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深掘り感染症いろいろ解説

🫁 若手医師のためのニューモシスティス肺炎:HIV陰性患者における臨床像

〜HIV陽性PCPとの違いを理解する〜

引用;Up-to-Date:Epidemiology, clinical manifestations, and diagnosis of Pneumocystis pneumonia in patients without HIV

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PCP・PJPを押さえておこう

  • ニューモシスティス肺炎は Pneumocystis jirovecii によって引き起こされる肺炎で、典型的には 免疫抑制状態(HIV感染例、長期ステロイド投与、造血器腫瘍、臓器移植後など)において発症します。
  • 英語では Pneumocystis pneumonia と呼ばれ、かつて病原体が Pneumocystis carinii とされていた時代には PCP(Pneumocystis carinii pneumonia) の略称が用いられていました。
    その後、病原体の学名が Pneumocystis jirovecii に改訂されたことから、現在ではより正確な表記として PJP(Pneumocystis jirovecii pneumonia) が一般的です。
  • ただし、“Pneumocystis pneumonia” の頭文字を取った PCP という略称も、臨床現場や文献中でなお広く使用されています。

非HIV患者では「急性発症・重症化」がキーワード

HIV陰性の患者におけるPCPは、発症が急で、重症化しやすいという特徴があります。
臨床現場では「普通の肺炎より進行が早い」「ステロイド中の患者で突然呼吸状態が悪化した」などの印象を持つケースが多いでしょう。

主な症状

  • 発熱
  • 乾性咳嗽(痰がほとんど出ない)
  • 進行性に悪化する呼吸困難

発症から数日〜数週間のうちに、急速に低酸素血症や呼吸不全に至ることもあります。
特に免疫抑制薬・ステロイド治療中の患者では進行が早く、入院後わずか数日で人工呼吸管理を要することもあります。


稀ではあるが「肺外感染」も

肺以外の臓器に感染が及ぶ肺外PCPはまれですが、報告例として以下の部位が知られています。

  • 肝臓
  • 脾臓
  • 骨髄
  • リンパ節
  • 甲状腺
  • 眼球

特に、吸入ペンタミジンによる肺への局所予防を行っているHIV患者では、肺外感染の報告が多いとされています。


画像の特徴:びまん性すりガラス影

画像所見として典型的なのは、

  • 両側びまん性の間質性陰影
  • すりガラス様陰影(Ground-glass opacity; GGO)

HRCTではこのGGOが高頻度にみられ、症状の進行に伴って斑状影が融合し、広範囲な浸潤影を呈することもあります。
詳細な画像診断の解説は別記事で紹介していますが、“GGO+免疫抑制状態”という組み合わせでは常にPCPを疑う姿勢が大切です。


HIV陽性と陰性のPCP:臨床経過の対比

特徴HIV陽性PCPHIV陰性PCP
発症様式亜急性(数週〜数か月)急性(数日〜数週間)
進行スピード緩徐急速に悪化
呼吸不全遅れて出現することが多い早期に出現、重症化しやすい
症状徐々に進行する咳・発熱・倦怠感急な呼吸困難・発熱・乾性咳嗽
酸素化障害軽度〜中等度重度の低酸素血症が多い
予後治療後の改善が比較的良好治療遅れで致死率が高い(30〜50%報告あり)

HIV”陽性”患者では慢性的な免疫抑制(CD4低下)により徐々に発症する一方、
HIV”陰性”患者では急激な免疫抑制(例:ステロイド増量、化学療法開始、移植後など)を契機に一気に発症・悪化します。


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若手医師へのアドバイス

「発熱+乾性咳嗽+呼吸困難」
この3つが免疫抑制患者に揃ったら、まずPCPを疑う。

一般的な肺炎(細菌性やウイルス性)と比べて、

  • 痰が少ない
  • 進行が速い
  • 画像が非典型的(すりガラス影主体)

という点を常に意識しましょう。
診断の遅れが転帰を左右する感染症です。
特にステロイド治療中・造血幹細胞移植後・生物学的製剤併用中の患者では、PCPを“鑑別リストの上位”に置くことが重要です。


まとめ

HIV陰性PCPは、HIV陽性PCPと異なり、進行が速く・重症化しやすい疾患です。
免疫抑制療法を受けている患者で上記の症状を見たら、
“もしかしてPCPかもしれない”という直感を持ち、
早期の画像評価と診断検査(PCR・β-Dグルカンなど)につなげましょう。


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