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間質性肺疾患いろいろ解説深掘り

【徹底解説③】新しいILAのステートメント(ATS2025)〜ILAを見つけたらどうするべきか?〜

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Approach to the Evaluation and Management of Interstitial Lung Abnormalities. An Official American Thoracic Society Clinical Statement. AJRCCM2025

「このCT所見、ILA?それともILD?」
肺のCT画像に異常を見つけたとき、こうした判断を求められる機会は臨床の現場で確実に増えています。
特に肺癌スクリーニングや検診CT、関節リウマチなどの膠原病患者で、無症状だけどCTに影があるケースは決して珍しくありません。

今回のテーマは「ILA(Interstitial Lung Abnormalities)」が見つかったときにどう対応すれば良いのか
2025年版のATS(米国胸部学会)ステートメントをもとに、以下の3つのポイントで整理してお届けします:

✅ 今回のポイント

  1. どんな人にILAが見つかりやすい?
  2. どんな場面・検査で発見される?
  3. 見つかったら何をすべき?どう管理していく?

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ILAとは?おさらい

ILAは、「臨床的にILDと診断されていない人に、CTで見つかった間質性肺異常」を指します。

ATS 2025の定義ではざっくり以下の通り:

  • 両側性かつ非依存性(non-dependent)の肺実質異常
  • 以下のいずれかを含む:
    • Ground-glass opacity
    • Reticulation
    • Traction bronchiectasis
    • Honeycombing
    • Lung distortion
  • 定義された6つの肺領域のいずれかで上記の所見が5%以上に及ぶこと
  • ILDの基準は満たさない

ILAではない所見についても知っておいてください。


Step 1:どんな人にILAが見つかりやすい?

ILAは、以下のような「ハイリスク」な人たちに多く見られます。

  • 肺がんスクリーニングCT(特に喫煙歴のある人)
  • 膠原病・結合組織病(リウマチ、強皮症など)のある患者さん
  • 50歳以上で、家族に肺線維症(IPF・FPF)の人がいる
  • 人工石材など、粉じん・有害物質を扱う職業の人
  • 高齢者

これらに当てはまる方では、無症状でもILAが発見される確率が高くなります。


Step 2:どういうシチュエーションで見つかる?

  • 呼吸器疾患の精査
  • 検診・人間ドック
  • 心疾患のスクリーニングCT
  • 他の疾患(他臓器がんなど)の精査中
  • 腹部CTの範囲に肺野が写り込んで発見されるケースも

呼吸器疾患の精査で見つかることもありますが、呼吸器の異常を疑って撮ったわけではないのに、“たまたま肺に異常が見つかる”というのも、ILA発見の非常に一般的なパターンです。


Step 3:ILAが見つかったら、どうする?〜評価のステップ〜

ILA=すぐに疾患というわけではありません。
しかし、まずは「正しく評価」することが大切です。

基本的には、ILDを疑った評価が重要になります。

ILAとILDの境界に関しては別記事をご参照ください。

評価のポイント:

  • 症状の有無を確認:咳や息切れはある?
  • 肺機能検査:スパイロメトリー、DLCOなどで肺の状態を数値化
  • ILDリスク因子のチェック:喫煙歴、家族歴、環境・職業曝露、膠原病などの有無
  • HRCT(高分解能CT)で再評価

呼吸器内科以外の診療科科で見つかった場合は?

呼吸器内科以外の診療科でILAが見つかった場合は、呼吸器専門医への紹介を検討してみて下さい。
この際、放射線科の読影レポートに以下のようなコメントが添えられていると、他科の先生が呼吸器内科に相談しやすくなります:

  1. 「線維化の所見が全肺の5%以上に広がっているかどうか」
  2. 「UIP/Probable UIP、NSIPなど、ILDが疑われる画像パターンかどうか」
  3. 「症状や肺機能に異常がある場合は、呼吸器内科へのご相談をご検討ください」

なお、3つ目の項目については、放射線科では症状や肺機能の情報までは把握できないことが多いため、
レポートを受け取った診療科の先生には、症状の有無やスパイロメトリー(肺機能検査)の実施を検討していただき、
異常が認められた場合は、呼吸器内科への紹介をお願いするといった連携が望まれます。


Step 4:ILAと診断されたらどう対応する?ILDとの違いは?

ILAとして経過を見る場合

  • 無症状
  • 肺機能も正常
  • 高リスク所見もなし

このような場合は、まだ「疾患」とまでは言えず、あくまで画像上の異常所見がある状態です。

そのため、2〜3年ごとの定期的なフォローアップで十分対応可能です。

しかし、下記の因子がある場合には、進行リスクが高いため、6~12か月毎のフォローアップが推奨されます

ILA進行リスクの高い特徴

分類内容
臨床因子– 肺線維症の家族歴
– 高齢
– 喫煙歴
– その他の吸入曝露(例:職業性蒸気、ガス、粉じん、煙、大気汚染)
– 膠原病・結合組織病
遺伝的因子MUC5B プロモーター変異
– 白血球テロメア長が年齢調整後10パーセンタイル未満
画像所見(Imaging)– CTで明らかな線維化(例:蜂巣肺、牽引性気管支拡張、構造の歪み)
– Subpleural fibrotic ILAや、subpleural nonfibrotic ILA
– 胸膜下のReticulation(網状影)
– 広範な異常の存在(例:複数の肺区域への病変の広がり)
生理学的指標– FVC、TLC、DLCO の異常または境界域の値

フォローアップ内容:

  • 咳や息切れなど症状の有無
  • CT所見の変化(進行の評価)
  • 肺機能(FVC、DLCOなど)の変化

※途中で進行が見られれば再評価や専門医への紹介を!


ILD(間質性肺疾患)と判断できる場合

以下のいずれかがある場合は「ILD」と判断され、より積極的な管理が必要になります:

  • 咳や息切れなどの症状あり(ILDの起因すると考えられるもの)
  • 肺機能の低下(FVCやDLCOの低下)
  • CTで線維化や進行所見がある
  • UIP/probable UIP、NSIPなどの典型的パターン

これらの条件に当てはまる場合は、「疾患」として扱われ、さらなる詳しい検査や治療の検討が必要になります。
ILAとILDの境界に関する詳細は前回のブログを参考にしてください。

ILDの場合の対応:

  • 短い間隔(数ヶ月〜1年)で再評価
  • 呼吸器内科・放射線科・病理診断科・膠原病内科などの多職種での評価
  • 必要に応じて治療を検討

まとめ

  • ILAは、特に「特定のリスクがある人」に偶然見つかることが多い
  • 見つかってもすぐ治療ではなく、まずは正確な評価と経過観察
  • ILAの場合は、通常2〜3年ごとの定期的なフォローアップでよいが、進行リスク因子があれば6~12か月毎のフォロー
  • ILDと判断されたら、より頻回なモニタリングと精査・治療介入の検討

👉「放っておかない。でも過剰に怖がらない」が大切です。

呼吸器専門医と連携していきましょう!


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