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肺癌や悪性腫瘍論文紹介

小細胞肺がんセカンドラインに新風?タルラタマブに期待

日本でも2025年4月に保険収載されたタルラタマブ(イムデトラ®)が、再発SCLCの“次の一手”として期待されます。

第2相DeLLphi‑301での安全性・奏効率、そして第3相DeLLphi‑304での延命効果という段階的エビデンスの積み重ねが、この注目を裏付けていますね。

Giannis Mountzios et al. Tarlatamab in Small-Cell Lung Cancer after Platinum-Based Chemotherapy. N Engl J Med 2025.

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はじめに

小細胞肺がん(SCLC)は非常に進行が速く、全体の5年生存率は5%未満とされています。
初回治療には、プラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬が使われますが、再発するケースが多いです。

再発後のセカンドライン治療として、トポテカン(ノギテカン)やアムルビシンなどがよく使われてきましたが、効果は限定的で、貧血や白血球減少などの副作用も強いのが現状でした。

そんな中、DLL3というがん細胞に特異的に発現する分子を標的にした「タルラタマブ」が登場しました。この薬は、T細胞をがん細胞に誘導して破壊させるという、まったく新しい仕組みを持っています。

今回の研究(DeLLphi-304試験)は、「従来の化学療法」と比べて、このタルラタマブが本当に効果があるのか、安全かどうかを大規模に検証したものです。

タルラタマブ(イムデトラ)や第2相DeLLphi‑301試験に関する過去の記事はこちら。
小細胞肺がんに対するタルラタマブ(イムデトラ)

背景

タルラタマブは、デルタ様リガンド3(DLL3)を標的とする二重特異性T細胞誘導免疫療法であり、事前治療を受けた小細胞肺癌患者に対して迅速承認を受けている。

しかし、初回のプラチナ製剤ベースの化学療法後に病勢が進行した患者において、化学療法と比較して有効かどうかは不明である。

方法

国際的な第3相非盲検試験により、プラチナ製剤ベースの化学療法後に病勢進行した小細胞肺癌患者を対象に、タルラタマブと化学療法(トポテカン、ルルビネクテジン、アムルビシン)の有効性を比較した。

主要評価項目は全生存期間(Overall Survival)であり、
副次評価項目には無増悪生存期間(PFS)と患者報告アウトカムが含まれる。

本報告は、2025年1月29日時点での中間解析結果である。

結果

合計509名の患者が、タルラタマブ群(254名)と化学療法群(255名)に無作為に割り付けられた。

タルラタマブは化学療法と比較して全生存期間を有意に延長した(中央値13.6か月 vs. 8.3か月;ハザード比 0.60、P<0.001)。

無増悪生存期間、呼吸困難および咳などのがん関連症状でもタルラタマブは有意な改善を示した。

Grade 3以上の有害事象の発生率もタルラタマブ群で低かった(54% vs. 80%)。

結語

プラチナ製剤ベースの化学療法後に病勢が進行した小細胞肺癌患者において、タルラタマブは化学療法と比較して全生存期間を有意に延長した。


感想です。

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どんな結果だった?

この研究には、509人のSCLC患者が参加し、2つのグループに分かれました:

  • タルラタマブ群(254人)
  • 化学療法群(255人)(トポテカン・ノギテカン、ルルビネクテジン、アムルビシン)

そして以下のような結果が出ました。

指標タルラタマブ群化学療法群
全生存期間 (OS)13.6ヶ月8.3ヶ月
無増悪生存期間 (PFS)4.2ヶ月3.7ヶ月
奏効率(がんが縮小した人の割合)35%20%
Grade 3以上の副作用54%80%

さらに、患者さんのQOL(咳や息切れなどの症状)もタルラタマブ群で明らかに改善されていました。


この研究からわかること

この研究は「治療の選択肢が乏しい」再発SCLCにおいて、明確に延命効果がある治療薬を示した点で大きな意義があります。

また、効果だけでなく「安全性」にも注目です。タルラタマブの主な副作用はサイトカイン放出症候群(CRS)ですが、大半が軽症(Grade 1–2)で、ステロイドや支持療法で十分対応できました。

ただし、研究対象は比較的全身状態の良い患者(ECOG PS 0–1)に限られており、もっと重症の患者への有効性は今後の課題です。

論文解釈に注意するポイント

  • 非盲検試験であることや、対象患者が比較的元気な層に限られていることがリミテーションでしょうか。
  • 特にPS2以上の患者や、重篤な合併症を有する患者に対する安全性・有効性は今後の課題です。
  • また、副作用としてのCRSやICANS(免疫細胞関連神経毒性)に対する管理体制が必要ですね。

臨床現場でどう活かす?

本研究は、再発SCLCに対するタルラタマブの有効性を初めて第3相試験で証明した点で非常に重要です。

現場での活用に際しては、化学療法が難しい高齢者や骨髄抑制の強い患者において、新たな選択肢として期待できそうでしょう。

例えば「プラチナ製剤後すぐに再発しPSは維持しているけど、骨髄抑制が心配で再化学療法はためらう」ようなケースで、タルラタマブは魅力的な選択肢になりそうです。



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