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深掘り間質性肺疾患いろいろ解説ガイドライン

【新国際分類2025】その3 Interstitital patternsとAlveolar filling patternsの全体像とパターン分類 

Ryerson CJ et al. Update of the International Multidisciplinary Classification of the Interstitial Pneumonias: An ERS/ATS Statement. European Respiratory Journal 2025.

2025年に発表された最新ステートメントでは、びまん性肺疾患(DPLD)の病理・画像パターンが、

Interstitial patterns(間質性パターン)
Alveolar filling patterns(肺胞充填パターン)

の2つの軸に再整理されました。
この分類により、「どの症例で病理検査を検討すべきか」という診断戦略が明確に示された点が大きな特徴です。

また、本ステートメントではさらに、複数のパターンが混在する Combined patterns や、いずれのカテゴリーにも当てはめにくい Unclassifiable ILDについても整理されています。

今回はその中でも、臨床で最も頻繁に遭遇する
👉 Interstitial patterns
👉 Alveolar filling patterns
の2つにフォーカスし、ざっくりと全体像をまとめてみます。

理解しやすくするために、まずはこちらの過去記事に目を通していただくと、よりスムーズに読み進められるかと思います。

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Interstitial patterns(間質性パターン)

間質性パターンでは肺胞壁や間質を主座とした線維化や炎症、構造変形が中心的です。
ステートメントでは以下のパターンが「Interstitial pattern」に含まれています:

パターン説明
UIP通常型間質性肺炎。IPF の代表病型で進行性線維化を呈する。
NSIP非特異的間質性肺炎。細胞性/線維性に分類される。
BIP気道中心性の線維化が特徴。このステートメントで久々に復帰した概念。
非線維性/線維性に分類される。
別の記事で解説予定
PPFE胸膜肺実質線維弾性症。上葉優位の線維化パターン。
DADびまん性肺損傷。前回まではAIPと呼ばれていた。
LIPリンパ球性間質性肺炎。リンパ球浸潤が主体で、自己免疫疾患や免疫不全に伴うことが多い。

🔑 特に UIP・PPFE・線維型 NSIP は進行性線維化(PPF)との関連が強く、

画像のみで確証が得られない場合は病理学的評価の検討が必要とされています。


Alveolar filling patterns(肺胞充填パターン)

肺胞充填パターンは、肺胞腔および末梢気道に細胞や液体が異常に充満する病態を指します。
画像や臨床所見が比較的特徴的であることが多く、

間質性パターンと比較して病理検査の頻度は低い傾向があります。

パターン説明
OP浸潤影主体の器質化肺炎
RB-ILD呼吸細気管支炎関連間質性肺疾患(ほぼ喫煙関連)
AMPAlveolar macrophage pneumonia、つまりマクロファージ肺炎。かつてのDIPですね。
別記事で解説予定。
AEP / CEP急性/慢性好酸球性肺炎 肺野への好酸球浸潤が特徴
Lipoid pneumonia脂質性肺炎(外因性・内因性)
PAP肺胞蛋白症

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Interstitial patternとAlveolar filling patternに分ける意義


① 病変の「首座」を明確にできる

肺のどの部位が主に障害されているかを、「間質」か「肺胞腔」かで分類することで、病態の理解が深まる。

  • Interstitial pattern:間質が主に障害される
  • Alveolar filling pattern:肺胞腔に細胞や物質が異常に貯留

実際には両者が混在するケースも多いため、柔軟な診断と評価が必要。


② 生検の必要性を適切に判断できる

パターンごとの分類により、生検の適応判断が明確になる。

  • Interstitial patternでは、診断の確度が70%未満の場合や非典型例では、外科的肺生検やTBLCの検討が必要。
  • Alveolar filling patternでは、画像やBALなど非侵襲的検査のみで診断可能なことが多く、生検は不要な場合が多い。

③ PPF(進行性肺線維症)のリスク評価と治療選択に有用

Interstitial patternは、線維化型(fibrotic)と非線維化型(non-fibrotic)に細分類され、それにより治療戦略が変わる。

  • UIP、fibrotic NSIP、fibrotic BIP はPPFに進行しやすく、抗線維化薬(ニンテダニブ、ピルフェニドン)適応の判断に直結。
  • 一方、non-fibrotic 型はPPFに至るリスクが低い。

④ 予後の予測に役立つ

パターン分類は、疾患の進行性や治療反応性、そして予後の予測にも有用。

  • Interstitial patternは一般に治療抵抗性が高く、慢性進行性で予後不良であることが多い。
  • Alveolar filling patternの疾患は治療への反応性が高く、ステロイドなどで改善し、予後良好が多い。

まとめ

項目Interstitial patternsAlveolar filling patterns
主病変部位肺胞壁・間質肺胞腔・末梢気道
主な病態線維化・構造変形細胞・液体の貯留/充満
病理検査の重要度高い比較的低い
PPFとの関連強い限定的
予後比較的不良比較的良好

このフレームワークを念頭に置くことで、

  • どのパターンで病理検査が必要か
  • どのパターンが進行性の線維化と関連するのか
  • どのパターンではどのような治療が考慮されるか
  • どのパターンでどのような予後が想定されるか

といった臨床判断を行えるようになります。

👉 「これは間質性パターンか、それとも肺胞充填パターンか?」
という視点を最初に持つことが、正確な診断への第一歩になりますね。


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