Risk factors for relapse of immune-related pneumonitis after 6-week oral prednisolone therapy: a follow-up analysis of a phase II study
浜松医科大学からの報告です。こんな感じのかゆいところに手が届く論文大好きです。
まず最初に結論からいうと
以下のとおりです。
免疫チェックポイント阻害剤(ICIs)による免疫関連肺炎(irP)において、ステロイド治療後の再発にして調査した結果・・・
- irPの再発率は39.3%(高い?)。
- 放射線画像で「器質化肺炎(OP)パターン」がある患者は、irPが再発しやすい(HR = 3.17, p = 0.007)。
- ICI開始からirP発症までの期間が100日以上の患者は、再発リスクが高い(HR = 2.61, p = 0.048)。
- 初期のプレドニゾロン療法の効果や血液検査所見は、再発リスクと関連しなかった。
- ICIは近年のがん治療において進歩をもたらしましたが、それに伴い免疫関連有害事象(irAEs)が増加しております。
- 中でもirPは頻度が高く、重症化しやすいため、特に重要視されています。
- irPの標準治療はコルチコステロイドですが、10~40%の患者で再発が報告されており、再発時には追加のステロイドや免疫抑制剤が必要となります。
- つまり、irPの再発はがん治療の遅延や中断につながるリスクになります。
- しかし、どのような患者がirPを再発しやすいのかについて、確立されたエビデンスは存在しません。一部の後ろ向き研究では、「プレドニゾロン換算で15 mg/日未満の投与が4週間未満で終了すると再発リスクが上昇する」との報告がありますが、十分な根拠とは言えません。
- この研究では、この研究グループで過去に実施された前向き第II相試験の長期追跡データを解析し、irPの再発リスク因子を特定することを目的としています。
先行研究の論文は<こちら> - 特に、6週間のプレドニゾロン漸減療法を受けた患者における再発率を評価し、どのような因子が再発に関与しているのかを明らかにすることが研究の中心となっています。
- 「どんな患者がirPを再発しやすいのか?」— その答えを、最新の研究結果とともに詳しく勉強していきます!
研究の背景と目的
- 免疫関連肺臓炎(irP)は、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)による免疫関連有害事象(irAE)の中でも特に重要なものの一つである。
- irPはコルチコステロイド治療後に再発することが多く、がん治療の継続に影響を及ぼす。
- しかし、irPの再発リスク因子は明らかになっていない。
方法
- 本研究は、第II相試験の追跡解析であり、56名のグレード2以上のirP患者を対象に行われた。
- 患者は1 mg/kg/日の経口プレドニゾロン療法を6週間受けた。
- Fine–Gray検定を用いて、患者背景、血液検査所見、プレドニゾロン療法の反応性などの臨床因子とirP再発の関連を解析した。
結果
- 56名のirP患者のうち、22名(39.3%)が6週間のプレドニゾロン療法後にirPを再発した。
- 多変量Fine–Gray検定の結果、以下の因子がirP再発の有意なリスク因子であることが判明した。
- 放射線画像での器質化肺炎(OP)パターン(ハザード比[HR] = 3.17, 95% 信頼区間[CI] 1.37–7.32, p = 0.007)
- ICI開始からirP発症までの期間が100日以上(HR = 2.61, 95% CI 1.01–6.74, p = 0.048)
- 他の患者背景、血液検査所見、irPの重症度、プレドニゾロン療法への反応はirP再発とは関連しなかった。
結論
- 6週間のプレドニゾロン療法を受けたirP患者において、OPパターンおよび100日以上の発症期間はirP再発リスクと関連していた。
- これらのリスク因子を考慮することで、irPの管理に役立つ可能性がある。
- 本研究では、ICIによるirPの再発リスクを検討しました。6週間のプレドニゾロン治療後の長期フォローアップにより、「OPパターンを示すirP」と「ICI開始から100日以上で発症したirP」が再発しやすいことが明らかになりました。
- 再発したirPはすべて再治療により改善し、再発による死亡例がなかったことは重要な知見です。
- しかし、プレドニゾロン治療終了後の抗がん剤再開率は、再発群(45.5%)と非再発群(64.7%)の間で有意差はなかったものの、再発群の方がやや抗がん剤治療再開率が低い傾向がみられました。有意差がでなかったのは、この研究のサンプルサイズが小さかったことが影響していたのではないかと推測されます。
- この傾向が将来的な大規模研究でも確認されれば、irPの再発そのものががん治療の継続を妨げ、最終的に予後に影響を及ぼす可能性があると考えられます。そのため、irPの再発をいかに防ぐかが今後の課題となります。
- 今回の研究で明らかになった再発リスク因子を持つ患者では、標準的な6週間のステロイド治療では不十分である可能性が示唆されており、より長期のステロイド治療や慎重な管理が必要と考えられます。
- 再発リスクに応じた個別化治療を進め、患者が安全にがん治療を継続できるような管理方法を確立することが重要ですね。
- 私も明日からは、「OPパターンを示すirP」や「ICI開始から100日以上で発症したirP」について、抗がん剤治療の再開に支障をきたさない範囲で、初期のステロイド治療期間を6週間より長めに設定するなど、より慎重な対応を心がけたいと思います。