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いろいろ解説ガイドライン深掘り間質性肺疾患

【新国際分類2025】その12 Alveolar Macrophage Pneumonia(AMP)―DIPからAMPへ

Ryerson CJ et al. Update of the International Multidisciplinary Classification of the Interstitial Pneumonias: An ERS/ATS Statement. European Respiratory Journal 2025.

これまで「剥離性間質性肺炎(DIP)」として知られていた疾患が、2025年のERS改訂により「Alveolar Macrophage Pneumonia(AMP)」という新たな用語に置き換えられました。

本記事では、AMPとは何か、臨床・病理・画像的特徴、RB-ILD(呼吸細気管支炎関連間質性肺疾患)との違い、そして今回の診断基準のアップデートについて、解説します。

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AMPとは?

AMPは、肺胞内にマクロファージが過剰に蓄積することで生じる間質性肺疾患であり、従来「DIP」とされていた疾患概念を置き換える形で定義されました 。その特徴は以下の通りです:

  • 大多数は喫煙関連(81%)
  • 特発性や、サーファクタント蛋白異常(小児)、膠原病、粉塵吸入などの二次性原因も存在
  • RB-ILD、UIP、NSIP、LCH などとオーバーラップ・共存することがある
  • 特発性の病態は全IIPsの数%と言われ、希少!!

今回の新分類では、AMPは単独の疾患というより、マクロファージ蓄積を主体とする表現型として位置付けられています。

AMP の臨床・画像・病理的特徴(英日対照表)

項目英語原文日本語訳
ClinicalPresentation:
– Highly variable onset,
progression in a subset.

Risk factors:
– adult smokers with slight male predominance,
although rare cases have been reported in non-smokers.
臨床像:
– 発症は非常に多様であり、
一部の症例では進行を示す。

リスク因子:
– 成人喫煙者に多く、やや男性に多い傾向があるが、
非喫煙者での稀な症例も報告されている。
Radiologic– Middle to lower lung predominant with variable upper lung involvement,
although may be predominantly peripheral.
– Primarily patchy and confluent ground glass opacities with smooth reticulation.
– Cystic spaces may be present within the ground glass;
emphysema, and traction bronchiectasis may also be seen.
– 中下肺優位であるが、上肺の関与は多様であり、
末梢優位となる場合もある。
– 主として斑状かつ癒合性のすりガラス陰影を呈し、
平滑な網状影を伴う。
– すりガラス陰影内に嚢胞性病変を認めることがあり、
肺気腫や牽引性気管支拡張もみられる。
Pathologic– Accumulation of lightly pigmented macrophages in airspaces associated with a mild chronic inflammatory cell infiltrate.
– Lymphoid aggregates and fibrosis may also be present.
– Diffuse distribution.
– 淡く色素沈着したマクロファージが気腔内に蓄積し、軽度の慢性炎症細胞浸潤を伴う。
– リンパ球集簇および線維化を認める場合もある。
– びまん性の分布を示す。



臨床像。

  • 発症様式:非常に多様。一部では進行性に線維化する例もある
  • リスク因子
    • 成人喫煙者に多く、やや男性優位
    • 非喫煙者でも稀に報告あり
    • 労働曝露歴や膠原病の既往に注意

➡ 疑うためには、喫煙歴+びまん性肺疾患+びまん性すりガラス影の三拍子が揃った時点で臨床的な鑑別に挙げるべきです。


病理像

  • 病変の分布はびまん性で、比較的一様
  • 肺胞腔内に色素を軽く含んだマクロファージがびまん性に蓄積
  • BALでも、マクロファージ内に上記の所見あり。
  • 軽度の慢性炎症細胞浸潤(リンパ球、好酸球など)
  • リンパ球濾胞や線維化を伴う場合もある
  • 喫煙者ではマクロファージ内に炭粒(black carbon particles)が認められる
  • 喫煙者では気腫による肺胞壁の断絶はあるが、線維化による肺の構造改変は軽度。

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胸部CT所見

AMPの画像診断では、中下肺を中心としたすりガラス影が特徴的です。

  • 分布:中下肺優位。末梢領域に優位に分布することが多い
  • 形態
    • 斑状~癒合性のすりガラス影
    • 平滑な網状影を伴う
    • 時に嚢胞性変化や肺気腫、牽引性気管支拡張を伴う
    • 蜂巣肺(honeycombing)は稀

➡ CT上の「confluent GGO(癒合性のすりガラス)」がRB-ILDとの違いを示唆します。

画像上の鑑別は以下の通り:

  • RB-ILD
  • NSIP
  • LIP
  • COP
  • 好酸球性肺炎
  • 薬剤性肺炎
  • ニューモシスティス肺炎
  • 過敏性肺炎

AMPとRB-ILDの違い

両者ともに喫煙関連IIPに分類される疾患ですが、以下のような違いがあります:

特徴AMP(旧DIP)RB-ILD
病理肺胞腔内にマクロファージ蓄積(びまん性)気管支周囲にマクロファージ蓄積(限局性)
CT所見癒合性すりガラス影(末梢・中下肺)小葉中心性結節と軽度すりガラス(上肺優位)
分布びまん性限局性
経過進行する場合あり(NSIP化など)多くは安定

➡ 両者の鑑別は画像と病理の分布や広がりです。


ステートメント改訂のポイント(2025 vs 2013)

観点2013年2025年
用語DIP(Desquamative Interstitial Pneumonia)AMP(Alveolar Macrophage Pneumonia)
疾患の位置付け喫煙関連IIPのひとつパターンとしての位置付けが強調
病態理解剥離性上皮説に基づくマクロファージ蓄積を中心とした概念
診断の重視点画像+病理MDD(多職種診断)+臨床背景の統合

まとめ

  • AMPは新たに整理された喫煙関連間質性肺疾患であり、びまん性マクロファージ蓄積を特徴とする。
  • DIPという用語は現在では非推奨。臨床、画像、病理を統合してAMPと診断する。
  • RB-ILDとの違いを意識し、confluent GGO+マクロファージ蓄積のびまん性分布+中下肺野・末梢優位の画像を見たらAMPを疑う。
  • 非喫煙者にも発症し得るため、「非典型例」も念頭に。

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