論文紹介検査関連

気管支鏡検査中の咳嗽を軽減するためのスプレーカテーテルを用いた気管内局所麻酔と持続的な口腔吸引の有効性:前向き研究(Tsuchiya K, et al. Respir Investig. 2025)

Effectiveness of intrabronchial local anesthesia with a spray catheter and continuous oral suction in reducing cough during bronchoscopy: A prospective study. Tsuchiya K, et al. Respir Investig. 2025 Jan;63(1):67-73.

気管支鏡検査でいろいろ工夫している、実臨床に使える素晴らしい論文です。

  • 気管支鏡検査は呼吸器疾患の診断に欠かせない検査ですが、麻酔や対処、手技に不備があると。その過程で患者さんが咳や不快感を感じることがあります。
  • この咳は、患者さんにとって身体的・精神的な負担になるだけでなく、医師にとっても検査の正確性を損なう原因となります。つまり、咳のせいで、気管支鏡の内腔画像がぶれてしまい、検査非常にやりにくくなります
  • そのため、咳を効果的に抑える方法を見つけることが、医療現場での大きな課題となっています。
  • 最近の研究で注目されているのが「スプレーカテーテル」を使った局所麻酔です。これは、従来のシリンジを使う方法と比べて、気道全体に麻酔薬を散布できるので均等に局所麻酔が届けられる可能性があります。
  • また、別の手法ですが、検査中に唾液が気管に入ることで咳が出てしまうことがあるので、その唾液を「持続的に吸引」して咳を減らせるかどうかも検証されています。
  • ちなみに、我々の施設では、咳を抑えるためにクライオバイオプシーの時に、スプレーカテーテルを使っていますが、普通の気管支鏡手技の時にはつかっていません。また、唾液の持続吸引も使っていません。
  • しかし、この研究では、スプレーカテーテルと唾液吸引を組み合わせた新しい方法で、咳の頻度や患者さんの不快感をどれだけ減らせるかを調べています
  • この方法が普及すれば、患者さんがもっと楽に検査を受けられるだけでなく、医師もより正確な診断ができるようになるかもしれません。
  • 医療現場にとって、これはかなり期待が持てるアプローチですよね!

背景

  • 気管支鏡検査中の咳嗽やその他の不快感は、患者および気管支鏡医の双方にとって望ましくないものである。
  • 気道内にエアロゾルスプレーで局所麻酔薬を投与する方法の有効性は報告されているが、最適な投与方法については明確ではない。
  • また、唾液を持続的に吸引することによる咳嗽やその他の不快感の軽減効果については、これまで評価されていない。

方法

  • 気管支鏡検査を予定している患者を4つの群に割り当てた。
    1. グループAはシリンジを用いた気管内局所麻酔(持続的な口腔吸引なし)
    2. グループBはスプレーカテーテルを用いた気管内局所麻酔(持続的な口腔吸引なし)
    3. グループCはシリンジを用いた気管内局所麻酔(唾液吸引器による持続的な口腔吸引あり)
    4. グループDはスプレーカテーテルを用いた気管内局所麻酔(唾液吸引器による持続的な口腔吸引あり)
  • 患者の不快感は視覚的アナログスケールを用いた質問票で評価し、気管支鏡検査中の咳嗽の回数を測定した。
  • また、消費したリドカインの総量およびバイタルサインの変化も評価した。

結果

  • スプレーカテーテルを用いた気道内局所麻酔は患者の不快感を軽減しなかった。
  • しかし、咳嗽の頻度を減少させた(P = 0.03)とともに、リドカインの使用量を削減した(P = 0.0004)
  • 一方で、唾液の持続吸引は患者の不快感や咳嗽の頻度を軽減する効果を示さなかった。

結論と意義

  • 気管支鏡検査中にリドカインを用いた局所麻酔を行う際には、シリンジよりもスプレーカテーテルを用いることが推奨される。
  • 一方で、唾液の持続吸引はすべての患者に対して常に推奨されるものではない。
  • 今回の研究は、気管支鏡検査中の咳や不快感を軽減するための新たなアプローチを示す、重要な知見を提供しているように思います。
  • 特に、スプレーカテーテルを用いた局所麻酔は、従来の方法と比較して咳嗽頻度を効果的に抑え、麻酔薬の使用量も減少させるという有益な結果が得られています。
  • これにより、患者の負担が軽減されるだけでなく、医師にとっても検査がよりスムーズに進められる可能性が広がります。
  • 咳嗽の減少によって、検査の質も向上することが期待されます。
  • たとえば、生検では狙った標的から的確に組織を採取しやすくなり、気管支肺胞洗浄ではより良い回収が期待できるかもしれません。
  • このような改善が臨床現場に与える影響は大きいと言えるでしょう。
  • もし可能であれば、次のステップとして、検査成功率をアウトカムに設定した前向き研究が実施されることを期待したいところです。さらなる検証が進むことで、気管支鏡検査がより安全で効果的なものへと進化していくのではないでしょうか。
  • 一方で、唾液吸引器を用いた持続吸引については、全ての患者に必須というわけではありません。特に、検査時間が長くなるケースでは慎重に適用を検討する必要があるでしょう。
  • また、若年者では咳嗽反射が強い傾向があり、高齢者とは異なる配慮が求められるかもしれません。さらに、検査前から咳嗽がみられる患者では、検査中に咳嗽が悪化する可能性があるため、こうした手法が特に有効となる患者の特性を見極めることが重要です。
  • 今回の研究は探索的なものであり、さらなる大規模な検証が必要ですが、日々の臨床に役立つ実践的なヒントを提供する内容でした。この知見を活かし、より安全で患者負担の少ない検査方法が確立されていくことを期待したいですね。

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