論文紹介

論文紹介

その①概要編 2024 Focused Update:敗血症、ARDS、市中肺炎におけるコルチコステロイド使用ガイドライン(Chaudhuri D, et al. Crit Care Med. 2024.)

2024 Focused Update: Guidelines on Use of Corticosteroids in Sepsis, Acute Respiratory Distress Syndrome, and Community-Acquired Pneumonia.引用文献今回のこの2024年版ガイドラインは、2017年に策定された「CIRCI(重症疾患関連コルチコステロイド不全症)」に関するガイドラインを基にしています。この2017年版ではCIRCIの診断と管理に加え、敗血症やARDS、市中肺炎(CAP)など8つの臨床状態におけるコルチコステロイド使用について推奨が示されていました。2017年の文献はパート1<こちら> とパート2 <こちら> に分かれています>」1 2その後、新たなエビデンスが蓄積され、特に敗血症、ARDS、CAPといった臨床現場で頻繁に遭遇する重症疾患において再評価が必要とされました。そのため、これらの状態に焦点を絞り、最新のエビデンスを反映した形で今回のガイドラインが策定されています。呼吸器内科では、呼吸器内科医自身が敗血症、ARDS、重症肺炎を直接...
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肺癌

特発性肺線維症におけるピルフェニドンと肺癌発症リスク:a nationwide population-based study(Yoon HY, et al. Eur Respir J. 2024)

Pirfenidone and risk of lung cancer development in IPF: a nationwide population-based study.引用文献特発性肺線維症(IPF)患者さんの肺がん発症リスクは高く、一般集団と比較して最大6倍になり、肺癌の有病率も3.7~31.3%と幅広く報告されています。1 これは高齢や男性、喫煙、環境要因など、IPFと肺がんとの間に共通の発症リスク因子があるからだと考えられています。IPF患者さんに発症した肺がんを治療することには困難が伴うことがあります。というのも、手術や放射線治療、化学療法などにより呼吸機能が低下したり、IPFの急性増悪が起こるリスクがあるからです。2 3 そのせいもあって、IPF単独の患者さんに比べて、IPFと肺がんの両方を持っている患者さんの予後は悪くなりがちです。4 具体的には、IPFと肺がんの両方を持つ患者さんの生存期間の中央値が35~38か月で、IPFだけの患者さんは55~63か月とされており、5年生存率もそれぞれ14.5%と30.1%というデータがあります。5 6ピルフェニドンはご存...
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間質性肺疾患

特発性肺線維症患者におけるベクソテグラスト:INTEGRIS-IPF臨床試験(Lancaster L, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2024)

Bexotegrast in Patients with Idiopathic Pulmonary Fibrosis: The INTEGRIS-IPF Clinical Trial.引用文献特発性肺線維症(IPF)は、原因が不明の間質性肺疾患であり、非常に予後が厳しいことが特徴です。現在、治療薬としてはニンテダニブやピルフェニドンが承認されていて、これらは呼吸機能の悪化を遅らせる効果があります。ただ、残念ながら、生存期間を大きく改善するような治療法はまだ確立されていません。このため、QOLを保ちながらIPFの進行を抑え、さらに生存期間を延長させる新しい治療法の開発が急務となっています。呼吸器疾患の分野では、この領域の研究がこれからさらに進んでいくと期待されています。呼吸器内科に興味のある皆さんにとっても、非常にやりがいを感じられるテーマではないでしょうか?IPFの進行に関しては、TGF-βの活性化が重要な役割を果たしています。このTGF-βは、αvβ6やαvβ1といったインテグリンによって活性化されます。1 2 3 これらのインテグリンは、特にIPF患者さんの肺の上皮細胞や線維芽細胞...
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統計

有機粉塵への曝露後の過敏性肺炎およびその他の間質性肺疾患のリスク(Iversen IB, et al.Thorax. 2024)

