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いろいろ解説深掘り間質性肺疾患

【やさしく学ぶ病理】過敏性肺炎⑥~非線維性(細胞性)過敏性肺炎の病理像!

過敏性肺炎(HP)は、反復する抗原吸入によって誘発される免疫性びまん性肺疾患であり、2020年ガイドラインでは、非線維性(nonfibrotic HP)と線維性(fHP)に分類されました。

病理組織を観察すると、こんな特徴があります:

  • 末梢気道や肺胞まわりにリンパ球などの炎症細胞が浸潤
  • 小さな肉芽腫が点々と見える
  • 時間が経つと線維化(肺の組織が硬くなる)が加わる(線維性HPへ進展)

このように、HPの病理は「炎症・肉芽腫・線維化」が混ざり合った複合的な病変が特徴なのです。

ここでは、非線維性HPに特徴的な病理所見をわかりやすく解説します。
(線維性HPについては次回の記事で解説する予定です。)

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非線維性(細胞性)過敏性肺炎における病理組織診断の基準

Nonfibrotic HPProbable HPIndeterminate for HP
生検した組織の少なくとも一つに、
以下3つの所見を有すること
生検した組織の少なくとも一つに、
以下の2つの所見を有すること
生検した組織の少なくとも一つに、
以下の1つの所見を有すること
(1) Cellular IP(細胞浸潤性間質性肺炎)
– 気道中心性
– Cellular NSIP様のパターン
– リンパ球優位
(1) Cellular IP(細胞浸潤性間質性肺炎)
– 気道中心性
– Cellular NSIP様のパターン
– リンパ球優位

Cellular IPまたはbronchiolitisのどちらかがある。
以下のいずれかの病理組織パターンを有する:
– Cellular NSIPパターン
– 器質化肺炎
– 線維化を伴わない細気管支周囲の気道上皮化生
(2) Cellular bronchiolitis(細胞浸潤性細気管支炎)
– 形質細胞よりもリンパ球優位
– ±マッソン小体を伴うOPパターン
– ±気腔内の泡沫状マクロファージ
(2) Cellular bronchiolitis(細胞浸潤性細気管支炎)
– 形質細胞よりもリンパ球優位
– ±マッソン小体を伴うOPパターン
– ±気腔内の泡沫状マクロファージ
(3) Poorly formed non-necrotizing granulomas
(幼若な非壊死性肉芽腫)
– 組織球または多核巨細胞の疎な集簇
– 気道周囲の間質や気腔内、あるいは器質化肺炎の中に存在

加えて
HP以外の診断を示す以下の所見がみられないこと:
– 形質細胞優位の炎症細胞浸潤

– リンパ濾胞形成が目立つ
– 明瞭な類上皮細胞からなる肉芽腫や壊死を伴う肉芽腫
– 誤嚥と考えられる異物

加えて
HP以外の診断を示す以下の所見がみられないこと:
– 形質細胞優位の炎症細胞浸潤
– リンパ濾胞形成が目立つ
– 明瞭な類上皮細胞からなる肉芽腫や壊死を伴う肉芽腫
– 誤嚥と考えられる異物

加えて
HP以外の診断を示す以下の所見がみられないこと:
– 形質細胞優位の炎症細胞浸潤
– リンパ濾胞形成が目立つ
– 明瞭な類上皮細胞からなる肉芽腫や壊死を伴う肉芽腫
– 誤嚥と考えられる異物

脚注:

Raghu G, Remy‐Jardin M, Ryerson CJ, et al. Diagnosis of hypersensitivity pneumonitis in adults. An official ATS/JRS/ALAT clinical practice guideline. Am J Respir Crit Care Med 2020; 202: e36–e69 より改変転載

ガイドラインの違いを理解しよう

2020年のATS/JRS/ALATガイドラインでは、病理学的診断を以下の3つに分類しています:

  • HP(過敏性肺炎と確定)
  • Probable HP(可能性が高い)
  • Indeterminate for HP(確定できない)

一方、2021年のCHESTガイドラインは次のような4分類:

  • Typical
  • Compatible
  • Indeterminate
  • Alternative(他疾患の可能性)

どちらも過敏性肺炎の病理診断を明確に分類することを目指していますが、CHESTはより「他疾患(alternative)」の可能性を重視しています。


非線維性過敏性肺炎の典型的な病理像とは?

