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肺癌や悪性腫瘍論文紹介

周術期デュルバルマブの実力とは?非小細胞肺癌における手術安全性のエビデンス

Surgical Outcomes with Neoadjuvant Durvalumab Plus Chemotherapy Followed by Adjuvant Durvalumab in Resectable NSCLC. Tetsuya Mitsudomi et al. Journal of Thoracic Oncology 2025.

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はじめに

非小細胞肺癌(NSCLC)のうち、切除できるステージ(II〜IIIB)の患者さんでは、手術だけでは再発のリスクがあります。
そのため、術前(ネオアジュバント)化学療法を行って、がんを小さくしたり、見えない転移を叩いてから手術するのがよく行われます。

最近は「免疫チェックポイント阻害薬(ICI)」が進行肺がんで効果を示しており、「じゃあ切除できるがんに使ったらどうなる?」という疑問が出てきました。

AEGEAN試験では、免疫チェックポイント阻害薬の一つであるデュルバルマブを周術期に使用することで、より良い長期予後が期待できるかどうかを検証しています。

この論文では、特にその中で「手術成績」への影響を詳細に評価しています。

背景

AEGEAN試験では、切除可能な非小細胞肺癌(R-NSCLC)において、デュルバルマブ併用の周術期治療(術前化学療法+術後免疫療法)が、術前化学療法単独に比べ、イベントフリー生存期間(EFS)および病理学的完全奏効率(pCR)を有意に改善し、安全性も許容範囲であった。

本報告では、AEGEAN試験における外科的成績を示す。

方法

治療未施行のR-NSCLC(ステージII〜IIIB[N2])患者で、ECOG PS 0または1の者を対象に、

デュルバルマブまたはプラセボとプラチナ製剤を含む化学療法を術前に4サイクル、

術後にデュルバルマブまたはプラセボを12サイクル投与するデザインで、1:1に無作為化した。

外科的成績は、EGFR/ALK変異のないmodified ITT(mITT)集団で記述統計により解析した。

結果

mITT集団740例中737例が治療を受け(デュルバルマブ群366例、プラセボ群371例)、各群で80.6%、80.7%が手術を受けた。

手術完遂率はそれぞれ77.6%、76.7%、手術を受けた患者のうち、手術が遅延したのは17.3%、22.2%であった。

術前最終投与から手術までの中央値は両群とも34.0日であった。

開胸術(49.2% vs 50.7%)と低侵襲手術(49.2% vs 47.0%)の割合は両群でほぼ同等であり、最も一般的な手術は肺葉切除術(88.1% vs 85.4%)であった。

R0切除率はデュルバルマブ群で高値を示した(94.7% vs 91.3%)

術後から初回補助療法までの中央値は、それぞれ50.0日、52.0日であった。

探索的解析では、術前N2例のN0へのダウンステージング率はデュルバルマブ群で47.3%、プラセボ群で40.2%、

また術前N1例のN0へのダウンステージング率は53.6% vs 46.2%であった。

手術合併症の発生率は両群で類似しており(59.1% vs 60.1%)、主にグレード1/2であった(53.0% vs 51.8%)。

結語

術前化学療法にデュルバルマブを追加しても、手術の実施可能性、術式、手術の種類やタイミングに悪影響はなく、術中・術後の安全性も許容範囲であった。


感想です。

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どんな結果だった?

🔸 手術ができた患者の割合
→ 約80%の患者さんが予定通り手術できていました。デュルバルマブを使った群と使わなかった群で差はほぼなし。

🔸 R0切除率(がんを取り切れた割合)
→ デュルバルマブ群で94.7%、プラセボ群で91.3%。わずかに良好でした。

🔸 手術のタイプや難しさ
→ 開胸術と低侵襲手術(VATSなど)の割合は両群でほぼ同じ。肺葉切除が主流でした。

🔸 リンパ節のダウンステージ
→ 「N2→N0」になった人の割合はデュルバルマブ群で47.3%、プラセボ群で40.2%。
→ がんの広がりが小さくなっていた人が多かったのはポイントですね。

🔸 手術合併症
→ 両群で約6割に合併症ありましたが、ほとんどが軽度(Grade 1/2)で、重症例は少数でした。


この研究からわかること

デュルバルマブを術前化学療法に加えても、

  • 手術ができなくなることはない
  • 手術の方法(開胸/VATS)や手術の安全性にも影響なし
  • むしろがんの広がり(ステージ)が下がった例も多い

という、「使っても問題ないし、むしろ良いかも」という結果でした。

特に、R0切除率やリンパ節の縮小は、今後の予後改善につながる可能性があり、非常に注目されています

論文解釈に注意するポイント

長期的な生存や再発率はまだ分からない
→ 今後の追跡データが重要になります。


🧭臨床現場でどう活かす?

臨床現場では、切除可能な肺がんに対して、

「デュルバルマブを含む術前化学療法をしても、手術は普通にできそう」
「R0切除や病期ダウンステージングも多少期待できる」

という判断ができます。

今後、術前治療を検討するカンファレンスなどで、「この人はAEGEANレジメンいけるかな?」と考える場面が増えるかもしれませんね。



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