High Flow Nasal Oxygen and Low Flow Oxygen Are Equally Effective in Providing Oxygenation During Bronchoscopy Under Conscious Sedation: A Randomised Controlled Trial. Georgia Burton et al. Respirology, 2025.
はじめに

気管支鏡検査やEBUS(気管支超音波検査)は、肺がんやリンパ節病変の評価でよく使いますよね。
ただし、検査中は鎮静薬による呼吸抑制や気道閉塞の影響で、酸素飽和度(SpO₂)が下がることがあります。
これまでも酸素投与はされていましたが、方法はまちまちで、「低流量酸素(LFO:鼻カニュラなど)」と「ネーザルハイフロー酸素療法(HFNO:加湿された酸素を高流量で送る)」のどちらが良いかは、はっきりしていませんでした。

HFNOは、PEEP効果や加湿・加温による気道維持、一定濃度の酸素供給などの理論的メリットがありますが、これまでの研究は小規模だったりFiO₂(酸素濃度)が統一されてなかったりと、結果の信頼性に問題がありました。
この研究は、実臨床に近い状況でHFNOとLFOを公平な条件(FiO₂=28%)で比べたところに意味があります。
背景
気管支鏡検査中には、LFOを使用しても酸素飽和度の低下や低酸素血症がよく見られる。
一部の研究者は、HFNOが酸素化を改善する可能性があると報告しているが、試験ごとに方法論や対象患者にばらつきがある。
広範な患者層におけるHFNOの有効性や、臨床医・患者の満足度などの他の要素についての検討は不足している。
本研究では、HFNOがLFOに比べて酸素飽和度の低下や低酸素血症、酸素濃度の調整回数、呼吸数、咳嗽の頻度を減らすかを検証した。
また、医師・患者の満足度についても評価した。
方法
意識下鎮静で診断的気管支鏡検査またはEBUSを受ける患者を対象に、LFO群またはHFNO群へ無作為に割り付けた。
生理学的モニタリング装置、電子カルテ、アンケートによってデータを収集した。
主要評価項目は、SpO₂が90%未満であった時間である。
結果
最終的に121人の参加者が解析対象となった。
全体としてLFO群(n=61)とHFNO群(n=60)の間で酸素化や酸素飽和度の低下には有意差がなかった。
これは気管支鏡検査(n=75)およびEBUS(n=46)を個別に解析しても同様であった。
HFNOはEBUSにおいて呼吸数を有意に低下させた(p < 0.05)。
気管支鏡検査ではHFNO使用時の医師の満足度が高かった(p < 0.05)。
酸素調整の必要頻度はHFNOで少なかったが、統計的有意差には至らなかった。
咳嗽の頻度には差はなかった。
結語
本研究対象において、気管支鏡検査およびEBUS中の酸素化維持に関して、LFOとHFNOは同等であった。
HFNOは気管支鏡検査において医師の満足度が高く、EBUSでは呼吸数の低下という生理学的な利点がある可能性がある。

勉強したいと思います!!
どんな結果だったか?
結論から言うと、「酸素化を保つ」という観点ではHFNOもLFOもほぼ同等でした。
主な結果をざっくりまとめます👇
評価項目 | 結果 | コメント |
---|---|---|
SpO₂<90%の時間 | HFNOもLFOも約25〜55秒 | 差なし |
呼吸数(EBUS) | HFNOで有意に低下(約2.5回/分) | これは興味深いですね |
酸素調整の頻度 | HFNOの方が少なかったが有意差なし | 実感としてはわかる気がします |
医師の満足度(気管支鏡) | HFNOの方が高い | 実際、扱いやすいという声が多かったようです |
咳嗽・患者の快適さ | 両群に差なし | 患者さんにとってはあまり違いがなさそう |
この研究から何が読み取れる?
この研究の面白いところは、「HFNOの方が酸素化に優れている」というこれまでの説にストップをかけた点です。
その理由としては:
- 本研究ではFiO₂を28%に統一して比較したため、これまでのように「HFNOのFiO₂が高かったから酸素化が良かった」という単純な比較ではないこと。
- リアルワールドの設定(一般病院の検査室、意識下鎮静)だったため、結果の汎用性が高い。
ただし、HFNOはEBUSでの呼吸数を有意に下げたり、医師の満足度が高かった点は無視できません。
これは「操作性が良い」「酸素調整の手間が少ない」といった手技中の安心感につながっている可能性がありますね。
限界と注意点
- 呼気CO₂(換気状態)の評価がされていない
→ HFNOはCO₂の除去にも関係するので、そこを評価していないのはやや物足りないですね。 - HFNOの流量は40 L/minに固定
→ 患者によっては、もう少し高い流量が有効な可能性もあります。柔軟性がない設定でした。 - 酸素濃度(FiO₂)はLFO群では「推定値」
→ これも精度に影響します。正確なFiO₂の実測が理想です。 - 臨床医の判断で酸素調整がされていた
→ 自然な現場感はあるものの、研究としてのコントロール性にはやや欠けます。
実臨床にどう活かす?
LFOでもHFNOでも酸素化は問題ない
→ 無理して高価なHFNO機器を用意しなくてもOK。特に予算や設備に限りがある施設では重要な情報です。
HFNOは「操作のしやすさ」や「呼吸数の安定性」で利点あり
→ 咳が少ない患者や、検査中の酸素調整が頻繁になるのを避けたい場合には、HFNOが良い選択肢になります。
COPDや肺機能が低い患者ではHFNOの有用性を再評価する余地あり
→ 本研究では明確にその層を評価していないので、今後の研究に期待ですね。

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