論文紹介

肺高血圧

間質性肺疾患に関連した肺高血圧症を有する患者における吸入トレプロスチニルと努力性肺活量: INCREASE試験のpost-hoc解析(Nathan SD, et al. Lancet Respir Med. 2021)

Increase試験を勉強したので二次解析の論文もピックアップしてみました。Inhaled treprostinil and forced vital capacity in patients with interstitial lung disease and associated pulmonary hypertension: a post-hoc analysis of the INCREASE study.引用文献INCREASE試験については別の記事で取り上げていますが、ILD+PH患者を対象に吸入トレプロスチニルの安全性および有効性を評価したランダム化臨床試験です。1 この試験では、吸入トレプロスチニルの16週目における6分間歩行距離の改善という主要評価項目を達成しました。もともとその試験では、吸入トレプロスチニルが既存ILD患者の呼吸機能に悪影響を及ぼさないかどうか安全性評価の観点で肺機能検査が行われています。しかし、予想外の結果として、吸入トレプロスチニルが16週間にわたる治療期間中に努力性肺活量(FVC)の改善と関連していることを示しました。トレプロストニルは、プロス...
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間質性肺疾患

間質性肺疾患による肺高血圧症に対する吸入トレプロスチニル ~INCREASE試験~(Waxman A, et al. N Engl J Med. 2021)

すこし古いのですが、気になったのでピックアップしてみました。Inhaled Treprostinil in Pulmonary Hypertension Due to Interstitial Lung Disease.引用文献トレプロスチニル(Treprostinil)の登場以前、特発性肺線維症(IPF)や間質性肺疾患(ILD)に合併した3群肺高血圧症(PH)に関しては、酸素療法やリハビリテーションが中心であり、特定の薬剤による治療は限定的だったと思います。トレプロスチニルは、プロスタサイクリンの安定した類似体であり、肺および全身動脈血管床の直接的な血管拡張を促進し、血小板凝集を抑制します。1 また、吸入型トレプロストは、第1群肺高血圧症の患者において12週間の治療後に運動能力を改善することが示されています。2 これまでに行われたパイロット研究のデータによれば、吸入トレプロスチニルは第3群肺高血圧症の患者において血行動態および機能的能力を改善する可能性が示唆されています⁹⁻¹²。3 4 5投与経路として、吸入、経皮、静脈注射、経口などがあり、トレプロスト®吸入液は、肺動脈性肺高血圧症...
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肺癌

進行非小細胞肺癌における免疫療法に対する治療反応性予測のための深層学習モデル(Rakaee M, et al. JAMA Oncol. 2024.)

Deep Learning Model for Predicting Immunotherapy Response in Advanced Non-Small Cell Lung Cancer.引用文献この論文を勉強してみました。この論文は、「進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者において、深層学習アルゴリズムによる組織学的画像評価によって、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)への反応を直接予測できるか?」というクリニカルクエスチョンに基づいています。実臨床では、ICI単剤療法における反応を予測する主要なバイオマーカーはPD-L1タンパク質の発現量ですね。しかし、PD-L1発現の評価は万能ではなく、PD-L1発現が低くてもICI治療の恩恵を受ける患者がいますし、PD-L1発現が高くてもでも反応しない患者もいますね。ICIの予測バイオマーカーとして、tumor mutational burden(TMB)もありますが、TMBの使用にはコスト、アッセイのばらつき、最適なカットオフ値の定義、感度や特異度の限界といった課題があります。そのため、ICIへの反応を予測するための新たなバイオマーカーを特...
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論文紹介

吸入ステロイド薬の用量と有害事象の発生頻度の関連(Bloom CI, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2024.)

Association of Dose of Inhaled Corticosteroids and Frequency of Adverse Events.引用文献吸入ステロイド薬(ICS)は、呼吸器症状や肺機能の改善させ、喘息発作を予防し、死亡率を低下させるので、喘息治療ののキードラッグと言えます。ガイドラインでは、良好な喘息コントロールを達成するために、可能な限り最小の用量を処方することが推奨されてます1 2。ICSの最大の効果の80~90%は、低用量ICS(フルチカゾン換算で100–200 μg)だけで達成されると考えられています3 4。しかし、臨床現場では、低用量で十分にコントロール可能な患者に対して、過剰に高用量のICSが継続されることが結構あります 5。経口ステロイドの副作用として、心血管疾患、骨粗鬆症、白内障、副腎抑制、肥満、糖尿病などがあるので、我々はなるべく使用量や使用期間を最小限にしようとしています。しかし。ICSに関する最近の研究では以下の点が報告されています。複数のランダム化臨床試験から得られた視床下部-下垂体軸データに基づき、高用量ICSの約3分の2が全身的...
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感染症

ワクチン接種を受けた慢性肺疾患患者におけるデルタ株およびオミクロン株SARS-CoV-2転帰に関する全国規模のコホート研究(Wee LE, et al. Chest. 2024.)