基本的に、非線維性HPは経気道性分布をとります。つまり、気道(細気管支)から肺胞へと広がる炎症性病変です。

病理診断では、以下の3つの所見すべてが少なくとも1つの生検部位に認められると、典型的な非線維性HPと診断されます。

① 細胞性間質性肺炎の存在

  • a. 気道中心性(細気管支を中心とした分布)
  • b. 細胞性NSIPパターン(非特異的間質性肺炎)パターン
    →つまり比較的時相が均一な病変分布
  • c. リンパ球優位の炎症

② 細胞性の慢性細気管支炎

  • a. リンパ球・形質細胞の浸潤はあるが、細気管支周囲に胚中心を伴うリンパ濾胞の形成がない
  • b. マッソン体を有する器質化肺炎(OP)
  • c. 末梢気腔に泡沫状マクロファージの出現

③ 幼若な非壊死性肉芽腫

  • a. 通常150μm以下、小型で疎。類上皮細胞や多核巨細胞±細胞質内封入体が見られる。
    細胞内封入体:コレステロール裂隙、シャウマン小体、アステロイド小体、シュウ酸カルシウム血症など
  • b. 細気管支周囲の間質や末梢気腔に分布することが多い
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他疾患を示唆する「除外所見」にも注意!

以下のような所見がある場合は、過敏性肺炎以外の疾患を考慮します:

  • 形質細胞優位の浸潤(→膠原病など)
  • 明瞭なリンパ濾胞形成(→膠原病など)
  • サルコイド様肉芽腫(→サルコイドーシスなど)
  • 壊死性肉芽腫(→抗酸菌・真菌感染や誤嚥)

4. Probable HP:可能性が高いと判断される条件

肉芽腫がなくても、次のような場合はProbable HPとして診断できます:

  • ①気道中心性の細胞性間質性肺炎と②細気管支炎が1つの生検部位にみられる
  • 否定的所見(他疾患の可能性を示すもの)がない

つまり、たとえ肉芽腫がなくても、

  • 気道中心性分布
  • リンパ球優位の炎症
  • 細気管支炎の存在
    があれば、HPの可能性は高いとされます。

5. Indeterminate for HP:可能性は否定できないレベル

Indeterminate(確定できない)とは、過敏性肺炎と他疾患の判断がつかない状態。

以下の条件があてはまると該当します:

  • a. ①気道中心性の細胞性間質性肺炎と②細気管支炎のどちらかがみられる
  • b. 特発性間質性肺炎パターン(NSIP・器質化肺炎など)または、細気管支上皮化生がみられるが、それ以外の所見がない

この場合は、他の診断手段(臨床所見、HRCT所見など)を含めた総合判断が必要です。

しかし、実臨床では、非線維性HPでは、臨床像(抗原曝露による悪化と環境回避による改善など)と特徴的な胸部CT所見で診断可能と言えるでしょう。


まとめ

  • 「非線維性HP」は主に気道から肺胞への炎症性分布が特徴。
  • 3つの主要所見(細胞性間質性肺炎、細気管支炎、肉芽腫)が典型的。
  • 除外すべき病理像も明確に示されている。
  • 一部のみの所見でも「probable」と診断できる。
  • 判断がつかない場合は「indeterminate」とするが、実臨床では臨床・胸部CT所見で診断可能なことが多い。

おまけ


非線維性過敏性肺炎では、必ずしも外科的肺生検は必要ない?

非線維性HPは、病理診断が重要な疾患のひとつですが、すべての症例で外科的肺生検(VATSなど)が必要というわけではありません。

実際には、TBLBやクライオバイオプシーといった低侵襲な検査でも、診断に十分な病理所見が得られることが多くあります。


決定的な病理所見がなくても診断は可能

非線維性HPでは、臨床像や画像、BAL所見など、病理以外の情報を組み合わせて診断に至ることができます。

以下のような所見があれば、病理が「決定打」にならなくても、HPの診断に近づけます:

  • 抗原曝露後の症状増悪と、環境回避による改善
  • 胸部CTでの特徴的な所見(モザイク陰影、小葉中心性陰影など)
  • BALにおけるリンパ球増加(通常30%以上)

これらがそろえば、病理診断が「Indeterminate」であっても、臨床的にHPと診断できる可能性が高まります。


病理診断医との連携も重要

とはいえ、TBLBやクライオで得られた標本の解釈は容易ではありません。非線維性HPに特徴的な所見を拾い上げるには、病理診断医との緊密な連携が欠かせません。

特に以下のようなポイントを病理診断医と共有・確認しておくことが重要です:

  • 標本が気道中心性の病変を反映しているか
  • 肉芽腫の有無と形態(非壊死性・幼弱性)
  • 細胞性間質性肺炎かどうか(NSIP様か?)
  • 除外所見の有無(サルコイド様肉芽腫、壊死など)



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