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いろいろ解説ガイドライン深掘り間質性肺疾患

【新国際分類2025】その7 びまん性肺胞障害(Diffuse Alveolar Damage: DAD)を理解する

Ryerson CJ et al. Update of the International Multidisciplinary Classification of the Interstitial Pneumonias: An ERS/ATS Statement. European Respiratory Journal 2025.

びまん性肺胞障害(DAD)は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の病理学的基盤としてよく知られています。

臨床現場では、急性呼吸不全で入院する患者や、間質性肺炎の急性増悪を経験する患者で遭遇することが多い病態です。

しかし、DADもUIPと同様に「病名」ではなく「パターン」であり、その理解には病理像、画像所見、臨床的な経過を総合的にとらえることが重要です。

2025年に発表された最新のERS/ATSステートメントでは、DADに関する分類や用語も見直されています。


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DADとは何か

DADは、肺に生じる「びまん性の肺胞障害」を指す病理学的パターンであり、特定の疾患名ではありません。

ARDSや薬剤性肺障害、膠原病関連肺疾患、感染症、吸入障害など多様な原因で発生します。

従来「急性間質性肺炎(AIP)」と呼ばれていた概念は、このたび「特発性DAD」として整理され、より明確に定義されました。

DADの部分(英語原文と和訳)

項目英語原文日本語訳
ClinicalPresentation:
Acute worsening with high likelihood of residual fibrosis and potential for ongoing progression.

Risk factors:
Vary with underlying aetiology (e.g., sepsis, aspiration, pneumonia, CTD-ILD).
臨床像:
急性の増悪を呈し、高率に線維化残存を伴い、進行が持続する可能性あり。

危険因子:
基礎疾患によって異なる(例:敗血症、誤嚥、肺炎、膠原病関連間質性肺疾患)。
RadiologicPatchy or diffuse ground glass opacity that may progress to consolidation over time with significant traction bronchiectasis, architectural distortion and honeycombing.斑状またはびまん性のすりガラス影で、時間の経過とともに浸潤影へ進展し得る。顕著な牽引性気管支拡張、構造改変、蜂巣肺を伴うことがある。
Pathologic Exudative phase:
Alveolar septa are thickened by interstitial edema, pneumocyte hyperplasia, and surface hyaline membranes.

Organising phase:
Evolution into predominant interstitial involvement by loose organising connective tissue and exuberant proliferation of pneumocytes, often with some atypia.

Fibrotic phase:
DAD can progress to interstitial fibrosis with varying features.
滲出期:
肺胞中隔は間質性浮腫、肺胞上皮細胞の過形成、表面の硝子膜によって肥厚。

器質化期:
疎な器質化結合組織による間質優位の病変へ進展し、肺胞上皮細胞の旺盛な増殖を伴い、しばしば異型性を示す。

線維化期:
DADは多様な形態を示しつつ間質性線維化へと進展し得る。

臨床像

  • 急性または亜急性に呼吸困難が進行し、多くは入院管理を要します。
  • 致死率は高く、ARDSの中心的病理所見として知られています。
  • 一部は可逆的ですが、長期化すると不可逆性線維化へ進行することがあります。過去の剖検研究では、発症から3週間以上経過した例の61%に線維化が認めらると報告されております。

病理像

DADは大きく「急性期(滲出期)」と「器質化期」に分かれます。

  • 急性期:肺胞中隔は浮腫、II型肺胞上皮細胞の過形成、硝子膜形成で肥厚。
  • 器質化期:肺胞腔や間質に疎な結合組織が入り込み、構造破壊や器質化肺炎様の像がみられます。ただし、DADの器質化では主に間質側に結合組織が沈着する点が特徴。
  • さらに進展すると線維化期へ移行し、不可逆的な間質性線維化に至る場合あり。

胸部CT所見

画像的には以下が典型的です:

  • 両側性・斑状のすりガラス影(しばしば斑状で一部正常部分を伴う)
  • 背側優位(dependent領域)の浸潤影(コンソリデーション)
  • 牽引性気管支拡張や細気管支拡張

発症早期から広範な異常や気管支拡張を認める場合は、予後不良の指標となります。



原因

DADはさまざまな肺障害の結果として出現します。

代表的な原因は以下の通りです:

  • 感染症(ウイルス、細菌、真菌など)
  • 薬剤性肺障害
  • 吸入障害(有害ガス、粉塵など)
  • 膠原病(特に炎症性筋疾患)
  • 特発性(従来のAIPに相当)
  • 間質性肺炎の急性増悪

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今回のステートメントにおける言及点

  1. 用語の整理:原因不明・特発性の「急性間質性肺炎(AIP)」は不正確な用語とされ、「特発性DAD」に置き換え。
  2. 分類体系の変更:DADは「間質性パターン」に含められ、UIPやNSIP、BIPと並ぶ主要パターンとして位置づけられた。
  3. 診断への配慮:外科的肺生検は高リスク(入院患者で16%の死亡率報告)であり、実臨床ではあまり行われない。感染や癌などの原因疾患のマネージメント・診断には、BALなど侵襲度の低い手技の活用が助けになる…というように書かれており、低侵襲な検査による診断アプローチの重要性が暗に示されています。

治療

治療について本ステートメントでは明確な記載はありませんが、原因疾患が明らかな場合にはその治療に準じ、加えてARDSに準じた支持療法が考慮されます。

特発性DADに対しては、間質性肺疾患(ILD)の急性増悪と同様に、ステロイドが経験的に使用されることがあります。


まとめ

DADはARDSをはじめとする急性呼吸不全の中心的な病理像であり、臨床・画像・病理を統合して理解することが不可欠です。

最新のERS/ATSステートメントでは、「AIP」から「特発性DAD」への用語変更や、診断・分類のアップデートが行われました。今後もDADの病態解明や治療戦略の進歩が期待されます。


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