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いろいろ解説深掘り間質性肺疾患

過敏性肺炎⑧~過敏性肺炎の診断アルゴリズム徹底解説―これで迷わないぞ

過敏性肺炎(HP)は、反復する抗原吸入によって誘発される免疫性びまん性肺疾患であり、2020年ガイドラインでは、非線維性(nonfibrotic HP)と線維性(fHP)に分類されました。

今回は、これまで解説したHPの臨床・画像・病理所見に基づいて、どのようにHPと診断していくかについて、わかりやすく解説します。

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はじめに:過敏性肺炎とは?

過敏性肺炎(HP:Hypersensitivity Pneumonitis)は、吸入性の抗原(例:鳥、カビ、職業性粉塵など)によって肺に慢性的な炎症を起こす間質性肺疾患です。

大きく以下の2つに分類されます:

タイプ特徴診断のしやすさ
非線維性HP抗原曝露が明確
症状は急性~亜急性
BALでリンパ球増多
比較的診断しやすい
線維性HP抗原が不明なことも多い
慢性進行
画像所見が多彩
診断が難しい

特に線維性HPは、特発性肺線維症(IPF)との鑑別が極めて困難。そこでガイドラインは「複数の所見を組み合わせて診断」するようになりました。


過敏性肺炎診断の【3本柱】

診断のために重視されるのは、以下の3つの「ドメイン」です。

尚、抗原の問診や抗原曝露の評価票が東京科学大学のホームページで公開され、ダウンロード可能です。

過敏性肺炎診療について(医療従事者向け) | 東京科学大学 呼吸器内科
ドメイン内容
① 抗原曝露の特定病歴聴取・質問票
血清IgG(例:鳥・カビ抗体)
吸入・環境誘発試験など
② 胸部HRCTパターン小葉中心性のすりガラス影、線維化パターンなど
③ BALまたは病理所見BALでリンパ球増多
病理で細気管支周囲の炎症・肉芽腫・線維化など

これらの所見を組み合わせて「診断確信度」を評価します。

以下の流れで診断していくとよいでしょう。

ちなみに、このアルゴリズムは非線維性、線維性HPでもどちらでも適用可能です。

※過敏性肺炎診療指針2022から引用改変

ちなみに、今回ご紹介した診断アルゴリズムを正しく活用するためには、以下の基礎知識が重要です:

  • 非線維性HPと線維性HPの鑑別ポイント
  • 胸部HRCTにおける代表的なパターンの理解
  • 病理組織所見の基本的な評価法

これらの内容については、以下の過去記事で詳しく解説しています。まだご覧になっていない方は、ぜひ一度チェックしてみてください!


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診断確信度は4段階に分類

ガイドラインでは、診断の「確かさ(confidence)」を4段階で表現します:

分類確信度説明
確実例≥90%抗原・画像・BAL/病理すべてが典型的
高確信例80–89%いくつかの所見は一致するが、欠けている情報もある
中確信例70–79%診断に一定の根拠あり。追加検査/MDD推奨
低確信例51–69%決定打に欠ける。経過観察やMDDでの議論が必要

➡ 「スコア制」ではなく、「複数の特徴的所見の組み合わせ」で判断する点がポイント!


【日本の診療指針による実践的アドバイス】

日本呼吸器学会(JRS)が発表した本邦向け注釈から、特に重要なものを紹介します。

診療指針注釈 #1:KL-6のチェック

KL-6高値は間質性肺疾患の指標に。

原因抗原に曝露する季節では上昇し、曝露が減る季節では低下するという季節性変動を示すことがあります。

例えば、冬型のHP(鳥・加湿器)では冬に上昇/夏型HPでは夏に上昇。

診療指針注釈 #2:血清IgGの測定は保険適用あり

  • 鳥抗原(ハト、セキセイインコ)
  • トリコスポロン・アサヒ抗体など

診療指針注釈 #3:曝露評価は繰り返しが重要

  • 自宅/職場/趣味など、生活環境の詳細聴取を数回にわたって行う
  • 必要があれば環境調査や吸入誘発試験も考慮
  • 実際に、自宅などに行ってみると「関係ありそうだな….」と感じることもあります。

まとめ:押さえるべきポイント

✅ 診断は「複数のドメインの組み合わせ」で行う
✅ 確信度評価に基づいてMDDや追加検査を検討
✅ 線維性HPでは特発性肺線維症との鑑別が難しいため慎重に
✅ KL-6、血清IgG、BALなどの周辺情報も積極的に活用する


最後に:困ったらMDDへ!

自信が持てないときは、MDD(多職種カンファレンス)ができる施設に相談するのがベストです。
過敏性肺炎の診断は、“点ではなく線”で捉えることが重要です。



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