「論文のテーマは決まって結果もでた。でもIntroductionをどう書き始めればいいかわからない…」そんな方へ。
論文のIntroductionは、単なる背景説明ではなく、論文全体の「伏線」 となる重要なパートです。ここで読者を惹きつけ、スムーズに論文の流れへと導くことが求められます。
では、どのように書けばよいのでしょうか?
ポイントは イントロ内で起承転結 を意識することです。
- 起:背景(対象疾患など)を簡潔に説明する
- 承:研究のテーマに関連する要素(注目しているイベント、リスク因子、バイオマーカーなど)を導入する
- 転:現時点での課題やギャップを明確にする
- 結:本研究の目的を提示する
※ 上級者は“承”と“転”の構成を柔軟に調整してもOK。
承で起の補足を行い、転で「テーマに関連する要素」の説明と問題提起を一気に展開する方法もあります。ただし、“起”と“結”は基本的にこの流れを意識して書く と、Introduction全体のバランスが整いやすくなります。
これは私の考えであり、他にもさまざまな書き方があると思いますが、論文執筆のヒントとして参考にしていただけると幸いです!
論文のIntroductionは「伏線」として意識する

- 良い論文にはストーリー性があり、優れたIntroductionは論文全体の「伏線」となります。その伏線が後の結果や考察で回収されると、読者は「なるほど」と納得し、良い意味での驚きにつながります。
- 論文全体では「起(Intro)・承(Methods)・転(Results)・結(Discussion)」の流れを意識することが重要ですが、優れた論文では各セクション内にも起承転結が明確に構成されています。

