学び系間質性肺疾患関連ガイドライン

胸部HRCTパターンと病理学的なUIPとの関連性

Idiopathic Pulmonary Fibrosis (an Update) and Progressive Pulmonary Fibrosis in Adults: An Official ATS/ERS/JRS/ALAT Clinical Practice Guideline. Am J Respir Crit Care Med. 2022 May 1;205(9):e18-e47.

UIP(usual interstitial pneumonia)の放射線学的特徴を解説します!

今回は、特発性肺線維症(IPF)の診断に欠かせない高分解能CT(HRCT:high-resolution computed tomography)について解説します。特に、UIPパターンの放射線学的特徴について詳しくお話しします。


HRCTで診るUIPの特徴的な所見

HRCTを読影するときに、UIPパターンを見つけるポイントは主に以下の2つです。

  1. traction bronchiectasis/bronchiolectasis(牽引性気管支拡張/細気管支拡張)
  2. honeycombing(蜂巣肺)

これらが確認できれば、かなりの確率でUIPを疑います。

しかし、注意が必要です。honeycombingは、paraseptal emphysema(小葉間隔壁近傍気腫)やairspace enlargement with fibrosis(線維化を伴う気腔拡大)と間違えやすいため、慎重に鑑別しなければなりません。

この鑑別において個人的に重要だと思うポイントが、収縮性変化の所見と上肺野レベルの病変の評価です。

① 収縮性変化 vs. 膨張性変化
気腫に線維化が合併すると、一見honeycombingに見えることがあります。しかし、気腫は膨張所見が強く、honeycombingは収縮性変化が主体であるという違いがあります。そのため、周囲の肺組織が膨張しているのか、収縮しているのかをしっかり観察することが鑑別のポイントになります。もし周囲の肺が引き込まれるような収縮性の線維化を示していれば、UIPパターンを示唆するhoneycombingの可能性が高くなります。一方で、膨張性の変化が目立つ場合は、気腫に線維化が合併している可能性が考えられます。

② 上肺野の病変を確認する
IPFなどでは、線維化による収縮性変化が主体となるため、honeycombingが形成される前の早期病変では収縮性の線維化のみを示すことがあります。
一般的にIPFでは、下葉優位に病変形成が始まるため、もし下葉で「honeycombingか、気腫+線維化か」迷う場合は、病変の軽い上葉の所見もチェックすることが重要です。

具体的には、以下のポイントを確認しましょう。

  • 胸膜の形状
    • 不整なギザギザがある収縮性の線維化が主体IPF/UIPの可能性が高い
    • つるっと整っている膨張性変化が主体気腫+線維化の可能性

この所見はあくまで参考ですが、収縮性変化 vs. 膨張性変化、上肺野の病変の有無を確認することで、honeycombingと気腫+線維化の鑑別精度を高めることができます。
もちろん、程度によってはこれらの所見が当てはまらないこともありますが、一つの判断材料として活用してみてください。


honeycombingとtraction bronchiolectasisの関係

病理組織とCTを比較した研究によると、『honeycombing』と『traction bronchiolectasis』は密接に関連していることがわかっています。

honeycombingは、線維化した肺胞中隔が崩壊し、末梢気道が拡張することで形成される細気管支性嚢胞です。
この構造は、時には小葉の中心部まで連続しており、気管支とつながることもあります。
また、honeycombingは、周囲の肺胞中隔の線維化による末梢気腔の拡張と、牽引性気管支拡張が重なった所見として認識されます。

UIPに典型的なHRCT所見とhoneycombingは、組織学的にbronchiolectasis(細気管支拡張)と最もよく相関するとされています。

また、近年の研究では、IPFにおける肺のリモデリングは牽引性気管支拡張からhoneycombingへと進行する連続的な過程であると指摘されております。


UIPパターンはIPFだけではありません

UIPパターンはIPFの特徴的な所見ですが、実はfibrotic hypersensitivity pneumonitis(線維化を伴う過敏性肺炎)、connective tissue disease(結合組織病)関連のUIP(CTD-UIP)、または環境因子によるILDでも見られることがあります。

特にHP-UIPやCTD-UIPは、HRCT所見だけではIPF-UIPとの鑑別が難しいことが多いため、臨床的な背景を考慮することが重要です。

また、IPFの6~10%にはpleuroparenchymal fibroelastosis(胸膜肺実質線維弾性症)が合併することがあります。

PPFEの画像引用:Pleuroparenchymal Fibroelastosis. A Review of Clinical, Radiological, and Pathological Characteristics. Chua F, et al. Ann Am Thorac Soc. 2019.


