論文紹介

間質性肺疾患

特発性肺線維症における咳の治療としてのモルヒネ(PACIFY COUGH):前向き、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、二方向クロスオーバー試験(Wu Z, et al. Lancet Respir Med. 2024)

Morphine for treatment of cough in idiopathic pulmonary fibrosis (PACIFY COUGH): a prospective, multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, two-way crossover trial. Wu Z, et al. Lancet Respir Med. 2024 Apr;12(4):273-280.引用文献ILD患者さんへの、咳の管理の重要性が高まっています。線維化性のILD患者さんにおける咳嗽が疾患進行や予後不良と関連する可能性については別記事にまとめていますので<こちら>からどうぞ。特発性肺線維症(IPF)の患者さんにとって、咳は生活の質を大きく損なう症状ですが、エビデンスに基づく治療選択肢がほとんどないのが現状です。これまでモルヒネは、主にIPFにおける呼吸困難の緩和に使用されてきましたが、その咳への効果については試験されたことがありませんでした。1しかし、難治性慢性咳を対象とした研究では、低用量の徐放性モルヒネ...
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間質性肺疾患

線維化性間質性肺疾患における咳嗽の疫学と予後的意義(Khor YH, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2024)

Epidemiology and Prognostic Significance of Cough in Fibrotic Interstitial Lung Disease. Khor YH, Johannson KA, Marcoux V, Fisher JH, Assayag D, Manganas H, Khalil N, Kolb M, Ryerson CJ; CARE-PF Investigators. Am J Respir Crit Care Med. 2024 Oct 15;210(8):1035-1044.引用文献ILD患者さんへの、咳の管理の重要性が高まっています。咳嗽は、間質性肺疾患(ILD)患者においてQOLに大きく影響を与える重要な症状の一つです。さらに、特発性肺線維症(IPF)を含む線維化性疾患では、咳嗽や呼吸による肺への機械的な進展刺激が、線維化を進行させる要因となる可能性が指摘されています。咳ってもう何周も回った研究テーマのように思いますが、奥が深いですね。また咳の研究がブームになるかもしれません。いくつかの基礎研究では、肺の伸展刺激が以下のようなメカ...
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間質性肺疾患

その②概要の続き<辞書として使って!!>編 アメリカリウマチ学会/アメリカ胸部医師学会による自己免疫性リウマチ疾患に伴う間質性肺疾患の治療ガイドライン(Arthritis Rheumatol. 2024.)

2023 American College of Rheumatology (ACR)/American College of Chest Physicians (CHEST) Guideline for the Treatment of Interstitial Lung Disease in People with Systemic Autoimmune Rheumatic Diseases. Arthritis Rheumatol. 2024. 引用文献はじめに概要については前回の記事で紹介していますのでご参照ください。→<こちら>この記事は日常診療の際に、辞書みたいに使って頂けるとうれしいです。尚、この論文では膠原病ILDをSARD-ILDと表記しています。CTD-ILDと置き換えてもよいでしょう。このガイドラインは、次の3つに焦点を当てています:ILDの第一選択治療治療中でも進行するILD(PF-ILD)への対応急速進行性ILD(RP-ILD)の治療治療法は専門家が複数の選択肢を比較し、「優先されるオプション」と「追加的なオプション」に階層化しています。ただし、どの治療法を使...
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間質性肺疾患

その①概要編 2023年 アメリカリウマチ学会/アメリカ胸部学会による自己免疫性リウマチ疾患に伴う間質性肺疾患の治療ガイドライン(Arthritis Rheumatol. 2024.)

2023 American College of Rheumatology (ACR)/American College of Chest Physicians (CHEST) Guideline for the Treatment of Interstitial Lung Disease in People with Systemic Autoimmune Rheumatic Diseases. Arthritis Rheumatol. 2024. 引用文献このガイドラインが策定された背景を簡単に説明すると、全身性自己免疫性リウマチ疾患に関連する間質性肺疾患(SARD-ILDまたはCTD-ILD、今回はSARD-ILDで統一)の治療に関しては、特に強皮症を除く多くの疾患でエビデンスレベルが低く、治療選択が手探り状態であったことが大きな課題でした。そのため、呼吸器内科医やリウマチ専門医が、根拠をもって治療方針を立てるための指針が求められていました。今回のガイドラインでは、臨床で直面することの多い治療選択について、一定の方向性を示しており、医療従事者にとっては非常に助けになるものです。た...
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感染症

非重症インフルエンザ治療のための抗ウイルス薬:システマティックレビューおよびネットワークメタアナリシス(Ya Gao, et al. JAMA Intern Med. 2025)

Antiviral Medications for Treatment of Nonsevere Influenza: A Systematic Review and Network Meta-Analysis. Gao Y, et al.JAMA Intern Med. 2025.PMID:39804622引用文献インフルエンザの治療薬っていろいろありますが、日本では患者さんの状態や使いやすさによって薬の選択が分かれることが多いです。例えば、吸入が難しい小さいお子さんやお年寄りには経口薬のタミフル(オセルタミビル)やゾフルーザ(バロキサビル)が使われると思います。一方で、吸入が可能ならイナビル(ラニナミビル)を選ぶことも多いです。重症例や重症化リスクが高い場合には点滴で投与できるラピアクタ(ペラミビル)が頼りになります。ゾフルーザは「ドラクエの呪文っぽい」って発売当初に話題になりましたね!!ちなみにインフルエンザとステロイドに関する内容は別記事でまとめていますのでどうぞ!!<こちら>これまでの知見をざっくりと。1. Peramivir(ラピアクタ)特性: 点滴静注で投与される1回投与...
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感染症

