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間質性肺疾患いろいろ解説深掘り

過敏性肺炎②~画像所見の読み解き方~

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過敏性肺炎(Hypersensitivity Pneumonitis:HP)の診断において欠かせない画像所見の用語を、若手医師向けにわかりやすく解説します。

HRCT(高分解能CT)の読影は、非線維性か線維性かを見極め、適切な診断につなげる大事なプロセスです。

過敏性肺炎を疑う場合、吸気CTと呼気CTの両方を撮影することが極めて重要です。これにより、細気管支病変の評価に欠かせないAir trapping(エアートラッピング)の有無を確認できます。

大切なことなので、もう一度お伝えします。
吸気CT・呼気CTの両方を必ず撮影しましょう。

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① 細気管支病変を示す主要所見

● 小葉中心性分岐・粒状影

  • 特徴:二次小葉の中心や末梢の細気管支に沿って、境界が不明瞭な淡いすりガラス影や小粒状影がみられます。
    初期には、ぼんやりとした斑点やにじんだ丸のように見えますが、病変が拡大したり滲出物が増加すると、やがて明瞭なすりガラス影やコンソリデーションへと進展します。つまり、これはHPの初期病変と位置づけられます。
  • ポイント:病変が肺全体に散在。HPの初期病変として典型的。非感染性のびまん性粒状陰影を見たらHPを疑う。

● tree-in-bud appearance(樹枝状影)

  • 疑うべき疾患:肺結核や非結核性抗酸菌感染症。
  • HPとの違い:HPは淡く、境界不明瞭な粒状影が中心。樹枝状に見える高コントラストな影は抗酸菌感染を示唆。

● 非常に微細な粒状影

  • 診断上の示唆:呼吸細気管支炎(RB)との鑑別が重要。

② モザイクパターン:吸気CTに見られる不均一な濃度分布

1. モザイクパターン(Mosaic attenuation)

モザイクパターンとは、肺野の吸収値が部分的に異なり、パッチワーク状に見える現象を指す総称です。

原因は多岐にわたり、血管病変、細気管支病変、あるいは肺胞領域・間質病変などが含まれます。

大きく以下の2つのパターンに分類されます:

  • すりガラス陰影(GGO)と正常肺の組み合わせ
    → 非線維性HPでよく見られる。肺野に炎症性の浸潤が不均一に分布していることを示します。
  • 正常肺と低吸収域の組み合わせ
    → 線維性HPに多く、細気管支病変により空気が貯留し過膨張になった小葉が、正常肺や線維化領域と混在します。

2. モザイク灌流(Mosaic perfusion)

モザイク灌流は、肺の血流の分布に差があることによって生じる吸収値の不均一を指します。血管異常または換気異常が背景にあります。

💡 ポイント: モザイク灌流は吸気CTでも評価可能ですが、呼気CTを追加撮影することで、気道由来か血管由来かの鑑別に役立ちます。具体的には、Air trappingがあれば気道由来と判断できます。


3. スリーデンシティパターン(Three-density pattern)

以前は「ヘッドチーズサイン(head-cheese sign)」とも呼ばれ、HPの中でも特異度が高い重要所見です
この所見は、閉塞性細気管支病変と肺への浸潤性病変が共存していることを示唆します。

CTでは、以下3種類の小葉構造が境界明瞭に混在するのが特徴です:

  1. 正常な吸収値の肺野
  2. 低吸収の小葉(過膨張による)
  3. すりガラス陰影を呈する小葉(浸潤性病変)

📌 特に線維性HPと特発性肺線維症(IPF)の鑑別において、有用性が高いとされています。


4. エアートラッピング(Air trapping)

非常に重要かつ混同されやすい用語です。

  • 呼気CTでのみ使用されるべき用語です。
  • 正常肺は呼気時に濃度が上昇しますが、エアートラッピング領域ではこの濃度上昇が起こりません。これは、気道の狭窄や閉塞によって空気が異常に滞留していることを意味します。

⚠️ 注意点:
エアートラッピングは健常者や喫煙者にも見られることがあり、HPに特異的ではありません。HPにおいてはびまん性の細気管支病変が特徴であり、部分的なエアートラッピングのみでHPを疑うのは不適切です。
また、「モザイクパターン」と同義ではないため、混同しないよう注意が必要です。



