呼吸器内科で遭遇する慢性好酸球性肺炎(CEP)は、ステロイドに対する反応性が非常に高い一方で、再発率も高く、治療期間に明確なコンセンサスがありませんでした。
この論文は、2015年に発表されたものでありながら、今なお臨床判断のベースとなる国際的に重要なエビデンスです。
Efficacy of short-term prednisolone treatment in patients with chronic eosinophilic pneumonia. Oyama Y, et al. Eur Respir J. 2015.
以下上記の論文から引用します。
はじめに

CEPは、中年女性に多く、咳嗽、発熱、労作時呼吸困難、倦怠感などの症状を示します。
画像では辺縁不明瞭な多発浸潤影・移動する浸潤影が特徴で、血液やBALでの好酸球増多を伴い、感染など他原因を除外して診断します。
治療は全身性コルチコステロイドが基本で、初期反応は劇的ですが、減量・中止に伴い30–50%で再発することが知られています。

とはいえ、最適な治療期間についての前向き比較データは不足していました。
本研究は、3か月 vs 6か月のプレドニゾロン投与期間を前向きに比較した、貴重な無作為化研究です。
この論文は、2015年に発表されたものでありながら、今なお臨床判断のベースとなる国際的に重要なエビデンスですので、取り上げてみました。
背景
慢性好酸球性肺炎(CEP)患者では、コルチコステロイド治療に対し劇的な改善がみられる一方で、治療終了後の再発が一般的である。
コルチコステロイド治療の最適な期間は不明である。
方法
本無作為化、非盲検、並行群比較試験では、CEP患者に対し、経口プレドニゾロンを
- 3か月投与する群(3か月群)または
- 6か月投与する群(6か月群)に割り付け、
その後2年間観察した。
全患者は初期用量0.5 mg/kg/日で開始し、漸減の後、各々3か月または6か月で中止した。
主要評価項目は追跡期間中の再発である。
結果
最終解析では3か月群23例、6か月群21例であった。
全例でプレドニゾロン投与に良好な反応を示した。
再発は
- 3か月群で12例(52.1%)、
- 6か月群で13例(61.9%)
に認め、累積再発率に有意差はなかった(p=0.56)。
再発症例はすべて、プレドニゾロン再投与により改善した。
結語
CEP患者において、3か月と6か月のプレドニゾロン治療群の間で再発率に差は認められなかった。

勉強してみます。
どういう結果だったの?
- 対象:CEPと診断された患者44例(3か月群23例、6か月群21例)
- 治療:0.5 mg/kg/日のプレドニゾロン→各群で漸減・中止
- 主要評価項目:再発率(2年間追跡)

- 初回反応:両群100%が改善
- 再発率:52.1%(12/23) vs 61.9%(13/21)—有意差なし(p=0.56)
- 再発までの時間(中央値):182日 vs 211日—差なし(p=0.73)

- 累積再発(Kaplan–Meier):群間差なし(p=0.39)
- 再発時対応:全例がプレドニゾロン再投与で改善
- 安全性:感染2例ずつ、高血糖1例ずつ、精神症状1例(3か月群)、骨折1例(6か月群)。中止・死亡なし

- 再発予測因子:単変量Coxで有意因子なし
臨床にどう活かすか?
- 3か月治療は6か月治療と再発アウトカムで差がなく、短期治療が実用的な選択肢になりうる。
- ステロイド毒性の最小化という点では、長期投与リスク(糖尿病・骨粗鬆症・感染など)を考えると、短期で切り上げ、慎重なモニタリングと再発痔の迅速な再治療で対応する運用は合理的ですね。
CEPに対する治療:まとめ
- 0.5 mg/kg/日のPSL→漸減・中止:3か月の短期治療でも6か月と同等の効果が得られそう。
- ステロイド関連有害事象を最小限に抑えられる選択肢ができた
- 再発してもプレドニゾロン再導入で高率に再改善できることが確認された
- 「最初から長期で出さないと再発するのでは…?」という臨床現場の不安に、エビデンスで答えを出した
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