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論文紹介集中治療

【実臨床】ARDS患者の人工呼吸器管理・神経筋遮断中、どの鎮静薬を使うべきか?

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Sedation Practices During Continuous Neuromuscular Blockade for Acute Respiratory Distress Syndrome. Peter J Dunbar, et al. Annals of the American Thoracic Society, 2025.

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はじめに

ARDSって、人工呼吸管理が必要になるくらい重症な病態ですよね。

その中でも特に呼吸器と患者がうまく同期しないケースでは、神経筋遮断薬(NMB)を使って強制的に呼吸をコントロールすることがあります。

でも、NMBを使うってことは、患者さんは完全に動けない=自分で訴えることができない。

なので当然、深い鎮静が必要になります。

ここで問題になるのが、「どの鎮静薬を使うか」です。

昔からよく使われてきたベンゾジアゼピンですが、近年はせん妄や人工呼吸期間の延長などの悪影響が言われていて、だんだんとプロポフォールなど非ベンゾ系へのシフトが進んでいます。

でも、実際にNMB中にどんな鎮静薬が使われているのか?

そしてその選択がアウトカムにどう関わるのか?は、よくわかっていなかったんですね。

背景

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)において、換気の同期性を改善する目的で神経筋遮断(NMB)が頻用される。

NMB中に併用される鎮静薬の種類や、それらが患者アウトカムに与える影響については不明である。

目的

NMB中の鎮静使用パターンを明らかにし、プロポフォール+オピオイドの使用が、ベンゾジアゼピン+オピオイドと比較して患者アウトカムを改善するかどうかを検証すること。

方法

2010〜2021年の米国の全国データベースを使用し、ARDSまたはそのリスク因子を有し、入院後少なくとも2日間NMBを受けた挿管・人工呼吸患者を対象とした。

入院初日の鎮静・鎮痛薬の使用状況を把握し、プロポフォール+オピオイドとベンゾジアゼピン+オピオイドの使用と、人工呼吸非依存日数(VFD)、28日生存率、自宅退院率との関連を多変量解析で評価した。

結果

NMB中の主たる鎮静薬として、ベンゾジアゼピンよりもプロポフォールの使用が増加していた。

プロポフォール+オピオイドは、ベンゾジアゼピン+オピオイドと比較して、

  • VFDの増加(aOR 1.38, 95% CI 1.24–1.54)、
  • 28日生存率の向上(aOR 1.15, 95% CI 1.01–1.31)、
  • 自宅退院率の向上(aOR 1.26, 95% CI 1.09–1.46)

と関連していた。

結語

2010〜2021年の間、ARDSに対するNMB中の鎮静管理は、ベンゾジアゼピン主体からプロポフォール主体へと移行している。

プロポフォール+オピオイドの使用は、ベンゾジアゼピン+オピオイドに比べてVFDが多く、患者アウトカムの改善と関連している可能性がある。

さらなる検証が必要である。


感想です。

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📊 研究の方法と概要

  • 対象:2010〜2021年の米国の全国データ(Premier Healthcare Database)
  • 対象患者:ARDSまたはそのリスク因子(敗血症、肺炎、外傷など)があり、入院後2日以上NMBを受けていた人工呼吸中の患者
  • 比較した薬剤
    • プロポフォール+オピオイド
    • ベンゾジアゼピン+オピオイド
  • 主要評価項目:28日以内の人工呼吸非依存日数(Ventilator-Free Days, VFD)
  • 副次評価項目:28日生存率、自宅退院率

🔬 プロポフォールの勝ち⁉️

薬剤使用の傾向(2010〜2021)

  • プロポフォールの使用は42% → 74%に増加
  • ベンゾジアゼピンは62% → 42%に減少
  • 一番よく使われた組み合わせは
    • プロポフォール+オピオイド(28%)
    • 次いでベンゾジアゼピン+オピオイド(22%)

アウトカムの比較

項目プロポフォール+オピオイドベンゾジアゼピン+オピオイド
VFD(中央値)21日15日
28日生存率65.3%62.6%
自宅退院率22.3%20.3%

調整解析でも、プロポフォール+オピオイド群の方が有意に良いアウトカムでした(VFDのaOR 1.38, p<0.001など)。


💭 なぜ差がついたのか?

この研究では、「プロポフォール+オピオイド」を使うと

  • 人工呼吸器から早く離脱できる
  • 生存率もやや良くなる
  • 退院できる可能性も高い

という結果が得られました。

もちろん、観察研究なので「これが原因だ!」とは言い切れませんが、プロポフォールは薬効のon/offが速く、せん妄リスクも比較的少ないことが知られており、それが影響している可能性があります。

一方で、ベンゾジアゼピンは長期に残存しやすく、過鎮静になりやすいという特徴がありますね。



⚠️ ここは注意:限界点

  • 観察研究なので因果関係は不明
  • 薬剤の投与量や持続投与の有無は不明
  • せん妄や記憶回復などの二次アウトカムは評価していない

ただ、それでも大規模データに裏打ちされた実臨床の傾向は非常に参考になりますね。


🏥 臨床現場ではどう活かす?

ARDS+NMBの患者が来たとき、プロポフォール+オピオイドを選ぶことで予後が良くなる可能性があることを念頭におくとよいでしょう。

もちろん、肝機能・循環動態・薬剤の在庫状況などは考慮する必要がありますが、「昔ながらのベンゾジアゼピン」に何となく頼っていた場合は、ちょっと立ち止まって考える機会になると思います。

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