インフルエンザウイルス性肺炎に対するステロイド

重症疾患関連副腎不全(CIRCI)の診断と管理に関するガイドライン(パートII):重症患者におけるSCCMおよびESICM 2017Pastores SM, et al.Guidelines for the Diagnosis and Management of Critical Illness-Related Corticosteroid Insufficiency (CIRCI) in Critically Ill Patients (Part II): Society of Critical Care Medicine (SCCM) and European Society of Intensive Care Medicine (ESICM) 2017. Crit Care Med. 2018.引用文献インフルエンザの入院患者にステロイドを投与すべきか?推奨: インフルエンザに対してステロイドを使用しないことを推奨する(条件付きの推奨、非常に低いエビデンスの質)。根拠: インフルエンザは世界中で毎年数百万人に影響を与え、多くの死者を出しており、その主な原因は制御されない炎症にある...
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論文紹介

がん診断後に実施された早期介入型禁煙治療の生存率への影響(Cinciripini PM, et al. JAMA Oncol. 2024)

Survival Outcomes of an Early Intervention Smoking Cessation Treatment After a Cancer Diagnosis. JAMA Oncol.2024 Dec 1;10(12):1689-1696.引用文献がんと診断された患者さんへの禁煙のメリットの論文です。ちなみに、がん全般の話でして・・・、肺がんに特化した論文ではございませんのでご注意を・・・・禁煙が生存率にどう影響するのか?2014年の報告では、「がん診断後も喫煙を続けると、全死亡率が中央値で50%、がん関連死亡率が61%増加する」とされています。1これはかなり大きな数字で、喫煙ががんの予後を著しく悪化させる可能性を示しています。また、喫煙はがん治療そのものの効果も減弱させることがあるため、治療の観点からも喫煙をやめることは重要と考えられております。2 3最近のメタ解析によれば、肺がんや頭頸部がんの患者さんにおいて禁煙が生存率を大きく向上させる可能性が明らかになっています。禁煙することで治療がより効果的に働き、再発や二次がんのリスクも下げられる可能性がある...
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感染症

その④ 肺炎編 2024 Focused Update:敗血症、ARDS、市中肺炎におけるコルチコステロイド使用ガイドライン(Chaudhuri D, et al. Crit Care Med. 2024.)

2024 Focused Update: Guidelines on Use of Corticosteroids in Sepsis, Acute Respiratory Distress Syndrome, and Community-Acquired Pneumonia.引用文献肺炎に対するステロイド治療の知識:呼吸器内科医が押さえるべきポイント市中肺炎(CAP)は、呼吸器内科医が日常的に扱う疾患の中でも特に頻度が高く、重症化すると人工呼吸器やICU管理を必要とするケースもあります。2024年版の最新ガイドライン全体の概要については別の記事でまとめていますので、<そちら>をご覧いただければ全体像が掴みやすくなると思います。今回の記事では、その中でも特に市中肺炎に対するステロイド治療の詳細と、臨床現場での活用方法に焦点を当てて勉強していきます。今回のガイドラインでは、重症CAPと軽症CAPで分けた推奨が示されています。重症かそうでないかの判断が、ステロイド使用を考慮するうえで重要になっています。重要肺炎の定義出典定義アメリカ胸部学会/感染症学会 2007 1以下のいずれかを満たす場...
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論文紹介

その③ ARDS編 2024 Focused Update:敗血症、ARDS、市中肺炎におけるコルチコステロイド使用ガイドライン(Chaudhuri D, et al. Crit Care Med. 2024.)

2024 Focused Update: Guidelines on Use of Corticosteroids in Sepsis, Acute Respiratory Distress Syndrome, and Community-Acquired Pneumonia.引用文献ARDSに対するステロイド治療の知識:呼吸器内科医が押さえるべきポイントARDS(急性呼吸窮迫症候群)は、呼吸器内科医が遭遇する重篤な症候群の一つです。本記事では、2024年版のガイドラインに基づき、ARDSに対するステロイド治療の有効性とリスクについて勉強してみました。このガイドライン全体の概要については別の記事でまとめていますので、<そちら>をご覧いただければ全体像が掴みやすくなると思います。まずARDSについて簡単におさらいですが、よくご存じであればARDSに対するステロイド治療の項目まで飛ばしてください。ARDSとは?何らかの原因によって引き起こされた二次性の病態であり、急性の両側肺の浸潤影を特徴とし、しばしば重篤で予後不良な症候群です。2012年に策定された「ベルリン定義」1 2 を基盤に、20...
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感染症

その②敗血症編 2024 Focused Update:敗血症、ARDS、市中肺炎におけるコルチコステロイド使用ガイドライン(Chaudhuri D, et al. Crit Care Med. 2024.)

2024 Focused Update: Guidelines on Use of Corticosteroids in Sepsis, Acute Respiratory Distress Syndrome, and Community-Acquired Pneumonia.引用文献敗血症に対するステロイド治療の知識:呼吸器内科医が押さえるべきポイント敗血症や敗血症性ショックに対するステロイド治療について、最新のガイドラインを紹介するシリーズ記事の一環としてお届けします。まず、このガイドライン全体の概要については、別の記事で詳しくまとめていますので、まずはそちらをご覧ください。<その①概要編 2024 Focused Update:敗血症、ARDS、市中肺炎におけるコルチコステロイド使用ガイドライン>今回の記事では、特に敗血症におけるステロイドの適応や効果について掘り下げて勉強してみました。呼吸器内科医として、このテーマを理解することは非常に重要です。敗血症は、重症肺炎などの呼吸器感染症によって引き起こされることも多く、敗血症性ショックはしばしば多臓器不全を引き起こし、患者の生命に直...
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