Objective Effects and Patient Preferences for Ambulatory Oxygen in Fibrotic Interstitial Lung Disease With Isolated Exertional Hypoxaemia: A Placebo‐Controlled 6‐Minute Walk Test Study. Giuseppina Ciarleglio, et al. Respirology 2025.

線維化性間質性肺疾患(F-ILD)は、病因や臨床像は異なるものの、共通して呼吸機能の進行的な低下を特徴とする疾患群です。
運動耐容能の低下は早期から認められ、患者のQOLにも大きく影響します。

携帯型酸素療法が6MWT中の息切れや運動能力を改善する可能性は知られていますが、既存のエビデンスは質が低く、ガイドラインの推奨は弱いのが現状です。
本研究では、二重盲検かつプラセボ対照という厳密なデザインのもと、客観的な指標だけでなく、患者の好み(Preference)も含めて携帯型酸素療法の効果を検証しています。
背景と目的
線維化性間質性肺疾患(F-ILD)患者における運動能力障害に対する携帯型酸素療法の効果に関する既存のエビデンスは限定的である。
方法
本研究では、安静時に正常酸素血症を示すが、6分間歩行試験(6MWT)中にSpO₂が88%以下に低下するF-ILD患者32名を対象に、無作為化二重盲検クロスオーバーデザインで酸素とプラセボ(圧縮医療用空気)の6MWTを行った。
各患者においてdesaturationを防ぐための酸素流量を決定した上で、同一流量にて酸素またはプラセボを投与した。
評価指標は、SpO₂、脈拍数、歩行距離であり、
主観的評価として呼吸困難、疲労感、酸素/プラセボ/環境空気の使用に対するpreferenceを視覚的アナログスケール(VAS)で測定した。
結果:
酸素投与はプラセボに比べて
酸素飽和度の低下を防ぎ、
頻脈を軽減し、
歩行距離を平均37m(95%信頼区間: 10–74, p = 0.008)延ばし、
呼吸困難および疲労感を軽減した。
酸素に対するプラセボに対するpreferenceスコアは平均2.6(95% CI: 1.9–3.2, p < 0.0005)と、有意に高かった。
プラセボ対環境空気のpreferenceスコアは−1.5(−2.4~−0.6, p = 0.005)と低く、
酸素対環境空気のスコアは0.4(−0.7~1.5)であり有意差はなかった。
結論:
携帯型酸素療法はプラセボ効果を超える有意な効果を示した。
一方で、患者によっては否定的な認識が治療受容性を妨げる可能性がある。
本研究は現行ガイドラインの推奨を支持し、6MWTの際に患者のpreferenceを記録することが、携帯型酸素療法導入における意思決定支援に有用であることを示唆する。
まとめと臨床への応用

本研究は、以下のような臨床的に重要な知見を示しております。
- 酸素投与により、平均で37mの歩行距離が延び、SpO₂の低下が防がれ、頻脈が軽減されました。また、呼吸困難や疲労感のVASスコアも改善しました。
- プラセボ(医療用空気)との比較では、酸素を好む患者が有意に多く、酸素の有効性が支持されました。一方で、酸素と環境空気との比較では評価が分かれ、過半数が酸素を好んだものの、統計的な有意差はありませんでした。
- これらの結果から、酸素療法の客観的な効果は明らかである一方で、患者の主観的な評価には個人差があり、心理的な抵抗感が効果の受け入れに影響している可能性が示唆されました。

この研究は、以下のような臨床応用が可能ですね。
- 運動時にのみ低酸素を示すF-ILD患者では、6分間歩行試験中に酸素を使用することで、労作時の息切れの軽減や歩行距離の改善が期待できるかも。
- 酸素療法を導入する際に、6MWT中の患者の嗜好(VASスコア)を評価することで、医療者と患者が一緒に治療方針を考える「共有意思決定」が実現しやすくなり、治療に対する納得感や継続意欲の向上につながる可能性がある?
- 酸素療法に対して患者が否定的な態度を示す場合でも、客観的な効果と主観的な評価とのズレを丁寧に説明し、心理的な抵抗感(例えば見た目や不便さへの懸念など)に配慮することが、より良い臨床対応につながると示唆されます。