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用語
分類
Mosaic attenuation
モザイクパターン
Mosaic perfusion
モザイク灌流
Three-density pattern
3-densityパターン
Air trapping
エアートラッピング
使用
状況
吸気CTで使用吸気CTで使用吸気CTで使用呼気CTのみ
概念肺野濃度が場所によって異なりパッチワークのようにみえるものの総称灌流(血流)の差によって生じた肺の吸収値(濃度)の違い閉塞性細気管支病変による過膨張気味所見と正常肺と浸潤性病変の併存正常なら呼気CTで濃度上昇するが、細気管支の閉塞・狭窄により過膨張し、濃度上昇が見られない領域
機序血管病変、
細気管支病変、
肺実質病変(肺胞領域、間質など)いずれもあり
血管病変(灌流異常)、
細気管支病変(換気異常により生じた灌流異常)いずれもあり
閉塞性障害(細気管支病変で出現)は低吸収域になり、
肺野への炎症細胞浸潤性病変はGGOになり高吸収に、
そしてそれらは正常肺を取り巻く
気道閉塞・狭窄により遠位における異常な空気停滞
CT
所見
以下の2パターン:
・GGO(高)+正常肺(低)
・正常肺(高)+低吸収域(低)
以下の2パターン:
・GGO(高)+正常肺(低)
・正常肺(高)+低吸収域(低)
1. 正常肺、
2. 低吸収域の小葉、
3. GGOを呈する小葉の3色が併存し、いずれの境界も明瞭
呼気で濃度上昇を示した正常肺の中の、濃度上昇を示さない局所的肺領域
備考GGOは肺野の浸潤性病変を意味吸気CTにて血管性か気道病変かを鑑別する、つまりエアーとラッピングがあれば気道、なければ血管性IPFの鑑別に重要。線維性過敏性肺炎では有意性を評価されているが、非線維性では有意性を評価されていない※モザイクパターンと同義に使用しない!

③ 肺実質の吸収値とその意味

基本的には下記の病変は、細気管支領域の炎症の波及・滲出物増加・含気不良によって生じることになりますが、一部は慢性の炎症による無気肺硬化・線維化によるコンソリデーションに進展しうると考えられています。

● すりガラス陰影(GGO)

  • 定義:血管構造が透けて見える肺野の軽度高吸収域。
  • 病理背景:リンパ球浸潤、肺胞隔壁の肥厚、軽度器質化などを反映。

● コンソリデーション

  • 定義:血管影が透見できない高吸収領域・濃度上昇
  • HPでの背景
    • 器質化肺炎パターンによる含気不良域。
    • 局所的な強い炎症。
  • 線維性変化としてのコンソリデーションもあり。
    PPFEに似た所見で、その病変内部の嚢胞上の気腔拡張や牽引性気管支拡張を伴うため、炎症性のコンソリデーションと鑑別できる。

④ 線維化を示唆する重要所見

● 牽引性気管支拡張

  • 特徴:線維化で気管支が引っ張られて拡張。蛇腹状に見える。
  • 意義:線維化の決定的所見。
  • 網状影だけでは判断せず、必ず牽引所見を確認。

● 蜂巣肺(Honeycombing)

  • 定義:嚢胞が多層に並ぶ胸膜直下の構造変化。
  • HPではIPFと違い、肺底部優位とは限らず、上肺野にも出現

● PPFE様変化(上肺優位の硬化像)

  • 定義:胸膜直下に楔状の線維性硬化影。
  • 臨床意義:進行性線維性病変。コンソリデーションとの鑑別が重要。
  • 嚢胞状の気腔拡大や牽引性気管支拡張を伴うことが多く、進行性の線維化を示唆。

最後に:診断のヒント

  • 過敏性肺炎の画像診断では、病変の分布、濃度差、形状のパターン認識がとても重要です。若手医師が見逃しやすい「モザイクパターン」や「3-density pattern」の理解が、正確な診断に直結します。
  • 呼気CTの併用により、air trappingを明確に評価しましょう。

画像パターンについては今後さらに深掘りする予定です。


以上、HRCT画像所見のキーワード解説でした。画像と病態をリンクさせる習慣をつけることが、過敏性肺炎の早期診断において極めて重要です。日々の読影に役立ててください!

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