間質性肺疾患論文紹介

間質性肺疾患の急性増悪に対するコルチコステロイド療法: システマティックレビュー(Srivali N, et al. Thorax. 2024)

Corticosteroid therapy for treating acute exacerbation of interstitial lung diseases: a systematic review

  • ステロイド療法は、IPFを含むILDの急性増悪時の標準治療として最も多く使用されますが、ランダム化比較試験(RCT)はなく、主に観察研究からのデータに基づいています。そのため、有効性や予後改善効果についてのエビデンスは低いとされています。
  • 同様に、免疫抑制剤や抗線維化薬なども急性増悪時の治療として有効であるというエビデンスはありません。
  • なので、急性増悪の治療に関して「確立された治療法がない」と言うのが現状ですね。

エビデンスはないですけど、経験的にステロイドを使用するしかないのが現状ですよね・・・・

研究の背景と目的

間質性肺疾患(ILD)の急性増悪(AE-ILD)はしばしば死亡に至り、日常診療における重大課題である。コルチコステロイドは頻繁に使用されるものの、最適な投与法やその臨床的有効性は未だ不確定である。この知識のギャップを埋めるため、本研究ではAE-ILD患者におけるステロイド療法の臨床的効果を評価する系統的レビューを実施した。

方法

  • 系統的レビューおよびメタアナリシスのガイドライン(PRISMA)に従い、複数のデータベースを系統的に検索し、12,454件の論文を特定した。
  • 重複を除去し、タイトルおよび要旨をスクリーニングした後、447件を全文レビューの対象とした。
  • 最終的に、AE-ILD治療において高用量コルチコステロイドと低用量または非ステロイド治療を比較した9件の研究が選定基準を満たした。
  • 主要なアウトカムには、入院中および長期の死亡率、ならびにAE再発率が含まれた。

主な結果

  • 9件の研究(合計n=18,509)の分析により、治療効果がILDのサブタイプによって異なることが明らかになった。
  • 特発性肺線維症(IPF)以外のILDでは、高用量コルチコステロイド療法(プレドニゾロン換算で1.0 mg/kg超)が生存率を改善し(調整後HR 0.221, 95% CI 0.102–0.480, p<0.001)、90日間の死亡率を低下させた
  • 高用量ステロイドの早期漸減(2週間以内に10%以上の減量)は、入院中の死亡率を低下させた(調整後HR 0.37, 95% CI 0.14–0.99)。
  • 初月の累積投与量が高い場合(5185±2414 mg/月 vs 3133±1990 mg/月)、再発率の低下と関連があった(調整後HR 0.61, 95% CI 0.41–0.90, p=0.02)。
  • 一方、IPF患者では、高用量療法の利点が一貫せず、一部の研究では死亡リスクの増加が報告された(OR 1.075, 95% CI 1.044–1.107, p<0.001)。

結論

このレビューは、AE-ILDに対する個別化治療の潜在的な利点を強調しつつ、決定的な推奨を行う際の慎重さが必要であることを指摘している。
特に非IPF症例では、高用量コルチコステロイドが有望である可能性を示しているが、現在のエビデンスは一貫しておらず、十分な裏付けとなる文献の欠如が確実な結論を導き出すことを困難にしている。
AE-ILDの治療戦略をさらに洗練し最適化するためには、ランダム化比較試験によるさらなる研究が必要である。

IPF以外のILDではステロイド治療で90日死亡率が低下する可能性がありますが、IPFでは必ずしも90日死亡率の低下につながっていないのではないかというところですね・・・

IPF患者では一時的に酸素化が改善して数週間以内の範囲では安定する患者さんがいるような気がしますが、確かに90日やそれ以上の期間でみると生存率を改善していないのかもしれません・・・

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