Hansell DM, Bankier AA, MacMahon H, McLoud TC, Müller NL, Remy J. Fleischner Society: glossary of terms for thoracic imaging. Radiology. 2008; 246: 697-722.
蜂巣肺・多発嚢胞・気腫の鑑別
ポイント
- 嚢胞(Cyst)、気腫(Emphysema)、蜂巣肺(Honeycombing)の定義を正しく理解しましょう。
- 傍隔壁型気腫は蜂巣肺との鑑別が重要な所見です。これらの違いに注意しましょう。
- 多発肺嚢胞を引き起こす代表的な鑑別疾患(上位約10疾患)を把握しましょう。
各所見の概要
胸部HRCTでは、透過性亢進や低吸収域を示す代表的な所見として、
- 気腫(Emphysema)
- 蜂巣肺(Honeycombing)
- 嚢胞(Cyst)
があります。
これらの定義は、国際的な胸部放射線学会であるFleischner Societyの用語集に記載されています。
気腫(Emphysema)
気腫は、病理学的に「肺胞壁の破壊を伴う終末細気管支より遠位の永続的な気腔拡大」と定義されています。主に喫煙と関連します。
画像的特徴
- 胸部HRCTでは、壁の見えない(壁のうすい)低吸収域(LAA)として認められます。

ウィンドウレベル-600~-900HUでコントラストを強調すると判別しやすくなります。
- 分類(傷害される細葉の部位による)
- 細葉中心性肺気腫(a)
- 汎細葉性肺気腫(b)
- 傍隔壁型肺気腫(c)

↑細葉の中心領域に壁の薄い気腫ができる。若干胸膜から離れた領域に認められる。

↑細葉全体が壁の薄い気腫になっている。

↑胸膜直下に薄い壁の気腫がある。
鑑別診断
- 受動喫煙、大気汚染、有機燃料(バイオマス)の吸入、職業性粉塵・化学物質の曝露も原因となります。
- 非喫煙者の気腫では原因検索が重要です。
- 汎小葉性肺気腫はα1-アンチトリプシン欠損症と関連しますが、日本では極めて稀です。
蜂巣肺(Honeycombing)
蜂巣肺は、usual interstitial pneumonia(UIP)の病理学的所見を反映しており、特発性間質性肺炎(IIPs)の中でも特発性肺線維症(IPF)の診断に重要なHRCT所見として確立されています。しかし、IPF以外の慢性線維化性間質性肺疾患(ILD)でも認められ、肺線維化の終末像を示す所見です。
画像的特徴
- 直径3~10mm(時に2.5cm)の嚢胞状の気腔が集簇し、蜂の巣状に見えます。
- 厚い壁を共有する嚢胞が多層列または房状に分布します。
- 典型的には胸膜直下に存在します。
- 牽引性気管支拡張や肺気腫、嚢胞性肺疾患との鑑別が必要です。


↑前述の気腫と違い、厚い壁を有する嚢胞が、多層・房状に重なっていますね。
蜂巣肺を呈する代表的な疾患には、IPFのほか、fibrotic NSIP、DIP、膠原病関連ILD(RA、強皮症、シェーグレン症候群、顕微鏡的多発血管炎)、慢性線維化性過敏性肺炎、サルコイドーシス、じん肺などが含まれます。
鑑別診断
蜂巣肺に類似した画像所見として、傍隔壁型肺気腫があります。両者とも胸膜下に分布し、嚢胞壁を共有しますが、以下の点で異なります。
- 傍隔壁型肺気腫は、周囲に感染や喫煙の継続による炎症や線維化が加わると壁が肥厚し、蜂巣肺との鑑別が難しくなることがあります。
- 喫煙者のILDでは、蜂巣肺と傍隔壁型肺気腫が混在することもあります。


(a)は蜂巣肺で(b)は周囲に線維化を伴った傍隔壁型の気腫です。
区別が難しいですね。
下記に、鑑別点を示しますが、喫煙者のILDでは区別はすごく難しいと思います。
個人的には後者のほうが『いびつ』に見えるように思います。
鑑別点 | 蜂巣肺 | 傍隔壁型肺気腫 |
---|---|---|
お互いの嚢胞壁の共有 | あり | しばしばあり |
分布 | 下葉優位 | 上葉優位 |
層・列 | 数層 | 単層 |
大きさ | 通常10mm未満 | 10mm以上を示すことが多い |
肺容積 | 縮小 | 膨張 |
随伴する所見 | 牽引性気管支拡張 | 小葉中心性の肺気腫 |
周囲の線維化所見 | あり | 時々あり |
規則性 | なんとなくある 集簇している | あまりない やや散在 |
嚢胞(Cyst)
嚢胞は、病理学的に「厚さの異なる上皮性または線維性の壁に囲まれた円形の空間」と定義されています。
画像的特徴
- 胸部HRCTでは、明瞭な壁を持つ円形の低吸収域として認められます。
- 壁の厚さは2mm未満が多いです。
- 通常は空気を含みますが、液体や固体を含むこともあります。
鑑別診断
嚢胞が多発する場合、以下の疾患を鑑別する必要があります。
① リンパ管筋腫症(LAM)
- TSC遺伝子異常によるLAM細胞の異常増殖が原因です。
- 生殖可能年齢の女性に好発しますが、男性例もあります。
- 数mm~20mmの円形薄壁嚢胞がびまん性・ランダムに分布します。
- 進行すると肺気腫に類似した所見を呈します。

