学び系

間質性肺疾患

その①概要編 2023年 アメリカリウマチ学会/アメリカ胸部学会による自己免疫性リウマチ疾患に伴う間質性肺疾患の治療ガイドライン(Arthritis Rheumatol. 2024.)

2023 American College of Rheumatology (ACR)/American College of Chest Physicians (CHEST) Guideline for the Treatment of Interstitial Lung Disease in People with Systemic Autoimmune Rheumatic Diseases. Arthritis Rheumatol. 2024. 引用文献このガイドラインが策定された背景を簡単に説明すると、全身性自己免疫性リウマチ疾患に関連する間質性肺疾患(SARD-ILDまたはCTD-ILD、今回はSARD-ILDで統一)の治療に関しては、特に強皮症を除く多くの疾患でエビデンスレベルが低く、治療選択が手探り状態であったことが大きな課題でした。そのため、呼吸器内科医やリウマチ専門医が、根拠をもって治療方針を立てるための指針が求められていました。今回のガイドラインでは、臨床で直面することの多い治療選択について、一定の方向性を示しており、医療従事者にとっては非常に助けになるものです。た...
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ガイドライン

その④ 肺炎編 2024 Focused Update:敗血症、ARDS、市中肺炎におけるコルチコステロイド使用ガイドライン(Chaudhuri D, et al. Crit Care Med. 2024.)

2024 Focused Update: Guidelines on Use of Corticosteroids in Sepsis, Acute Respiratory Distress Syndrome, and Community-Acquired Pneumonia.引用文献肺炎に対するステロイド治療の知識:呼吸器内科医が押さえるべきポイント市中肺炎(CAP)は、呼吸器内科医が日常的に扱う疾患の中でも特に頻度が高く、重症化すると人工呼吸器やICU管理を必要とするケースもあります。2024年版の最新ガイドライン全体の概要については別の記事でまとめていますので、<そちら>をご覧いただければ全体像が掴みやすくなると思います。今回の記事では、その中でも特に市中肺炎に対するステロイド治療の詳細と、臨床現場での活用方法に焦点を当てて勉強していきます。今回のガイドラインでは、重症CAPと軽症CAPで分けた推奨が示されています。重症かそうでないかの判断が、ステロイド使用を考慮するうえで重要になっています。重要肺炎の定義出典定義アメリカ胸部学会/感染症学会 2007 1以下のいずれかを満たす場...
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論文紹介

その③ ARDS編 2024 Focused Update:敗血症、ARDS、市中肺炎におけるコルチコステロイド使用ガイドライン(Chaudhuri D, et al. Crit Care Med. 2024.)

2024 Focused Update: Guidelines on Use of Corticosteroids in Sepsis, Acute Respiratory Distress Syndrome, and Community-Acquired Pneumonia.引用文献ARDSに対するステロイド治療の知識:呼吸器内科医が押さえるべきポイントARDS(急性呼吸窮迫症候群)は、呼吸器内科医が遭遇する重篤な症候群の一つです。本記事では、2024年版のガイドラインに基づき、ARDSに対するステロイド治療の有効性とリスクについて勉強してみました。このガイドライン全体の概要については別の記事でまとめていますので、<そちら>をご覧いただければ全体像が掴みやすくなると思います。まずARDSについて簡単におさらいですが、よくご存じであればARDSに対するステロイド治療の項目まで飛ばしてください。ARDSとは?何らかの原因によって引き起こされた二次性の病態であり、急性の両側肺の浸潤影を特徴とし、しばしば重篤で予後不良な症候群です。2012年に策定された「ベルリン定義」1 2 を基盤に、20...
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ガイドライン

その②敗血症編 2024 Focused Update:敗血症、ARDS、市中肺炎におけるコルチコステロイド使用ガイドライン(Chaudhuri D, et al. Crit Care Med. 2024.)

