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集中治療いろいろ解説

【雑記】呼吸器内科から始まる集中治療医への道


―集中治療の“リアル”と最前線が、ここにある ―

呼吸器内科の最大の魅力――それは、サブスペシャリティに特化して研鑽を積むことで、他にはない“オンリーワン”の専門性を築けるという点にあります。

呼吸器という臓器は、構造的にも機能的にも複雑で、全身のさまざまな疾患と深く関わっています。

そのため、呼吸器内科でしっかりとした基盤を築くことは、単に呼吸器疾患の診療力を高めるだけでなく、将来的に以下のような多彩な専門領域へとキャリアを広げていくことにもつながります。

  • 救急医療のスペシャリスト
  • 感染症のスペシャリスト
  • 胸部画像診断のスペシャリスト
  • アレルギー疾患のスペシャリスト
  • 自己免疫疾患のスペシャリスト
  • 腫瘍内科のスペシャリスト

そして――集中治療のスペシャリストへ。

今回は、その中でも特に“特別”な進路である「集中治療」にスポットを当て、呼吸器内科出身だからこそ活躍できる強みと魅力を掘り下げてお伝えしていきます。

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呼吸器内科から始まる集中治療医への道

呼吸器内科医としてのキャリアを積んでいく中で、避けて通れないのが「重症呼吸不全」との向き合い方です。

ARDS(急性呼吸窮迫症候群)、重症肺炎、慢性呼吸不全の急性増悪、間質性肺疾患の急性増悪……これらに日々直面するからこそ、呼吸器内科は集中治療と非常に親和性が高い診療科なのです。

必ず「人工呼吸器を使う科」ではない

呼吸器内科は「人工呼吸器を多用するイメージがある」とよく言われますが、実際には いかに気管挿管を避けて患者を救うか を突き詰める診療科かもしれません。

非侵襲的陽圧換気(NIPPV)やネーザルハイフロー、一般的な酸素療法、患者の呼吸パターンや努力性に合わせた酸素デバイスの選択とタイミング――これらを駆使して、患者の呼吸を「守り抜く」プロフェッショナル。それが呼吸器内科医です。

それでも、人工呼吸管理にも強い

もちろん、避けきれない場面もあります。

そんなときには、保護的換気戦略、適切なPEEP設定、Driving Pressure、呼吸数や吸気時間の調整、モード選択(VCV, PCV, APRVなど)を活用し、肺を傷つけない換気 を行う知識と技術が求められます。

「肺を傷つけない換気(Protective Ventilation)」は、人工呼吸器を使用する際に最も重要な原則の一つです。

特にARDSなどの重症呼吸不全の患者において、適切な換気を行わなければ、人工呼吸器そのものが肺を傷つける「人工呼吸器関連肺障害(VILI: Ventilator-Induced Lung Injury)」を引き起こすリスクがあります。

なぜ肺が傷つくのか?

傷つく主なメカニズムは以下の通りです:

  1. 過伸展(Volutrauma)
     高すぎる一回換気量(tidal volume)で肺胞が過剰に膨張すると、肺胞や間質が傷害される。
  2. 過圧(Barotrauma)
     高すぎる圧力(特に吸気圧やPEEP)により、肺胞や間質が傷害される。
  3. 開閉損傷(Atelectrauma)
     肺胞が吸気ごとに開いたり閉じたりすることで、せん断力が加わり、肺胞や間質が傷害される。
  4. 炎症反応(Biotrauma)
     上記の物理的損傷が引き金となって、炎症性サイトカインが放出され、全身の多臓器障害を引き起こすことも。

肺保護換気戦略の要点

肺を守るための人工呼吸管理には、いくつかの基本戦略があります:

  • 低一回換気量(6 mL/kg予測体重の換気量)
     肺の過伸展を防ぐために、予測体重(理想体重)に基づいて換気量を設定します。
  • 適切なPEEPの使用
     肺胞の虚脱を防ぎつつ、過剰な陽圧を避ける。PEEPは個々の肺の状態に応じて調整されます。
  • Driving Pressure(気道内圧差)を抑える
     換気による肺ストレスの指標として注目されており、できるだけ低く保つことが望ましいです。
  • 呼吸数や吸気時間の調整
     高炭酸ガス血症を許容する「許容的高炭酸ガス血症(Permissive Hypercapnia)」も時に重要です。

なぜ重要か?

肺を傷つけない換気は、患者の死亡率を下げることが複数の大規模試験で証明されている数少ない介入のひとつです。ARDS Networkの研究では、肺保護戦略により生存率が有意に向上したことが示されました。


呼吸器内科医や集中治療医にとって、単に「換気する」のではなく、「いかに安全に、そして肺を守りながら換気するか」を考えることが、重症患者のアウトカムを左右します。

ここに呼吸器内科医の実力が光ります。

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感染症・薬剤知識の広さも武器になる

呼吸器感染症はもちろん、抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗MRSA薬に関する知識は豊富で、感染症内科に匹敵する知見を有する呼吸器内科医も少なくありません。

これは、集中治療室で求められる 早期・的確な感染コントロール に直結します。

集中治療に求められる全身管理能力

ARDSを扱う中で学ぶバイタルサインの微細な変化、水分バランスの調整、昇圧剤の使い方、ステロイドの適応――これらは、まさに集中治療のエッセンスです。

COVID-19パンデミックでは、その知識と経験が一気に注目を浴び、多くの呼吸器内科医がECMO管理まで担うようになったことは記憶に新しいでしょう。

呼吸器内科から集中治療へ――最短距離のルート

呼吸器内科を経て集中治療に進むという道は、決して遠回りではありません。

むしろ、最も実践的かつ即戦力になれるルートです。なぜなら、「呼吸を診られる」ということは、集中治療において最大のアドバンテージだから


まとめ:呼吸器内科は“スペシャル”の入り口

呼吸器内科の専門性は、サブスペシャリティへの道を広げてくれます。

中でも集中治療は、他診療科と密接に連携しながら、患者の命を直接救う“最前線”。
呼吸器内科で培ったスキルと視点を持つあなたなら、その現場でも必ず輝けます。

「呼吸器内科から始まる集中治療医への道」――それは、自分の専門性を最大限に活かしながら、より広く深く、そして命の根幹にかかわる仕事へとステップアップする道なのです。

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