↑細葉中心優位に数mm~20mmの円形薄壁嚢胞がびまん性・ランダムに分布
② Birt-Hogg-Dubé症候群
- 常染色体優性遺伝疾患で、FLCN遺伝子異常が原因です。
- 顔面の皮膚腫瘍、反復性気胸、腎腫瘍を伴います。
- 胸部HRCTでは、下肺縦隔側優位の不整形嚢胞を認めます。

↑下肺縦隔側優位の不整形嚢胞
③ Sjögren症候群
- 自己免疫疾患で、ドライアイ・ドライマウスを呈します。
- 5~30mmの薄壁類円形嚢胞が特徴です。
- リンパ球性間質性肺炎(LIP)などが併存することがあります。
- 嚢胞内を血管が横切る所見が特徴的です。

↑5~30mmの薄壁類円形嚢胞、嚢胞内を血管が横切る所見
表びまん性の嚢胞~嚢胞様所見を呈する原因(疾患・病態)
- 肺気腫
- ブラ
- 線維化性の間質性肺疾患(特発性肺線維症や剥離性間質性肺炎、過敏性肺臓炎など)
- リンパ脈管筋腫症(孤発性または結節性硬化症)
- Sjögren(シェーグレン)症候群
- アミロイドーシスや軽鎖沈着症
- Birt-Hogg-Dubé(バート・ホッグ・デューベ)症候群
- リンパ球性間質性肺炎
- 肺ランゲルハンス細胞組織球症
- 転移性悪性腫瘍
- 良性転移性平滑筋腫
- 嚢胞状気管支拡張症
- サルコイドーシス
- 気瘤(ニューモシスティス肺炎など)
- 気管気管支乳頭腫症
- 気圧外傷
- プロテウス症候群
- 神経線維腫症
- 嚢胞性線維症
- 家族性間質性肺炎
まとめ
蜂巣肺・嚢胞・気腫は、それぞれ異なる疾患背景を持つ重要な胸部HRCT所見であり、適切な診断には慎重な鑑別が求められます。特に、蜂巣肺と傍隔壁型気腫の違いに注意し、患者の臨床背景を考慮しながら診断を進めることが重要です。
おまけ


HRCTパターン分類の和訳
HRCT パターン | UIPパターン | Probable UIP パターン | Indeterminate for UIP パターン | Alternative diagnosis(別の疾患を示唆する所見) |
---|---|---|---|---|
組織学的UIPの信頼度 | 高い(90%以上) | 中等度(70–89%) | 低~中等度(51–69%) | 低~非常に低(50%未満) |
分布 | – 末梢および基底部優位 – しばしば不均一 (線維化の領域と正常肺が混在) – 時にびまん性 – 左右非対称なこともある | – 末梢および基底部優位 – しばしば不均一 (線維化の領域と正常肺が混在) | – びまん性分布で、末梢優位ではない | – 特定の疾患を示唆する分布 |
– 気管支血管周囲優位で、末梢温存(NSIPを考慮) – リンパ路優位(サルコイドーシスを考慮) – 上葉・中葉優位(線維化を伴うHP、CTD-ILD、サルコイドーシスを考慮) – 末梢温存(NSIPや喫煙関連のIPを考慮) | ||||
CT所見 | – Honeycombingあり(牽引性気管支拡張/細気管支拡張を伴う場合あり) – 不規則な小葉間隔壁肥厚 – 通常は細網状影が重なる – 軽度のGGOを伴うことがある – 肺石灰化がみられる場合あり | – 細網状影があり、牽引性気管支拡張/細気管支拡張を伴う – 軽度のGGOを伴うことがある – 末梢温存ではない | – UIPを示唆する所見がないが、特定の疾患を示唆する所見もない | – UIPを否定する特異的な所見あり |
– Cyst(LAM、PLCH、LIP、DIPを考慮 – Mosaic attenuationまたはthree-density sign(HPを考慮) – 優位なGGO(HP、喫煙関連疾患、薬剤性肺障害、急性増悪を考慮) – 豊富な小葉中心性微小結節(HPや喫煙関連疾患を考慮) – Nodules(サルコイドーシスを考慮) – Consolidation(器質化肺炎などを考慮) | ||||
縦隔所見 | 該当なし | 該当なし | 該当なし | – 胸膜プラーク(アスベスト症を考慮) – 拡張した食道(CTDを考慮) |
略語の定義
- CTD: 結合組織病(connective tissue disease)
- DIP: 剥離性間質性肺炎(desquamative interstitial pneumonia)
- GGO: すりガラス状陰影(ground-glass opacity)
- HP: 過敏性肺炎(hypersensitivity pneumonitis)
- HRCT: 高分解能CT(high-resolution computed tomography)
- ILD: 間質性肺疾患(interstitial lung disease)
- IP: 間質性肺炎(interstitial pneumonia)
- LAM: リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis)
- LIP: リンパ球性間質性肺炎(lymphoid interstitial pneumonia)
- NSIP: 非特異的間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia)
- PLCH: 肺ランゲルハンス細胞組織球症(pulmonary Langerhans cell histiocytosis)
- UIP: 通常型間質性肺炎(usual interstitial pneumonia)
(注)以前使用されていた「early UIP pattern」という用語は、「interstitial lung abnormalities」との混同を避けるために廃止された。また、「indeterminate for UIP」は、UIPまたはprobable UIPの基準を満たさず、特定の代替診断を強く示唆する所見がない場合に使用される。

Idiopathic Pulmonary Fibrosis (an Update) and Progressive Pulmonary Fibrosis in Adults: An Official ATS/ERS/JRS/ALAT Clinical Practice Guideline. Am J Respir Crit Care Med. 2022の表3より引用改変