2024 Focused Update: Guidelines on Use of Corticosteroids in Sepsis, Acute Respiratory Distress Syndrome, and Community-Acquired Pneumonia.引用文献敗血症に対するステロイド治療の知識:呼吸器内科医が押さえるべきポイント敗血症や敗血症性ショックに対するステロイド治療について、最新のガイドラインを紹介するシリーズ記事の一環としてお届けします。まず、このガイドライン全体の概要については、別の記事で詳しくまとめていますので、まずはそちらをご覧ください。<その①概要編 2024 Focused Update:敗血症、ARDS、市中肺炎におけるコルチコステロイド使用ガイドライン>今回の記事では、特に敗血症におけるステロイドの適応や効果について掘り下げて勉強してみました。呼吸器内科医として、このテーマを理解することは非常に重要です。敗血症は、重症肺炎などの呼吸器感染症によって引き起こされることも多く、敗血症性ショックはしばしば多臓器不全を引き起こし、患者の生命に直...
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ガイドライン

その①概要編 2024 Focused Update:敗血症、ARDS、市中肺炎におけるコルチコステロイド使用ガイドライン(Chaudhuri D, et al. Crit Care Med. 2024.)

2024 Focused Update: Guidelines on Use of Corticosteroids in Sepsis, Acute Respiratory Distress Syndrome, and Community-Acquired Pneumonia.引用文献今回のこの2024年版ガイドラインは、2017年に策定された「CIRCI(重症疾患関連コルチコステロイド不全症)」に関するガイドラインを基にしています。この2017年版ではCIRCIの診断と管理に加え、敗血症やARDS、市中肺炎(CAP)など8つの臨床状態におけるコルチコステロイド使用について推奨が示されていました。2017年の文献はパート1<こちら> とパート2 <こちら> に分かれています>」1 2その後、新たなエビデンスが蓄積され、特に敗血症、ARDS、CAPといった臨床現場で頻繁に遭遇する重症疾患において再評価が必要とされました。そのため、これらの状態に焦点を絞り、最新のエビデンスを反映した形で今回のガイドラインが策定されています。呼吸器内科では、呼吸器内科医自身が敗血症、ARDS、重症肺炎を直接...
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統計

Fine-Gray比例ハザード解析(Fine-Gray subdistribution hazard model)ってなあに?

Fine-Grayモデルは、競合リスクを考慮した統計モデルです。Cox比例ハザードモデルと同じく、生存時間分析に用いられますが、競合イベント(例:異なる原因の死亡、治療中止など)が存在する状況で、特定のイベントの発生確率を直接的に評価できる点が特徴です。Fine-GrayモデルとCoxモデルとの違いCoxモデルとFine-Grayモデルは、基本的な考え方や使用するデータ形式が似ています。したがって、大まかな概念は、Coxモデルのページを参照してください<こちら>。ちなみに、両モデルには次のような違いがあります:Coxモデル: 特定のイベントの「ハザード比」を評価する。競合リスクを考慮しない。Fine-Grayモデル: 特定のイベントの「累積発生率」(Cumulative Incidence Function: CIF)を評価する。競合リスクを考慮する。この違いにより、Fine-Grayモデルは競合リスクを含むデータでの解析に適しています。競合リスクについてはこちらのページを参照してください。Fine-Gray解析に必要なデータFine-Grayモデルを適切に解析するには、以下のデータが...
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統計

Cox比例ハザード解析(Cox Proportional Hazards Model)ってなあに?

Cox比例ハザード解析は、ある出来事(イベント)が発生するまでの時間を、さまざまな要因がどのように影響しているかを調べる統計解析の方法です。呼吸器内科では、例えば患者の死亡や症状悪化といったイベントが研究対象になります。Cox比例ハザード解析の概要何を解析するか?Cox比例ハザードモデルは、どの要因(例:年齢、性別、喫煙歴)が、興味あるイベント(例:死亡、発作)の発生リスクにどのように影響を与えるか?を解析するモデルです。特に、時間に対するリスク(ハザード)の相対的な影響(ハザード比)を評価します。解析に必要なデータ影響を与える要因(共変量)患者の基本情報(例:年齢、性別、病状)を「共変量」として使用します。共変量は、イベント(例:死亡、発作)が発生するリスクにどのように影響を与えるかを解析するための変数です。例:年齢、性別、病気の重症度(FEV1、酸素飽和度)、喫煙歴など。Coxモデルでは、基本的にベースライン共変量(観察開始時点での固定された値)を使用しますが、特定の解析では時間依存性共変量(時間とともに変化する値)を含めることも可能です。後者は上級者向けです。イベントの有無:解析...
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統計

競合イベント(Competing Events)ってなあに?