Risk of hypersensitivity pneumonitis and other interstitial lung diseases following organic dust exposure.引用文献有機粉塵は、細菌、真菌、花粉など、微生物、植物、動物由来の粒子で構成されています。1こうした粉塵への曝露は、農業、木材加工、繊維産業といった職場で多く見られるのですが、2 3実は職場以外でも鳥やカビなどを通じて曝露が発生する場合があるそうです。4有機粉塵の中でも、特に注目されるのが「エンドトキシン」です。これはグラム陰性細菌の外膜に存在するリポ多糖であり、吸入により肺内の免疫細胞に作用して炎症を引き起こしうることが知られています。具体的には、エンドトキシンが主に肺のマクロファージや気道上皮細胞にあるToll-like receptor 4(TLR4)に結合し、核内因子であるNF-κBが誘導され、炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、TNF-αなど)が放出され、それによって肺の炎症や線維化を促しうることが考えられています。農業などの現場ではエンドトキシンの濃度が非常に...
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間質性肺疾患

ポリミキシンB固定化繊維カラム(PMX)を用いた直接血液灌流療法による特発性肺線維症急性増悪の治療:前向き多施設コホート研究(Abe S, et al.Respir Investig. 2024)

東京医科大学、神奈川県立循環器呼吸器病センター、日本医科大学からの重要な報告です。Direct hemoperfusion with polymyxin B immobilized fiber column (PMX) treatment for acute exacerbation of idiopathic pulmonary fibrosis: A prospective multicenter cohort study引用文献特発性肺線維症の急性増悪(AE-IPF)は、急性発症・進行性の呼吸不全を引き起こす、きわめて致命的な病態です 。1急性増悪の年間発症率は約10%とされており、本邦の北海道StudyではAE-IPFはIPF患者の主要な死因として報告されています。2その予後は極めて不良であり、文献によりさまざまですが、3ヶ月生存率が30~70%と言われています。AE-IPFに対しては、高用量コルチコステロイドを主とする薬物治療が一般的に使用されていますが、有効な治療法は確立されていません。AE-IPFに対するステロイド治療に関する記事は<こちら>をご覧ください。本邦の「特発性...
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間質性肺疾患

乾癬患者における間質性肺疾患の有病率と臨床的特徴(Kanaji N, et al. BMC Pulm Med. 2024)

Prevalence and clinical features of interstitial lung disease in patients with psoriasis引用文献まず、乾癬について簡単に説明します。乾癬(psoriasis)は、皮膚において紅斑と銀白色の鱗屑を特徴とする疾患です。慢性疾患であり、寛解と再発を繰り返します。疫学は以下の通りです。有病率: 世界的に2~3%。日本では約0.1~0.3%性差: 男女差はほとんどなし好発年齢: 20~30代と50~60代に発症のピークありメカニズムとして、以下が考えられています。免疫異常:活性化されたT細胞による炎症性サイトカイン(IL-17、IL-23、TNF-αなど)を放出→皮膚の炎症皮膚の異常なターンオーバー: 免疫反応が皮膚の角化細胞を過剰に刺激し、通常28日周期のターンオーバーが数日で行われるようになり、皮膚の肥厚と鱗屑が蓄積を誘導する。乾癬の治療軽症例では外用薬: ステロイドやビタミンD3製剤中等症~重症例:光線療法: ナローバンドUVBやPUVA療法。免疫抑制剤:メトトレキサートやシクロスポリンなど生物学的製剤...
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論文紹介

重症・コントロール困難な喘息患者におけるテゼペルマブによる臨床的反応および治療中の臨床的寛解:NAVIGATOR試験およびDESTINATION試験の2年間の結果(Wechsler ME, B et al.Eur Respir J. 2024)