A Nationwide Cohort Study of Delta and Omicron SARS-CoV-2 Outcomes in Vaccinated Individuals With Chronic Lung Disease引用文献COPD患者がCOVID-19への感受性が高くなることが報告されています。この背景には、気道上皮の免疫応答の変化やACE2受容体の発現増加が関連していると考えられています。また、死亡リスクの上昇も指摘されています。喘息患者において、特に重症喘息を持つ場合、COVID-19に感染しやすいとの報告がある一方で、軽症喘息患者では感受性が健康な人と同等であることも示唆されています。ILD患者でもCOVID-19関連死亡リスクが高いとされています。でもそれらの研究は、オミクロン期以前のデータですよね。現在の株では呼吸器疾患があるとCOVID-19の感受性や重症化率はどうなんでしょうか? ワクチンは必要なのでしょうか?研究の背景とリサーチクエスチョン慢性肺疾患を有する個人は、呼吸器ウイルス感染症に対して感受性が高いが、慢性肺疾患とCOVID-19の転帰に関す...
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間質性肺疾患

間質性肺疾患の急性増悪に対するコルチコステロイド療法: システマティックレビュー(Srivali N, et al. Thorax. 2024)

Corticosteroid therapy for treating acute exacerbation of interstitial lung diseases: a systematic review引用文献ステロイド療法は、IPFを含むILDの急性増悪時の標準治療として最も多く使用されますが、ランダム化比較試験(RCT)はなく、主に観察研究からのデータに基づいています。そのため、有効性や予後改善効果についてのエビデンスは低いとされています。同様に、免疫抑制剤や抗線維化薬なども急性増悪時の治療として有効であるというエビデンスはありません。なので、急性増悪の治療に関して「確立された治療法がない」と言うのが現状ですね。エビデンスはないですけど、経験的にステロイドを使用するしかないのが現状ですよね・・・・研究の背景と目的間質性肺疾患(ILD)の急性増悪(AE-ILD)はしばしば死亡に至り、日常診療における重大課題である。コルチコステロイドは頻繁に使用されるものの、最適な投与法やその臨床的有効性は未だ不確定である。この知識のギャップを埋めるため、本研究ではAE-ILD患者におけるステ...
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間質性肺疾患

悪性腫瘍患者における細胞障害性抗がん剤による薬剤性肺炎とILAとの関連性(Oishi, et al. Respir Med. 2024)

Association of interstitial lung abnormalities with cytotoxic agent-induced pneumonitis in patients with malignancy引用文献最近はInterstitial lung abnormalities(ILA)に注目しているのでいろいろジャーナルを見ていたらこんな論文がArticle in pressになっていました。ちなみにILAとは、「臨床的に間質性肺疾患(ILD)が疑われていない患者で偶然に発見される、ILDに適合する可能性があるCTの所見 (Hatabu et al. Lancet Respir Med 2020)」を指しています。ground-glass abnormalitiesやreticular abnormalities、lung distortion、traction bronchiectasis、honeycombing、およびnon-emphysematous cystsを含む非依存性異常が偶発的に発見されること、肺の領域(上部、中部、下部の肺領域は大動脈弓...
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間質性肺疾患

Fibrotic HPとIPFを区別するためのCT診断モデルの検証(Sumikawa, et al. Respir Investig. 2024)

Validation of a computed tomography diagnostic model for differentiating fibrotic hypersensitivity pneumonitis from idiopathic pulmonary fibrosis引用文献過敏性肺炎(HP)には、線維化の有無に応じて非線維化(non-fibrotic)型と線維化(fibrotic)型の2つの表現型に分類されます。ガイドラインでは、「typical HP(典型的)」、「compatible with HP(HPに合致する)」、および「indeterminate for HP(HPかどうか微妙)」のような高分解能CT(HRCT)パターンが示されています。HPに特徴的な所見の分布として、【ランダムな分布】【中肺野優位】【下肺野が比較的スペアされる分布】があります。fibrotic HPに見られる所見として、小気道の異常、例えば不明瞭な中心小葉性結節、mosaic attenuation、three-density pattern、エアトラッピングなどが挙げられます。簡...
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間質性肺疾患

COPDGeneにおける間質性肺疾患の発症、進行、および死亡率(Rose JA, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2024)

Development, Progression, and Mortality of Suspected Interstitial Lung Disease in COPDGeneRose JA, et al.Am J Respir Crit Care Med. 2024.PMID:39133466 引用Interstitial Lung Abnormalities(ILA)を持つ一部には間質性肺疾患(ILD)が疑われる患者さんが含まれ、不良な予後を示す可能性があります。ただし、そのようなILDの発症率や進行率、そして死亡率に影響するかどうかについては明確ではありません。この研究の目的ILDの発症率、進行率、および死亡率を調査し、ILDや進行基準がこれらに与える影響を評価すること。方法COPDGene(過去に行われた慢性閉塞性肺疾患の遺伝疫学研究)の参加者を対象としました。登録時および5年後の追跡調査で、ILAと呼吸機能の評価があった患者が解析されました。ILDの定義:ILAと線維化の存在、および/またはFVC < 80%登録時に既存ILD(prevalent ILD)を評価し、5年後...
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