論文紹介検査関連

原因治療に基づく多職種チームディスカッションは難治性慢性咳嗽の転帰を改善する(Yicong Lu, et al. Respir Investig. 2024)

Multidisciplinary team discussion based on etiological treatment improves refractory chronic cough outcomes. Respir Investig. 2024 Nov;62(6):942-950.

いぶし銀的な論文です。

  • 慢性咳嗽に悩む患者さんの中には、どんな治療を試しても改善が見られない「難治性慢性咳嗽(RCC)」に苦しむ方が少なくありません。
  • RCCの原因には、上気道咳嗽症候群、咳喘息、胃食道逆流症、非喘息性好酸球性気管支炎、またはこれらの複合的な要因が挙げられます。
  • これほど多岐にわたる原因が絡み合うため、診断や治療が複雑化しているのが現状です。
  • 結論からいうと、この論文では、呼吸器科、耳鼻咽喉科、消化器科など複数の専門医が連携し、多職種合議を行う診療モデルが慢性咳嗽の診療において有用であるということを伝えています。
  • 多職種チーム(MDT)による診療は、患者さん一人ひとりの背景に応じた精密な診断と適切な治療を可能にします。
  • このアプローチは、がんや間質性肺疾患(ILD)治療の分野ですでに成果を上げており、たとえばILDでは呼吸器内科医、放射線科医、病理医が協力する多職種ディスカッション(MDD)がよく知られています。
  • しかし、慢性咳嗽に対する応用はこれまで十分に注目されてきませんでした。
  • 今回の研究は、MDTモデルをRCC診療に初めて取り入れ、その効果を後ろ向きに検証した画期的な試みです。
  • その結果、多職種チームの介入がRCC患者の症状改善に大きく寄与することが示されました。この研究は、慢性咳嗽治療に新たな道を切り開く重要な一歩といえるでしょう。

背景

  • 難治性慢性咳嗽(RCC)は患者の生活の質を著しく低下させる疾患である。
  • RCCの原因特定および治療計画の開発に向けたさらなる研究が必要である。

方法

  • 呼吸器科、耳鼻咽喉科、消化器科を統合した多職種チーム(MDT)クリニックを設立した。
  • これにより、咳嗽の原因と治療効果を調査した。
  • 治療効果は、咳嗽視覚アナログ尺度(VAS)、レスター咳嗽質問票(LCQ)、および逆流症状指数(RSI)スコアを用いて定量的に評価した。
ステップ実施内容
1. 初診(呼吸器科)– 病歴・症状のヒアリング
– 咳嗽評価指標の記録(VAS、LCQ、RSI)
2. 耳鼻咽喉科– 鼻鏡検査・喉頭鏡検査(必要に応じて実施)
3. 消化器科– GERDなどの評価
– 抗逆流治療や追加検査(胃カメラ、尿素呼気試験)を実施
4. 多職種による討議– 各専門医が集まり、患者情報を基に診断を確定
– 個別化された治療プランの策定
5. フォローアップ– 1~2回の無料フォローアップ
– 治療効果の評価と追加検査・治療の調整

結果

  • MDT外来に来院した患者213名を調査し、そのうち115名のRCC患者を解析対象とした。
  • RCCの診断率は88.7%であった。
  • RCCの主な原因は胃食道逆流症(GERD)(63.5%)、上気道咳嗽症候群(UACS)(43.5%)、および咳嗽型喘息(CVA)(14.8%)であった。
  • 平均治療期間2.17 ± 1.06週間において、73.9%の患者が部分的に咳嗽が緩和され、6.1%の患者が完全に緩和した。
  • 治療前後のVASスコアは6.11 ± 2.02から3.66 ± 2.22(P < 0.05)、LCQスコアは10.24 ± 3.11から13.16 ± 3.59(P < 0.05)、RSIスコアは15.82 ± 7.01から10.71 ± 6.64(P < 0.05)へと有意に改善した。

結論と意義

  • MDTクリニックにおいて、ほとんどのRCC患者の原因が特定された。
  • また、短期間で多くの患者の咳嗽症状が改善されたことから、MDTによる診療モデルが有効であることが示唆される。
  • 今回の研究では、呼吸器科、耳鼻咽喉科、消化器科の専門医が連携するMDTモデルが、難治性慢性咳嗽の診療において非常に効果的であることが示されました。
  • MDTクリニックを活用することで、診断率が飛躍的に向上し、大多数の患者が短期間で症状の緩和を実感できたようです。
  • 「三人寄れば文殊の知恵」というのは、ILDだけでなく、咳嗽診療の分野でも十分に通用するってことですね!

それではまた。

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