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間質性肺疾患肺高血圧いろいろ解説深掘り

トレプロスチニル吸入液をめぐる最新情報とTETON-2試験:IPF治療の新たな選択肢になりうるか?

PRESS RELEASE
United Therapeutics Corporation Announces TETON-2 Pivotal Study of Tyvaso® Meets Primary Endpoint for the Treatment of Idiopathic Pulmonary Fibrosis

特発性肺線維症(IPF)は、進行性に肺が線維化を来し、予後不良な難治性疾患です。現在はニンテダニブピルフェニドンといった抗線維化薬が標準治療ですが、「進行を遅らせる」にとどまっており、より有効な治療薬が望まれています。

その中で注目されているのが、吸入プロスタサイクリン誘導体であるトレプロスチニル(日本名:トレプロスト®吸入液)です。2024年には日本で間質性肺疾患に伴う肺高血圧症(ILD-PH)に対して承認されており 、すでに臨床で使用が始まっています。そして今、TETON-2試験という大規模臨床試験がIPFそのものへの効果を示したことで、世界的に注目が集まっています。

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日本でのトレプロストの現状

  • 販売名:トレプロスト®吸入液(持田製薬)
  • 効能・効果
    • 肺動脈性肺高血圧症(PAH)
    • 間質性肺疾患に伴う肺高血圧症(ILD-PH)
  • 用法・用量:1日4回の吸入。開始は18 µg(3吸入)から、忍容性を見ながら最大72 µgまで増量。

つまり、日本ではすでに「ILDに肺高血圧を合併した患者さん」に使用可能です。

今回のTETON-2試験は、「肺高血圧の有無に関わらず、IPFそのものへの効果」を評価した点で大きな意味があります。


TETON-2試験の概要(プレスリリースより)

  • 多国籍、597名を対象に実施された第3相無作為化二重盲検プラセボ対照試験
  • 対象国:アルゼンチン、オーストラリア、韓国、スペイン、イタリア、イスラエルなど16カ国
  • 治療期間:52週間
  • 初期投与:1日4回、3吸入から開始 → 最大12吸入まで漸増
  • 主要評価項目:FVC(52週後)
  • 副次評価項目:臨床的悪化までの時間、急性増悪、死亡率、K-BILD、DLCOなど
  • 試験終了後、TETON-OLE長期延長試験への登録も可能

主な結果

  • 主要評価項目:絶対的FVC(努力性肺活量)の変化量
    • Tyvaso(トレプロスチニル)群ではプラセボに比べて有意にFVCが改善(+95.6 mL、p<0.0001)
  • 効果は、併用治療(ニンテダニブ、ピルフェニドン、または未使用)、喫煙歴、酸素投与の有無などすべてのサブグループで確認。

副次評価項目でも有意差

  • 以下の項目でも統計学的に有意な改善:
    • 最初の「臨床的悪化イベント」までの期間
    • %予測FVCの変化
    • QOL指標(K-BILDスコア)の変化
    • DLCO(拡散能)の変化
  • 急性増悪や全死亡率では有意差には至らなかったものの、Tyvaso群に有利な傾向あり。

安全性

  • 全体として良好な忍容性
  • これまでの試験およびプロスタサイクリン関連薬剤で知られる副作用と一致
  • 新たな安全性シグナルは認められず

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臨床的な意味

  1. 線維化そのものへの作用が期待できる
    – 単なる血管拡張薬ではなく、肺の線維化進行を抑える「抗線維化薬」としての可能性が見えてきました。
  2. 日本での既存承認とつながる
    – すでにILD-PHに対して承認されているため、日本での臨床経験や安全性データの蓄積があります。IPFそのものへの適応追加も、今後現実味を帯びるでしょう。
  3. 差別化のポイント
    – 経口の新薬(例:ネランドミラスト)は抗線維化作用が主体ですが、トレプロストは肺高血圧改善と線維化抑制の両面に作用する可能性があります。特に肺高血圧を合併したIPF患者にとっては、強い治療候補となり得ます。

今後の展望

  • TETON-1試験(進行中)と合わせて、米FDAへのIPF適応追加申請(sNDA)を予定
  • TETON-1の結果は2026年前半に公表予定

まとめ

  • 日本ではすでに間質性肺疾患に伴う肺高血圧症に対してトレプロスト吸入液が承認済み。
  • TETON-2試験では、IPF患者でFVCが有意に改善するという前向きな結果が発表されました。
  • 今後、正式に論文化・規制当局の審査を経て、IPFやPPFへの適応が拡がれば、抗線維化薬との併用で治療成績を改善できる新しい選択肢となるでしょう。
  • さらに、肺高血圧への効果も期待できる点で、他の薬剤と差別化される可能性があります。

👉 今後は「どのような患者さんに特に効果が期待できるか」「実臨床での使い分け(既存薬との併用含む)」が焦点になると思われます。



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