競合イベント(Competing Events)は、研究で関心のあるイベントが発生する前に、他のイベント(競合イベント)が発生することで、興味あるイベントが発生不可能になる状況を指します。例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の急性増悪に関心がある場合、患者が急性増悪を経験する前に死亡した場合、その患者では急性増悪の発生を評価できなくなります。これが競合イベントの典型的な例です。なぜ競合イベントを考慮する必要があるのか?競合イベントを考慮しないと、興味あるイベントの発生確率が過大評価される可能性があります。たとえば、死亡を無視した解析では、「全員が生存している」と仮定するため、実際の臨床現場で観察される確率とかけ離れた結果になります。具体例と競合イベントになる理由COPD患者の急性増悪の累積発症率興味あるイベント: 急性増悪の発生競合イベント: 死亡理由: 死亡した患者は急性増悪を経験することができないため、興味あるイベントが発生不可能になる。IPF患者の肺癌発生の累積発症率興味あるイベント: 肺癌の発生競合イベント: 死亡理由: 死亡すると肺癌の発生を確認する機会が失われるため。肺...
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学び系

一般化可能性(Generalizability)と過適合(overfitting)ってなあに?

臨床研究などである疾患におけるリスク因子を同定するとき(例えば、IPFにおける死亡リスク因子)やバイオマーカーやAI、診断モデルの開発では、「開発(探索)コホート」と「検証コホート」を分けて解析を行うことが一般的です。まず、開発コホートでリスク因子の同定やモデル構築を行い、検証コホートでそれが機能するかどうかを確かめます。その目的は、モデルや結果の一般化可能性を確保し、過適合を防ぐことにあります。以下では、これらの概念を解説します。一般化可能性(Generalizability)とは?一般化可能性とは、モデルや研究結果が新しいデータや異なる集団に対しても同じように適用できる能力を指します。つまり、「特定のデータセットや環境だけでなく、他の状況でも有効に機能するか」を評価する概念です。なぜ一般化可能性が重要なんでしょうか?一般化可能性が高い研究やモデルは、リアルワールドのさまざまな状況で有用であり、信頼性の高い結果を提供します。逆に、一般化可能性が低い場合、そのモデルや結論は特定の環境に依存しており、新しいデータでは役に立たない可能性があります。具体例臨床研究例: ある薬の効果を調べる臨...
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統計

開発コホートと検証コホートってなあに?

臨床研究などである疾患におけるリスク因子を同定するとき(例えば、IPFにおける死亡リスク因子)やバイオマーカーやAI、診断モデルの開発では、「開発(探索)コホート」と「検証コホート」を分けて解析を行うことが一般的です。まず、開発コホートでリスク因子の同定やモデル構築を行い、検証コホートでそれが機能するかどうかを確かめます。その目的は、モデルや結果の一般化可能性を確保し、過適合を防ぐことにあります。以下では、これらの概念を解説しながら、その重要性を順を追って説明します。開発コホートと検証コホートとは?開発コホートリスク因子の同定やモデルの構築、バイオマーカーの選定を行うためのデータセットです。検証コホート同定したリスク因子や開発したモデル、選定したバイオマーカーが別のデータセットでも有効かを確認するために使用されるデータセットです。ちなみに、開発コホート・検証コホートは以下のような表現を使うことがあります。開発コホート(Development Cohort)日本語での言い換え:学習用コホート:モデルを「学習」させるためのデータセットとして強調する場合に使われる。構築用データ:モデルの構築...
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