campo N, O’Kane CM, McAuley DF, Huidobro C, Albaiceta GM. Mechanical Stretch Induces Senescence of Lung Epithelial Cells and Drives Fibroblast Activation by Paracrine Mechanisms. Am J Respir Cell Mol Biol. 2024 Aug 12. doi: 10.1165/rcmb.2023-0449OC. ↩︎
- Zhang R, Pan Y, Fanelli V, Wu S, Luo AA, Islam D, Han B, Mao P, Ghazarian M, Zeng W, Spieth PM, Wang D, Khang J, Mo H, Liu X, Uhlig S, Liu M, Laffey J, Slutsky AS, Li Y, Zhang H. Mechanical Stress and the Induction of Lung Fibrosis via the Midkine Signaling Pathway. Am J Respir Crit Care Med. 2015 Aug 1;192(3):315-23. ↩︎
<スマートフォンをご利用の皆さまへ>
他の記事をご覧になりたい場合は、画面左上の「メニュー」からジャンルを選択してお楽しみいただけます。
また、画面右下の「サイドバー」を使って、気になる話題を検索することもできますので、ぜひご活用ください。
<PCをご利用の皆さまへ>
他の記事をご覧になりたい場合は、画面上部のメニューバーや画面右側のサイドバーをご利用いただき、気になる話題をお探しください。