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深掘り間質性肺疾患いろいろ解説

【やさしく学ぶ】過敏性肺炎⑤~病変分布のナゾと診断手技を完全整理!

過敏性肺炎(HP)は、反復する抗原吸入によって誘発される免疫性びまん性肺疾患であり、2020年ガイドラインでは、非線維性(nonfibrotic HP)線維性(fHP)に分類されました。

病理組織を観察すると、こんな特徴があります:

  • 末梢気道や肺胞まわりにリンパ球などの炎症細胞が浸潤
  • 小さな肉芽腫が点々と見える
  • 時間が経つと線維化(肺の組織が硬くなる)が加わる(線維性HP)

このように、HPの病理は「炎症・肉芽腫(±線維化)」が混ざり合った複合的な病変が特徴なのです。

ここでは、HPがなぜ特徴的な病理像や画像所見を示すのか、その背景にある病変分布のメカニズムを解説するとともに、病理診断に適した検査手技についてもわかりやすく紹介します。

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どんな病変ができるの?

今回はざっくりとした全体像をお伝えします
細かい分類や確定診断に必要な情報は、次回以降で詳しく紹介しますので、今回は“雰囲気”をつかむつもりで読んでください!

HPの病理所見とは?

主に以下のような所見がみられます:

  • 肺胞隔や細気管支にリンパ球主体の炎症細胞浸潤
  • 線維化(fibrosis)
  • 架橋線維化(胸膜下と気道周囲の線維化が“橋”のようにつながる)
  • 幼弱な非壊死性肉芽腫や多核巨細胞
  • マッソン体(Masson bodies)や器質化肺炎(OP)
  • 泡沫状マクロファージ
  • コレステロール裂隙
  • 細気管支周囲の気道上皮化生

炎症や肉芽腫が主体であれば「非線維性HP」、一方で線維化が目立つ場合には「線維性HP」ということになります。


ポイントは「どこに・どれくらい」あるか!

これらの所見は、“ある・ない”だけでなく、「どこに分布しているか」「どのくらいの頻度と程度で見られるか」が重要です。

たとえば…

  • 肉芽腫が散在しているか?それとも限られた部位だけか?
  • 線維化が胸膜下に強い?それとも気道周囲?
  • マッソン体が多発しているか、わずかに見られる程度か?

こういった所見の分布と重なり方によって、「これはHPらしいな」と判断できる確信度が変わってくるのです。


病変分布 ~なぜこの場所に病変が?~

抗原はどこに落ちる?

吸い込んだ抗原(2.5μm以下の微粒子)は、まず呼吸細気管支あたりで止まりやすい!
さらに小さい粒子は肺胞まで到達し、肺胞マクロファージがパクッと貪食。
その後、抗原はリンパ流に乗って移動していきます。

👉 このような経路をたどることで、病変がどこに起きるかが変わってきます。


どこに病変ができるの?

実験でも、呼吸細気管支〜肺胞管あたりに肉芽腫がよくできることが報告されています。

さらに…

  • 呼吸細気管支壁に抗原が沈着 → 小葉中心性の病変(よくあるHPのCT画像に一致!)
  • リンパ流による抗原移動 → 小葉の外側(胸膜下や小葉間隔壁)に線維化が進む

つまり、抗原の通り道=病変の分布の地図になるわけです!


上肺と下肺で分布が違う?

リンパ流の走行は肺の場所によっても違います。

  • 上肺野:気管支血管束の周囲に発達
  • 下肺野:胸膜のすぐ下に発達

そのため、病変も肺の場所によって分布に差が出ることがあるのです。

これ、CT読影でも重要なポイントですね!


小括1

過敏性肺炎の病理では:

  • 吸入抗原のサイズ・経路が病変分布を決める!
  • 呼吸細気管支と肺胞管あたりに炎症や肉芽腫が多い!
  • 小葉中心性〜小葉辺縁に病変が見られる!
  • 肺の上と下でリンパ流が違う → 病変の位置も変わる!