Clinical response and on-treatment clinical remission with tezepelumab in a broad population of patients with severe, uncontrolled asthma: results over 2 years from the NAVIGATOR and DESTINATION studies引用文献重症喘息とは、高用量吸入ステロイド(ICS)と長時間作用型β2作動薬(OCSを併用する場合もある)を用いた治療や原因への対応を行ってもコントロール困難な喘息、または高用量治療を減量すると病状が悪化する喘息と定義されております 。1 2重症喘息の患者には、しばしば生物学的製剤の併用が行われております。この論文は、テゼペルマブの臨床試験であるNAVIGATOR試験3 とDESTINATION試験4 の結果に基づいています。試験名NAVIGATOR試験DESTINATION試験実施年代2018年~2020年2020年~2022年観察期間52週間104週間目的テゼペルマブの短期的な有効性と...
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肺高血圧

COPDに関連した肺高血圧症における吸入トレプロスチニル:PERFECT試験(Nathan SD, et al. Eur Respir J. 2024.)

COPDに対する吸入トレプロスチニルの試験です。Inhaled treprostinil in pulmonary hypertension associated with COPD: PERFECT study results引用文献COPD患者において、肺高血圧(PH)の合併は予後不良と関連しています。1 2COPD患者を対象としたPH治療に関するRCTは少なく、小規模研究では、シルデナフィルが肺血管抵抗を低下させてQOLを改善させる可能性を示していますが3 4、タダラフィルの研究では否定的な結果が報告されています。5 COPD-PHの生存率を改善する治療も確立していません。トレプロストニルは、プロスタサイクリンの安定した類似体であり、肺および全身動脈血管床の直接的な血管拡張を促進し、血小板凝集を抑制します。6吸入型トレプロストは、本邦ではPHやILD-PHの治療薬として承認されています(ただし、WHOの1群での有効性・安全性は確立していないとされています。)INCREASE試験については別の記事で取り上げていますが、ILD+PH患者を対象に吸入型トレプロストの安全性および有効性を...
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間質性肺疾患に伴う肺高血圧症に対する吸入トレプロスチニルの長期使用:INCREASEオープンラベル延長試験(Waxman A, et al. Eur Respir J. 2023.)

Increase試験は16週の短期的な試験でしたが、その長期試験の結果も気になりましたので勉強してみました。Long-term inhaled treprostinil for pulmonary hypertension due to interstitial lung disease: INCREASE open-label extension study.引用文献INCREASE試験については別の記事で取り上げていますが、ILD+PH患者を対象に吸入型トレプロストの安全性および有効性を評価したランダム化臨床試験です。1 この試験では、吸入型トレプロストの16週目における6分間歩行距離の改善という主要評価項目を達成しました。注目すべきことに、この試験ではいくつかの副次評価項目も達成されています。以前の記事で取り上げたように、吸入トレプロストニルのFVC改善効果 や 臨床的悪化イベント減少とも関連する可能性が報告されています。トレプロストニルは、プロスタサイクリンの安定した類似体であり、肺および全身動脈血管床の直接的な血管拡張を促進し、血小板凝集を抑制します。2吸入型トレプロストは、...
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INCREASE試験における肺疾患に起因する肺高血圧症患者に対する吸入トレプロスチニルの複数疾患進行イベントに及ぼす有効性(Nathan SD, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2022.)

引き続きIncrease試験の二次解析の論文がありました。少し古いですが、重要な論文だと思います。Efficacy of Inhaled Treprostinil on Multiple Disease Progression Events in Patients with Pulmonary Hypertension due to Parenchymal Lung Disease in the INCREASE Trial引用文献INCREASE試験については別の記事で取り上げていますが、ILD+PH患者を対象に吸入トレプロスチニルの安全性および有効性を評価したランダム化臨床試験です。1 この試験では、吸入トレプロスチニルの16週目における6分間歩行距離の改善という主要評価項目を達成しました。注目すべきことに、この試験ではいくつかの副次評価項目も達成されています。以前の記事<こちら>で取り上げたような吸入トレプロストニルのFVC改善効果だけでなく、臨床的悪化イベント減少とも関連したという結果もあるようです。INCREASE試験での臨床的悪化は、以下のいずれかが初めて発生するまでの時間...
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