Idiopathic nonspecific interstitial pneumonia: report of an American Thoracic Society project. Am J Respir Crit Care Med. 2008 Jun 15;177(12):1338-47.
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特発性NSIPは膠原病の前触れ?
診断後も続く、見逃せない自己免疫疾患の兆候
はじめに:NSIP診断では膠原病の除外が必須
特発性NSIP(Idiopathic Nonspecific Interstitial Pneumonia)は、特発性間質性肺炎(IIPs)の一つであり、他の原因が除外されたうえで診断されます。そのため、診断時には徹底的な膠原病の除外が必要です。


2008年のATSレポートでは、以下のような特徴が報告されています。
- 中年の女性・非喫煙者に多い
- Raynaud現象、関節痛、自己抗体陽性など膠原病を疑わせる特徴を有する患者が一定数存在
- 抗核抗体陽性率:43%、リウマチ因子陽性率:23%
- 表3(Table 3)には、67例のiNSIP患者における臨床特徴が詳述されており、膠原病を完全に否定できないケースが多数含まれていたことが示唆されています。
主要研究から見る、NSIPと膠原病発症の関係
以下の表に、各論文における膠原病発症率と特徴をまとめました。
論文 | 対象 | 平均フォロー期間 | 膠原病の新規発症率 | 発症した疾患の内訳 |
---|---|---|---|---|
Xu et al. (2014) BMC Pulmonary Med | NSIP 97例 | 54ヶ月 | 5.2%(新規) 診断時23.7% → 計28.9% | 多発筋炎(3例) 強皮症(1例) 顕微鏡的多発血管炎(1例) |
Kono et al. (2016) Respir Med | NSIP 72例 (うち特発性NSIP 35例) | 約2年 | 17.1%(特発性NSIP群) | 皮膚筋炎(3例) Sjögren症候群重複(2例) 関節リウマチ(1例) |
Romagnoli et al. (2011) Eur Respir J | 特発性NSIP 27例(外科的肺生検) | 59.7ヶ月 | 52% | 自己免疫性甲状腺炎(7例) 未分化膠原病(6例) 明確な膠原病(3例) |
※Romagnoliらの研究では、甲状腺炎も含めた「自己免疫疾患」として集計。
NSIP診療における注意点と実践ポイント
NSIP診断後も油断せず、膠原病の発症に備える
- 初期診断で膠原病の所見がない場合でも、後年発症する例が一定数存在。
- 定期的な自己抗体検査と身体所見の再評価が推奨されます。
皮膚筋炎、Sjögren症候群、RAなどが多い
- 特に、筋炎症状(筋力低下、CK上昇)や皮疹、乾燥症状、関節症状が発症しないかどうか注意が必要ですね。私もNSIP患者さんには必ず上記の症状の有無を定期外来で聞いています。
予後への影響は研究によりまちまち
- Xuらの研究では、膠原病の有無で予後に差があるとされましたが、
- Konoら、Romagnoliらでは有意な差は報告されていません。
病理学的な評価の重要性
NSIPの診断には、外科的肺生検による病理診断が鍵となります。
中でもリンパ球の集簇やリンパ濾胞形成がやたら目立つ場合には、膠原病の関与を示唆する可能性があります

最後に
これまでの研究結果を踏まえると、特発性NSIPの中には、膠原病の前段階である患者さんが一定数含まれていると考えられます。
このように遅れて膠原病が発症した場合には、特発性NSIPからその膠原病に関連したNSIPと診断名が変更になります。
診断後も定期的な経過観察と再評価を継続し、早期に膠原病を発見し適切な治療に結びつけることが重要です。
🔍 ポイント:NSIP=診断して終わりではない。むしろ、そこからがスタート。膠原病の「前触れ」としての可能性を意識した診療を!