このように、HPの病理は「吸入された抗原の行き先」と「リンパ流の地図」を意識することで、ぐっと理解が深まります。

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病理学的な検査手技、どう使い分ける?

HPの診断では、以下の手技が使われます:

  • BAL(気管支肺胞洗浄)
  • TBLB(経気管支肺生検)
  • TBLC(経気管支クライオ肺生検)
  • SLB(外科的肺生検)

それぞれの有用性や目的、限界について、タイプ別に表で整理しました!


【非線維性HP vs 線維性HP】診断手技の比較表

手技非線維性HPでの有用性線維性HPでの有用性コメント
BAL◎ リンパ球増多が診断に有効△ 線維性でも補助的に使えるが特異性低いBALリンパ球比↑ならHPを強く疑う材料に!
TBLB◎ 炎症や肉芽腫をしっかり拾える× 線維化の全体像がわからない小さい検体でも典型的な細胞性変化を捉えやすい
TBLC◎ 広い病変範囲が取れる○ 線維化や分布の確認ができる(ただし習熟要)TBLBより大きな検体で、細葉の広がりまで確認可能
SLB△ 通常は不要(TBLCで十分)◎ 線維化病変の確定診断に有用全体構造が確認でき、最も確実。ただし侵襲性大。

実際の病理所見:どんなものが見えるのか?

TBLBで見えるもの(非線維性HPに最適!)

  • リンパ球性胞隔炎(間質にリンパ球浸潤)
  • 疎な非乾酪性肉芽腫や巨細胞(肺胞腔や細気管支に!)
  • 細気管支炎、器質化病変(OP様変化)も観察可能!

💡:非線維性HPなら、TBLBとBALで診断の確からしさはかなり高まります!


TBLCで見えるもの(両タイプに有効!)

  • より大きな組織が採取できるため、細葉全体の構造や病変の分布が観察可能!
  • 非線維性HPではTBLBと同様の所見+分布の把握が可能
  • 線維性HPでは、呼吸細気管支中心の線維化肉芽腫も捉えやすい!

SLBで見えるもの(線維性HPのゴールドスタンダード)

  • 胸膜直下の線維化、葉中心性の病変、ACIF(気道中心性線維化)など、全体のパターンが明瞭!
  • 確実性は高い。診断の決定打になりうる。
  • 侵襲が大きく、高齢・合併症患者にはハードル高め。

ガイドラインではどうなってる?

  • 2020年ATS/JRS/ALATガイドライン
     → TBLCは非線維性HPに推奨、線維性HPではSLBの代替として提案可能
  • 2021年CHESTガイドライン
     → TBLCは非線維性HPに有用。線維性HPでは経験豊富な施設でのみ代替可能とされる

小括2:どの手技をどう使うか、一目でわかる!

  • 非線維性HPなら、BAL+TBLB or TBLCでかなり確定的な診断が可能!
  • 線維性HPでは、TBLC or SLBが必要になることが多い!
  • TBLCは病変の広がりをつかめる中間的な手技として、とても有望。
  • SLBは最後の手段、でも一番確実!
病型最適な手技コメント
非線維性HPBAL + TBLB または TBLC非侵襲的でありながら、高精度の診断が可能!
線維性HPTBLC or SLBパターン認識に基づく病理診断が必要。施設選びも重要!

最後に

過敏性肺炎の病理診断は、病理像・分布・検査手技の選択を組み合わせてはじめて成立します。

まずは、

  • BALのリンパ球比に注目
  • TBLBでの肉芽腫やリンパ球浸潤の有無をチェック
  • TBLCができる施設では導入を積極的に検討
  • 線維化が強いときはSLBも視野に

という流れを押さえておけば、診断の足場がぐっと固まります!

次回以降では、HPの診断において求められる病理所見と、それらの所見がどのような組み合わせで存在すると診断の確信度が高まるのかについて、詳しく解説していく予定です。



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