HRCTパターンは組織学的UIPの存在確率を示しています

HRCTのパターンは以下の4つに分類されます。

HRCTパターン組織学的UIPの存在確率特徴
UIPパターン>90%(高い)典型的なUIP所見があり、組織学的UIPの可能性が非常に高い。
Probable UIPパターン70–89%(ちょっと高い)UIPに近いが、honeycombingがないなど、一部の所見が不足している。
Indeterminate for UIPパターン51–69%(あるか不明)UIPの特徴が不明瞭で、組織学的UIPかどうか判断が難しい。
Alternative diagnosisパターン<50%(低い)他の疾患を示唆する所見があり、UIPではない可能性が高い。

UIPパターン、Probable UIPパターン、Indeterminate for UIPパターン、Alternative diagnosisパターンは、あくまで「組織学的UIPが存在する確率」を示している分類であることを理解しておくことが重要です。


HRCTを読むときのポイント おさらい

HRCTを読影する際には、以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。

  1. honeycombingがあるか?
    → これはUIPを示唆する最も重要な所見。小葉間隔壁近傍気腫との鑑別が必要です。
  2. 牽引性気管支拡張があるか?
    → 進行した線維化ではほぼ必発です。
  3. 分布はどうか?
    → UIPは両側の下葉・末梢優位が特徴です。
  4. 線維化のない部分が混在しているか?
    → UIPは不均一な分布が特徴的です。

これらのポイントを意識してHRCTを読むことで、UIPパターンをより正確に診断できるようになります。


まとめ

UIPパターン、Probable UIPパターン、Indeterminate for UIPパターン、Alternative diagnosisパターンは、あくまで組織学的UIPの存在確率を表す分類であることを理解することが重要です。

また、UIPパターンの所見はIPFに特異的ではなく、HP-UIPやCTD-UIPなどの他の疾患でも見られるため、CT所見だけでIPFと断定しないよう注意が必要です。

HRCTを読む際は、honeycombingや牽引性気管支拡張の有無、分布パターンを慎重に評価し、より正確な診断につなげましょう!

おまけ:特発性肺線維症におけるHRCTパターン分類の和訳

HRCTパターンUIPパターンProbable UIPパターンIndeterminate for UIPパターンAlternative diagnosis(別の疾患を示唆する所見)
組織学的UIPの信頼度高い(90%以上)中等度(70–89%)低~中等度(51–69%)低~非常に低(50%未満)
分布– 末梢および基底部優位
– しばしば不均一
(線維化の領域と正常肺が混在)
– 時にびまん性
– 左右非対称なこともある
– 末梢および基底部優位
– しばしば不均一
(線維化の領域と正常肺が混在)
– びまん性分布で、末梢優位ではない– 特定の疾患を示唆する分布
– 気管支血管周囲優位で、末梢温存(NSIPを考慮)
– リンパ路優位(サルコイドーシスを考慮)
– 上葉・中葉優位(線維化を伴うHP、CTD-ILD、サルコイドーシスを考慮)
– 末梢温存(NSIPや喫煙関連のIPを考慮)
CT所見– Honeycombingあり(牽引性気管支拡張/細気管支拡張を伴う場合あり)
– 不規則な小葉間隔壁肥厚
– 通常は細網状影が重なる
– 軽度のGGOを伴うことがある
– 肺石灰化がみられる場合あり
– 細網状影があり、牽引性気管支拡張/細気管支拡張を伴う
– 軽度のGGOを伴うことがある
– 末梢温存ではない
– UIPを示唆する所見がないが、特定の疾患を示唆する所見もない– UIPを否定する特異的な所見あり
– Cyst(LAM、PLCH、LIP、DIPを考慮
– Mosaic attenuationまたはthree-density sign(HPを考慮)
– 優位なGGO(HP、喫煙関連疾患、薬剤性肺障害、急性増悪を考慮)
– 豊富な小葉中心性微小結節(HPや喫煙関連疾患を考慮)
– Nodules(サルコイドーシスを考慮)
– Consolidation(器質化肺炎などを考慮)
縦隔所見該当なし該当なし該当なし– 胸膜プラーク(アスベスト症を考慮)
– 拡張した食道(CTDを考慮)

略語の定義

  • CTD: 結合組織病(connective tissue disease)
  • DIP: 剥離性間質性肺炎(desquamative interstitial pneumonia)
  • GGO: すりガラス状陰影(ground-glass opacity)
  • HP: 過敏性肺炎(hypersensitivity pneumonitis)
  • HRCT: 高分解能CT(high-resolution computed tomography)
  • ILD: 間質性肺疾患(interstitial lung disease)
  • IP: 間質性肺炎(interstitial pneumonia)
  • LAM: リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis)
  • LIP: リンパ球性間質性肺炎(lymphoid interstitial pneumonia)
  • NSIP: 非特異的間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia)
  • PLCH: 肺ランゲルハンス細胞組織球症(pulmonary Langerhans cell histiocytosis)
  • UIP: 通常型間質性肺炎(usual interstitial pneumonia)

(注)以前使用されていた「early UIP pattern」という用語は、「interstitial lung abnormalities」との混同を避けるために廃止された。また、「indeterminate for UIP」は、UIPまたはprobable UIPの基準を満たさず、特定の代替診断を強く示唆する所見がない場合に使用される。

Idiopathic Pulmonary Fibrosis (an Update) and Progressive Pulmonary Fibrosis in Adults: An Official ATS/ERS/JRS/ALAT Clinical Practice Guideline. Am J Respir Crit Care Med. 2022の表3より引用改変

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