過敏性肺炎(HP)は、反復する抗原吸入によって誘発される免疫性びまん性肺疾患であり、2020年ガイドラインでは、非線維性(nonfibrotic HP)と線維性(fHP)に分類されました。
今回は、これまで解説したHPの臨床・画像・病理所見に基づいて、どのようにHPと診断していくかについて、わかりやすく解説します。
はじめに:過敏性肺炎とは?
過敏性肺炎(HP:Hypersensitivity Pneumonitis)は、吸入性の抗原(例:鳥、カビ、職業性粉塵など)によって肺に慢性的な炎症を起こす間質性肺疾患です。
大きく以下の2つに分類されます:
タイプ | 特徴 | 診断のしやすさ |
---|---|---|
非線維性HP | 抗原曝露が明確 症状は急性~亜急性 BALでリンパ球増多 | 比較的診断しやすい |
線維性HP | 抗原が不明なことも多い 慢性進行 画像所見が多彩 | 診断が難しい |
特に線維性HPは、特発性肺線維症(IPF)との鑑別が極めて困難。そこでガイドラインは「複数の所見を組み合わせて診断」するようになりました。
過敏性肺炎診断の【3本柱】
診断のために重視されるのは、以下の3つの「ドメイン」です。
尚、抗原の問診や抗原曝露の評価票が東京科学大学のホームページで公開され、ダウンロード可能です。
ドメイン | 内容 |
---|---|
① 抗原曝露の特定 | 病歴聴取・質問票 血清IgG(例:鳥・カビ抗体) 吸入・環境誘発試験など |
② 胸部HRCTパターン | 小葉中心性のすりガラス影、線維化パターンなど |
③ BALまたは病理所見 | BALでリンパ球増多 病理で細気管支周囲の炎症・肉芽腫・線維化など |
➡ これらの所見を組み合わせて「診断確信度」を評価します。
以下の流れで診断していくとよいでしょう。
ちなみに、このアルゴリズムは非線維性、線維性HPでもどちらでも適用可能です。

※過敏性肺炎診療指針2022から引用改変
ちなみに、今回ご紹介した診断アルゴリズムを正しく活用するためには、以下の基礎知識が重要です:
- 非線維性HPと線維性HPの鑑別ポイント
- 胸部HRCTにおける代表的なパターンの理解
- 病理組織所見の基本的な評価法
これらの内容については、以下の過去記事で詳しく解説しています。まだご覧になっていない方は、ぜひ一度チェックしてみてください!
診断確信度は4段階に分類
ガイドラインでは、診断の「確かさ(confidence)」を4段階で表現します:
分類 | 確信度 | 説明 |
---|---|---|
確実例 | ≥90% | 抗原・画像・BAL/病理すべてが典型的 |
高確信例 | 80–89% | いくつかの所見は一致するが、欠けている情報もある |
中確信例 | 70–79% | 診断に一定の根拠あり。追加検査/MDD推奨 |
低確信例 | 51–69% | 決定打に欠ける。経過観察やMDDでの議論が必要 |
➡ 「スコア制」ではなく、「複数の特徴的所見の組み合わせ」で判断する点がポイント!
【日本の診療指針による実践的アドバイス】
日本呼吸器学会(JRS)が発表した本邦向け注釈から、特に重要なものを紹介します。
診療指針注釈 #1:KL-6のチェック
KL-6高値は間質性肺疾患の指標に。
原因抗原に曝露する季節では上昇し、曝露が減る季節では低下するという季節性変動を示すことがあります。
例えば、冬型のHP(鳥・加湿器)では冬に上昇/夏型HPでは夏に上昇。
診療指針注釈 #2:血清IgGの測定は保険適用あり
- 鳥抗原(ハト、セキセイインコ)
- トリコスポロン・アサヒ抗体など
診療指針注釈 #3:曝露評価は繰り返しが重要
- 自宅/職場/趣味など、生活環境の詳細聴取を数回にわたって行う
- 必要があれば環境調査や吸入誘発試験も考慮
- 実際に、自宅などに行ってみると「関係ありそうだな….」と感じることもあります。
まとめ:押さえるべきポイント
✅ 診断は「複数のドメインの組み合わせ」で行う
✅ 確信度評価に基づいてMDDや追加検査を検討
✅ 線維性HPでは特発性肺線維症との鑑別が難しいため慎重に
✅ KL-6、血清IgG、BALなどの周辺情報も積極的に活用する
最後に:困ったらMDDへ!
自信が持てないときは、MDD(多職種カンファレンス)ができる施設に相談するのがベストです。
過敏性肺炎の診断は、“点ではなく線”で捉えることが重要です。

<スマートフォンをご利用の皆さまへ>
他の記事をご覧になりたい場合は、画面下の「メニュー」「検索」「サイドバー」を使って、気になる話題を検索することもできますので、ぜひご活用ください。
<PCをご利用の皆さまへ>
他の記事をご覧になりたい場合は、画面上部のメニューバーや画面右側のサイドバーをご利用いただき、気になる話題をお探しください。