Associations between immune checkpoint inhibitor response, immune-related adverse events, and steroid use in RADIOHEAD: a prospective pan-tumor cohort study. Quandt Z, et al. Journal for ImmunoTherapy of Cancer 2025.
はじめに

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、がん治療に革命をもたらしましたね。
特にPD-1/PD-L1やCTLA-4を標的とすることで、一部のがん患者さんでは持続的な奏効が得られるようになりました。
しかし、その一方で注意が必要なのが「免疫関連有害事象(irAE)」です。
これは、免疫系が正常組織を攻撃してしまうことで起こる副作用で、軽度の発疹から命に関わる肺炎や肝炎までさまざまです。

従来の研究では、irAEの出現がむしろICIの奏効と関連するという知見もありました。
ただし、これらは臨床試験や後ろ向き研究が多く、バイアス(たとえばirAEが出る前に死亡した患者は評価できない)に注意する必要がありました。
今回のRADIOHEAD研究では、全米49の地域医療機関で前向きに1,070人の患者を登録し、リアルワールドな状況でICI治療とirAE、生存率との関連を包括的に検討しているのが特徴です。
背景
ICIは一部のがん患者において永続的な治療効果をもたらす。
しかし、irAEというリスクを伴い、ICI治療の全体的な利益を損なう可能性がある。
irAEの発現と全生存期間(OS)の関連についての報告は増えているが、大規模かつ前向きなリアルワールドコホートにおいては、その関連性の理解が不十分である。
方法
本研究「RADIOHEAD」は、標準治療として初回ICI治療を受けた1,070名のパンキャンサーコホートである。
米国の49の地域がんクリニックにおいて、臨床データと血液サンプルを複数時点で前向きに収集した。
構造化され標準化された臨床データを用い、全生存期間(rwOS)およびirAEのリスク因子を探索するため、バイアスのない統計解析を実施した。
結果
本研究は1,070名の患者から4,500を超える臨床データを収集した。
irAEを経験した患者(25.4%、n=272)は、パンキャンサーコホートにおいて有意にrwOSが改善していた(n=1,028、HR=0.41, 95% CI: 0.31–0.55)。
この関連は、年齢や転移の有無で調整した多変量時間依存Cox比例ハザード解析でも持続し、肺がんや悪性黒色腫などの主要ながん種でも一貫していた。
皮膚および内分泌系のirAE(全グレード)はrwOSの改善と強く関連していた(皮膚: p=2.03e-05、内分泌: p=0.0006)。
本コホートでは、irAEの発生率は臨床試験よりも低かった。
ICI開始前にステロイドを使用していた患者は、非使用者に比して有意に生存率が低かった(HR 1.37, p=0.0054)、
特に全身性ステロイドではより強い関連が認められた(HR 1.75, p=0.0022)。
irAEのリスクは、ICI併用療法、帯状疱疹ワクチン接種により上昇し(それぞれOR=4.17, p=2.8e-7、OR=2.4, p=5.2e-05)、化学療法既往によって低下した(OR=1.69, p=0.0005)。
結語
本研究RADIOHEADは、irAEの発現が治療効果の改善と関連すること、また、ベースラインでのステロイド使用が効果を減弱させることを、バイアス調整後にも明確に示した強力なリアルワールドコホートである。

感想です。
📊 研究の方法と概要
✅ irAEと生存率の関係
- irAEが出た患者さんは、出なかった患者さんに比べて生存期間が長い(死亡リスクが約60%低下)。
- 特に「皮膚(発疹など)」「内分泌(甲状腺機能異常など)」のirAEがあった人で、生存率の改善が顕著でした。
✅ ステロイド使用と予後
- ICI治療前にステロイドを使っていた患者さんは生存率が悪化。
- 特に「全身投与」のステロイド(経口や点滴)では、死亡リスクが1.75倍に増加していました。
✅ irAEのリスク要因
- irAEが出やすくなる因子:
- ICIの併用療法(PD-1+CTLA-4など)
- 帯状疱疹ワクチンを接種したことがある人
- irAEが出にくくなる因子:
- 過去に化学療法を受けた人
この研究は「irAEが出ることは、ICIが効いている証かもしれない」ということを、現実の医療現場からしっかり証明してくれたと言えますね。
たとえば、軽度の皮疹や甲状腺機能異常が出たからといって、すぐに治療を止めるべきではないという判断の根拠にもなります。
一方で、治療前にステロイドを使っている場合は要注意です。
脳浮腫、疼痛コントロールでステロイドを使う場面はありますが、ICIの効果を下げる可能性があるため、必要最小限に抑えるべきです。
🏥 臨床現場ではどう活かす?
この論文は、ICI治療を行う際に次のような臨床判断に役立つかも?:
- 事前ワクチン歴(とくに帯状疱疹)についての聴取が、irAEリスクの判断材料になり得る。
- 軽度のirAEが出た患者さんには「むしろ治療が効いているサインかもしれませんよ」と説明できる。
- ICI治療を考える患者さんに対して、可能な限りステロイドは避けるべきという判断がより裏付けられる。
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