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肺癌や悪性腫瘍論文紹介

EGFR変異肺がんの“次の一手”―Datopotamab Deruxtecanの可能性

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新しい選択肢に注目: EGFR変異NSCLCに対するADC「ダトロウェイ®(Datopotamab Deruxtecan)」

A pooled analysis of datopotamab deruxtecan in patients with EGFR–mutated NSCLC. Myung-Ju Ahn, et al. Journal of Thoracic Oncology 2025.

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はじめに

🔹Datopotamab Deruxtecan(Dato-DXd)の日本での商品名と適応

項目内容
商品名(日本)ダトロウェイ®(Datroway®)
製造販売元第一三共株式会社(Daiichi Sankyo Co., Ltd.)
承認年月2024年12月(日本)
承認適応(2025年6月現在)ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん(既治療)
非小細胞肺がん(NSCLC)への適応未承認(現在は臨床試験中)

✅ 現時点では「肺がん」に対する使用は保険適用外ですが、本論文で取り上げられているのはその肺がん適応の可能性を探る研究です。

EGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)は、特に日本や韓国などアジアで頻度が高いタイプの肺がんです。

治療の第一選択はオシメルチニブのようなEGFR阻害薬(TKI)ですが、多くの患者さんがいずれ薬剤耐性を獲得してしまい、進行してしまいます。

こうした中で注目されているのが、抗体薬物複合体(ADC)という新しい治療アプローチです。

ダトロウェイ®(Datopotamab Deruxtecan, Dato-DXd)は、日本で乳がん(HR陽性HER2陰性)治療薬としてすでに承認されているADCで、TROP2というタンパク質を標的とします。

本研究は、EGFR変異を持つ進行肺がんの患者さんに対して、ダトロウェイ®がどの程度効果があるか、安全かを調べるための解析です。

背景

本解析は、EGFR変異を有する進行/転移性非小細胞肺癌(NSCLC)患者に対するdatopotamab deruxtecan(Dato-DXd)の治療効果を評価するものである。

方法

本解析は、第II相試験TROPION-Lung05(NCT04484142)および第III相試験TROPION-Lung01(NCT04656652)のデータを統合して実施された。

対象は、EGFR遺伝子変異を有し、標的療法およびプラチナ製剤を含む化学療法の既治療歴を有する進行/転移性NSCLC患者である。

患者は、Dato-DXd 6 mg/kg(3週間ごと)を投与された。

評価項目には、盲検独立中央評価による客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、および安全性が含まれる。

結果

Dato-DXdを投与されたEGFR変異患者117名が解析対象となった。

患者は高度に前治療されており(中央値:3レジメン)、69%がアジア人であった。

主要なEGFR変異はexon19欠失(51%)、L858R(32%)、T790M(27%)であった。

ORRは43%(95%信頼区間 [CI]: 34–52)で、完全奏効5例(4%)を含んだ。

DOR中央値は7.0か月(95% CI: 4.2–9.8)、PFS中央値は5.8か月(95% CI: 5.4–8.2)、OS中央値は15.6か月(95% CI: 13.1–19.0)であった。

Dato-DXdの安全性プロファイルは既存の試験と一致しており、

新たな安全性シグナルは認められなかった。

有害事象(AE)のうち、グレード3以上の治療関連AEは23%、重篤なAEは6%に認められた。

結語

Dato-DXdは、EGFR阻害薬および化学療法後に増悪したEGFR変異陽性NSCLC患者において、臨床的に意義のある活性を示し、忍容可能な安全性プロファイルを有していた。


感想です。

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どんな結果だった?

研究対象となったのは、117名のEGFR変異NSCLC患者さんです。多くはオシメルチニブやプラチナ系化学療法の既治療例でした。

主な治療効果(効果指標)

指標結果
奏効率(ORR)43%(うち完全奏効 4%)
奏効期間(DOR)中央値 7.0か月
無増悪生存期間(PFS)中央値 5.8か月
全生存期間(OS)中央値 15.6か月

また、EGFR耐性変異(T790M)や複数の変異を持つ患者さんでも、一定の効果が確認されています。

安全性に関して

  • 口内炎・口腔粘膜炎:69%、うちGrade 3以上は9%
  • 眼障害(ドライアイ・視力低下など):32%
  • 間質性肺疾患(ILD):4%(重篤例なし)

治療中止に至ったケースは少なく、乳がん治療での知見とも一貫した、安全性が確保された使用が可能であることが示されました


この研究からわかること

これまでEGFR-TKIと化学療法の後は、治療選択肢が非常に限られていました。

しかし今回の研究では、ダトロウェイ®(Dato-DXd)がその“次の一手”になり得ることが示されました。

特に注目すべき点は:

  • EGFR耐性変異(T790M)を含む症例にも効果あり
  • オシメルチニブ使用歴があっても効果は持続
  • 副作用は予測可能でコントロール可能な範囲

現時点でNSCLCへの適応は未承認ですが、すでに乳がんで承認されている薬であることから、実臨床への移行も比較的スムーズになる可能性があります。


🧭臨床現場でどう活かす?

ダトロウェイ®は、EGFR変異NSCLC患者に対する3次・4次治療として有望な候補かもしれません。

例えば、

  • オシメルチニブ → プラチナ製剤 → 免疫療法不応…
    と来た患者さんに、比較的安全に再チャレンジできる治療薬として選択肢が広がる可能性があります。

「EGFR変異があってももう打つ手がない」という状況を変える、一歩先の治療になり得ますね。



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