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間質性肺疾患いろいろ解説深掘り

過敏性肺炎③~非線維性過敏性肺炎のHRCT画像診断:ガイドラインと鑑別のキモ~

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過敏性肺炎(HP)は、環境抗原への反復暴露によって肺に炎症が起こる病気です。

中でも非線維性HP(nonfibrotic HP)は、急性~亜急性の比較的可逆性の高い病態であり、早期に原因抗原から回避することで改善が得られることから早期診断がカギになります。

ここでは、2020年のATS/JRS/ALATガイドラインに基づいて、非線維性HPに特徴的なHRCT画像所見をわかりやすく解説します。(線維性HPについてはこちら→過敏性肺炎④~線維性過敏性肺炎(fHP)の画像診断をマスターしよう!

尚、本記事は、前回の記事「過敏性肺炎②~画像所見の読み解き方~」の内容を踏まえて構成しています。未読の方は、ぜひ先にそちらをご一読いただくことをおすすめします。

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非線維性過敏性肺炎にみられるHRCT所見

ポイント:典型例では、肺全体が「小葉中心性粒状影+すりガラス陰影」で占められる。

🔸1. 小葉中心性粒状影(centrilobular nodules)

📌 非線維性HPを語る上で最重要!

  • どんな影?:細気管支周囲(小葉中心)に分布する1〜3mmの粒状影。
  • どう見える?:ぼやっとした小さな粒が両肺に広くばらけて見える。末梢にも出る。
  • なぜ重要?:HP特有の細気管支病変を示すサイン。診断の軸になる所見

🔸2. すりガラス陰影(GGO)/ コンソリデーション

  • どんな影?:血管構造が透ける程度の、濃度の薄い陰影。
  • 非線維性HPでは?
    びまん性に分布するが、急性例ではより濃く浸潤影(コンソリデーション)として出ることもある。
    初期病変は前述の粒状影だが、病変が悪化し拡大するとすりガラス陰影やコンソリデーションになる。
  • 意義:炎症の“活動性”を反映。静的な所見より動的評価(時系列)で変化を見ると◎

🔸3. モザイクパターン・Air trapping

🫁 吸気と呼気のCTを“セット”で評価!

  • モザイクパターンとは?:吸気CTでみられる正常肺と病変肺の濃度差によるまだら模様。
  • Air trappingとは?:呼気時に部分的に空気が抜けず、黒く残ってしまう領域。
  • 何を意味する?:細気管支の閉塞・炎症。HPに特徴的な末梢気道障害

💡吸気+呼気セットでCTを撮る習慣をつけましょう!


🔸4. 分布の特徴

📍 “どこに出ているか”を読む

  • 頭尾方向:びまん性。ただし肺底部はやや保たれる傾向。
  • 水平方向:びまん性または気管支血管束周囲優位

🗺️ 分布の偏りを知ることで、他の疾患(例えば膠原病や線維性HP)との違いが見えてくる。


🔸5. 線維化所見が「ない」ことの確認も超重要!

❌ 線維化があれば、nonfibroticとは呼べない

以下のような所見があれば非線維性HPからは除外されます:

  • 牽引性気管支拡張(traction bronchiectasis)
     → 線維化で周囲の構造に引っ張られて気管支が拡張
  • 蜂巣肺(honeycombing)
     → 末期線維化の所見。すでに不可逆性変化。

非線維性HPでは、これらの線維化を示す所見が“ないこと”が診断の大前提!


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ガイドラインに基づくHRCT分類(2020 ATS/JRS/ALAT)


項目Typical HPCompatible with HPIndeterminate
for HP
定義HP診断を示唆するHRCT所見Typicalに該当しないが、
HPで報告されている非線維化性HRCT所見

(該当なし)
HRCT所見肺野病変+細気管支病変:
【肺野病変】
・すりガラス陰影
・モザイクパターン¹
【細気管支病変】
・境界不明瞭な小葉中心性粒状影
・呼気CTでのair trapping
肺野病変のみ:
・均質で軽微なすりガラス陰影
・コンソリデーション
・薄壁囊胞散在
分布【頭尾方向】:
びまん性、
肺底部スペアされる場合あり
【水平方向】:
びまん性
【頭尾方向】:
びまん性、
下肺野優位の場合あり
【水平方向】:
びまん性、
気管支血管束周囲優位の場合あり

¹ モザイクパターン:すりガラス陰影と正常肺が混在する領域を指し、ここでは細気管支病変を示すものではない
2021 CHESTガイドラインでは分布の違いは考慮されない。
(Raghu G, Remy-Jardin M, Ryerson CJ, et al. Diagnosis of hypersensitivity pneumonitis in adults. An official ATS/JRS/ALAT clinical practice guideline. Am J Respir Crit Care Med 2020; 202: e36–e69 より改変転載)

線維性HPとの鑑別のポイント

非線維性HPでは炎症中心ですが、線維性HPでは構造変化・線維化が前面に出てきます

比較項目非線維性HP線維性HP
主病変粒状影、すりガラス、air trapping線維化、牽引性気管支拡張、蜂巣肺
分布肺全体にびまん性上肺野・胸膜直下の硬化影(PPFE様)
中肺野優位
可逆性高い(早期治療で改善)低い(不可逆性)

❗モザイクパターンやair trappingだけではHPと断定できないため、びまん性の粒状影が重要な鑑別所見になります。


注意点と問題点

  • CTは「結果」でしかない:すりガラスやモザイクは様々な疾患でも見られます。
  • 細気管支病変は喫煙歴や非結核性抗酸菌症でも起こりうる。
  • 膠原病関連ILDではHPに似た画像所見が出ることも多く、画像だけでの鑑別は限界がある

🔍 まとめHRCT所見+臨床+曝露歴+BAL所見などを組み合わせる「総合判断」が重要。


最後に

今回は鑑別のヒントになる非線維性HPの画像パターンを紹介しました。

しかし、非線維性HPを「画像だけで決め打ちしない」ことが大切です。

画像でヒントを得たら、患者の背景・環境・時期なども含めて総合的にアプローチすることが必要ですね。


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