ポイントは イントロ内であっても、起承転結 を意識することです。
- 起:背景を簡潔に説明する
- 承:研究テーマに関連する要素(注目しているイベント、リスク因子、バイオマーカーなど)を導入する
- 転:現時点での課題やギャップを明確にする
- 結:本研究の目的を提示する
たとえば、臨床研究・基礎研究の両方において、Introductionの構成の例を考えてみます。
※ 上級者は“承”と“転”の構成を柔軟に調整してもOK。
承で起の補足を行い、転で「研究のテーマに関連する要素」の説明と問題提起を一気に展開する方法もあります。ただし、“起”と“結”は基本的にこの流れを意識して書く と、Introduction全体のバランスが整いやすくなります。
特発性肺線維症(IPF)を対象とし、急性増悪の発症が死亡率に与える影響を調査する臨床研究
Introductionの構成
- 起:IPFの概要を説明し、慢性進行性の線維化疾患であることや、予後が不良であることを伝えます。また、現在の治療選択肢について簡単に触れ、読者がIPFの基本的な知識を持てるようにします。
- 承:IPFにおける急性増悪(AE-IPF)が主要な死亡原因の一つであることを述べます。さらに、急性増悪がどのような病態であり、発症後の予後が極めて不良であることを説明し、論文全体の伏線となるよう意識します。
- 転:これまでの研究では、急性増悪のリスク因子や死亡率への影響に関するデータが十分に蓄積されていないことを指摘します。また、特定の患者群での急性増悪発症率や、それによる死亡率の詳細な検討が不足していることを示し、本研究の必要性を強調します。
- 結:本研究の目的として、「IPF患者における急性増悪の発症が死亡率に与える影響を調査する」ことを明確に述べます。また、必要に応じて副次的な目的(例:特定のリスク因子が急性増悪の発症に与える影響の検討)についても言及します。
このように、Introductionの段階で「急性増悪はIPFの転帰において重要な要素であるが、十分に解明されていない」という伏線を張ることで、読者の関心を引きつけ、論文全体の流れをスムーズに導くことができます。
COPDを対象とし、NPPVやサルコペニアが予後に与える影響を調査する臨床研究
IPFの例では「あるイベント(急性増悪)」が焦点となりましたが、論文によっては「特定の医療行為」や「リスク因子」が対象となる場合もあります。その例として、COPD患者におけるNPPV(非侵襲的陽圧換気)やサルコペニアが予後に与える影響を調査する研究のIntroductionを考えてみます。
COPDとNPPVの関係を調査する場合
Introductionの構成
- 起:COPDの概要を説明し、進行性の気流制限を特徴とする疾患であることを述べます。また、急性増悪時の呼吸不全管理の重要性について言及します。
- 承:NPPVはCOPD急性増悪に対する有効な治療法の一つであり、人工呼吸管理を回避するために推奨されていることを説明します。しかし、その適用基準や予後への影響には施設間でばらつきがあることを示します。
- 転:これまでの研究では、NPPV使用の適切なタイミングや長期的な効果について一貫した結論が得られていないことを指摘します。特に、どの患者群にとってNPPVが最も有効か、死亡率や再入院率への影響がどの程度かは明確でない点を強調します。
- 結:本研究の目的として、「COPD患者におけるNPPVの使用が予後(死亡率や再入院率)に与える影響を評価する」ことを明確に述べます。副次的な目的として、患者背景ごとのNPPVの有効性の違いを検討する可能性も示します。
COPDとサルコペニアの関係を調査する場合
Introductionの構成
- 起:COPDは全身性炎症を伴う疾患であり、呼吸筋だけでなく全身の筋力低下も合併することが知られています。
- 承:近年、COPD患者ではサルコペニア(筋肉量の減少を伴う状態)が重要な予後因子となることが示唆されています。サルコペニアがCOPD患者の身体機能低下や入院リスク増加に関連する可能性があることを説明します。
- 転:しかし、COPDにおけるサルコペニアの発症率や、それが死亡率や入院リスクに及ぼす影響については、まだ十分に検討されていません。さらに、サルコペニアの診断基準や評価方法にはばらつきがあり、一貫したデータが不足しています。
- 結:本研究の目的として、「COPD患者におけるサルコペニアの有病率と、それが予後に与える影響を検討する」ことを明確に述べます。また、副次的な目的として、サルコペニアが肺機能や生活の質(QOL)に及ぼす影響についても考察する可能性を示します。
肺線維症における分子Aが治療標的となる可能性を検討する基礎研究
Introductionの構成
- 起:肺線維症は進行性の線維化を伴い、現在有効な治療法が限られている疾患です。線維化のメカニズム解明と新規治療標的の探索が重要です。
- 承:分子Aは、先行研究や予備的データで肺線維症の病態に関与している可能性が示唆されています。また、異なる疾患領域では、分子Aが特定の細胞機能や炎症応答に関与することが報告されています。
- 転:肺線維症の進展と分子Aの機能が関連する可能性があるものの、その詳細なメカニズムはまだ解明されていません。
- 結:本研究の目的として、「分子Aが肺線維症の進行にどのように関与し、治療標的となり得るか」を検討することを明確に述べます。
まとめ

Introductionは、論文全体の流れを決定づける重要なパートであり、単なる背景説明ではなく、「伏線」 を意識して構成することで、読者にとってわかりやすく、説得力のある論文になります。
- IPFを対象とする場合:急性増悪というイベントを軸に構成
- COPDを対象とする場合:NPPVのような医療行為、またはサルコペニアのようなリスク因子を軸に構成
- 基礎研究:肺線維症のメカニズム、分子Aの機能、その治療標的としての可能性を軸に構成
Introductionを考える際は、この構成をテンプレートとして活用してみてください。
皆さんの研究対象となる疾患や、注目するイベント、医療行為、リスク因子、バイオマーカーに置き換えて考えることで、よりスムーズに構成を組み立てられるはずです。

どちらのケースでも、「起」では全体の背景を説明し、「承」で研究のテーマとなる要素を提示、「転」で問題提起を行い、「結」で研究目的を述べる という流れを意識すると、Introductionの完成度が向上します。
このように、Introductionを単なる情報の羅列ではなく、論文全体のストーリーを支える「伏線」として構築することで、よりインパクトのある論文に仕上げることができるでしょう。
以上は私の考えであり、他にもいろいろな流派があると思いますが、参考にして頂けると幸いです。