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肺癌や悪性腫瘍論文紹介

進行非小細胞肺がん:脳だけ進行しても治療は続けられる?アミバンタマブ+SRSの可能性

Exon20挿入変異×アミバンタマブ

Natasha B. Leighl et al. Intracranial and systemic progression on amivantamab in platinum-treated epidermal growth factor receptor exon 20 insertion-mutated advanced non-small cell lung cancer. Lung Cancer 2025.

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はじめに

EGFRのexon 20挿入変異(Ex20ins)って、非小細胞肺癌の中でもちょっと珍しくて、全体の4%くらいですが、実は、治療がかなり難しいタイプです。

なぜかというと、一般的なEGFR-TKI(ゲフィチニブとかオシメルチニブ)が効きにくいからです。

そんな中で登場したのが「アミバンタマブ」という新しい抗体薬です。

これはEGFRとMETを同時に狙う二重特異性抗体で、免疫系を活性化する作用もあるんですね。これが、Ex20insにも効くということで注目されています。

しかし一つ疑問があって…
大きな抗体だから、脳には届かないんじゃないの?」という懸念がありました。
そこで、この研究では、

アミバンタマブを使っている患者さんのがんは、最初にどこから進行してくるのか?
特に、脳だけが進行するケースってどのくらいあるのか?

を調べたというわけです。

背景

アミバンタマブは、EGFRおよびMETに対する二重特異性抗体であり、進行非小細胞肺癌(NSCLC)における様々なEGFR変異を有する患者に対して、初回治療および治療抵抗性の場面で単剤療法および併用療法として承認されている。

アミバンタマブ単剤療法中の進行病変の部位は十分に理解されておらず、治療戦略の指針となり得る。

方法

CHRYSALIS試験(NCT02609776)は、治療歴のある脳転移を含むNSCLC患者を登録した。

登録時に脳MRIが必須であったが、登録後の画像検査は施設ごとに実施された(初回投与後6±1週ごとに実施)。

ターゲット、非ターゲット、新病変の進行部位が報告された。

本解析には、白金製剤治療後にアミバンタマブ単剤療法を受けたEGFR exon20挿入変異(Ex20ins)を有するNSCLC患者114例が含まれた。

結果

2021年3月30日時点で、中央値12.5か月の追跡が行われた。

114人中、盲検独立中央判定(BICR)による

  • 客観的奏効率(ORR)は43%、
  • 奏効期間の中央値は10.8か月、
  • 無増悪生存期間(PFS)の中央値は6.7か月

であった。

RECISTに基づく病勢進行は114人中72人(63%)に認められ、そのうち25人(35%)は進行後もアミバンタマブを継続投与された(中央値4.2か月)。

初回進行部位は肺・胸膜(29%)、骨(21%)、脳(15%)、リンパ節(12%)の順であった。

13人(11%)では脳のみの進行が最初に観察された。

そのうち6人はアミバンタマブを継続しつつ定位放射線治療(SRS)を受けた。

SRS後のアミバンタマブ治療継続期間の中央値は4.0か月であり、SRSに関連する有害事象は2件(悪心と倦怠感、各1例)に留まった。

結語

白金製剤治療後のEx20ins NSCLC患者に対するアミバンタマブ単剤療法は、臨床的に意味のある抗腫瘍効果を示した。

頭蓋内のみの進行は比較的まれであり、SRSと併用する治療戦略も安全に実施可能と考えられる。


感想です。

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どんな結果だった?

患者さんは全部で114人。全員が白金製剤で治療を受けたあとにアミバンタマブ単剤を投与されました。

主な結果は以下の通りです:

指標結果
客観的奏効率(ORR)43%
奏効期間中央値10.8か月
無増悪生存期間(PFS)6.7か月
最初の進行部位肺・胸膜(29%)、骨(21%)、脳(15%)

この中で注目なのが、13人(11%)が「脳だけ」進行だった点。
しかもそのうち6人はアミバンタマブをやめずにSRS(定位放射線)を追加して治療継続しました。

副作用も少なくて、倦怠感と吐き気が1例ずつだけでした。

つまり、「脳だけ進行しても、SRSを当てながらアミバンタマブを続ける選択肢はアリ」というわけです。


この研究からわかること

この研究の面白いところは、抗体薬のアミバンタマブでも「思ったより脳に効いているかもしれない」という点です。

通常、抗体薬は分子が大きいので、血液脳関門(BBB)を通り抜けにくく、脳転移には効かないとされていました。

でも実は、進行肺癌ではBBBが壊れてる(=透過性が上がってる)こともあるし、免疫細胞を活性化する薬は脳でも効果が出る可能性があるのです(実際、ニボルマブやペムブロリズマブでも脳転移に効果がありますよね)。

また、SRSとアミバンタマブを併用しても安全性に大きな問題がなかったことも臨床的には安心材料です。

論文解釈に注意するポイント

  • 頭部MRIの再評価がルール化されていなかったので、「脳に効いているかどうか」のデータは少し弱い。
  • 症例数が少なく、対照群がない。
  • 脳転移がある人の多くは、すでに放射線治療を受けていたので、その影響を完全に排除できていない。

臨床現場でどう活かす?

  • EGFR Ex20ins NSCLC患者でアミバンタマブを使用中に脳のみの進行を認めた場合、治療を中断せずにSRSを併用する選択肢があるということ。
  • アミバンタマブは脳への浸透性が完全ではないにせよ、臨床的に無視できない効果を示す可能性があります。
  • 実臨床では、頭蓋内進行の際に「TKIを中止すべきか?」という悩ましい判断に対して、「継続しつつ局所治療する」というエビデンスが加わったこと。


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