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その他間質性肺疾患論文紹介

性について、患者さんに聞いていますか? ―肺線維症と性機能障害の関係を探る―

衝撃的なタイトルですみません。性について話すこと。
それは、私たち呼吸器内科医にとっても、患者さんにとっても、決して簡単なことではありません。
特に若年の肺線維症患者さんでは、パートナーとの関係性や将来の不安など、性に関する悩みが複雑に絡み合う傾向があります。
このようなニーズにどう応えるか。

The Impact of Pulmonary Fibrosis on Sex and Sexual Function – A Multinational Mixed Methods Study.
Avitzur N, et al. Eur Respir J. 2025.

以下上記の論文から引用します。

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はじめに

この研究では、肺線維症(PF)という慢性・進行性の呼吸器疾患が、患者の性行動や性機能にどのような影響を及ぼしているかに焦点を当てています。

PFは、呼吸困難や慢性咳嗽、疲労などの症状があり、QOLの低下に直結します。

そのため、性行動という日常生活の質に直結する側面がどう影響されるのかを明らかにするのはとても重要です。

実際にPF患者の多くが「性に関するサポートがほしい」と感じているにもかかわらず、これまでの研究は一部の男性や女性に限定されていたり、小規模だったりしていました。

これまで十分に扱われてこなかった心理・社会的側面に光を当てた点がこの研究の特徴ですね。

背景

性行動は多くの成人にとって重要な生活の一部であるが、肺線維症(PF)などの慢性呼吸器疾患により性機能が影響を受ける可能性がある。

目的

本研究では、PFが性行動および性機能に及ぼす影響を、量的・質的両面から明らかにすることを目的とした。

方法

患者レジストリ、臨床研究、オンライン調査、個別インタビューのデータを分析し、PFが性関連のQOLに与える影響を説明する概念的枠組みを構築した。

使用した評価ツールは、

  • UCSD-SOBQ(息切れ評価)、
  • SPARC(緩和ケアニーズ評価)、
  • CSFQ(性機能評価)である。

インタビューはテーマ分析で解析した。

結果

登録患者2,759人中2,054人(74%)が性行動時の息切れを報告し、これは、

  • 男性、
  • FVC低値、
  • DLCO低値、
  • 咳の重症度

と関連していた。

臨床コホート225人中52人(23%)が性行動への影響による苦痛を訴え、これは、

  • 若年、
  • 男性、
  • DLCO低値、
  • 咳の悪化

と関連した。

オンライン調査では、女性の83%、男性の86%が性機能障害を有していた。

インタビューでは、性行動の制限、人間関係の変化、QOLへの影響などのテーマが浮かび上がった。

すべての参加者が信頼できる医療者と性に関する話をしたいと望んでいた

結語

PF患者は性行動に従事しているが、PFが性行動に与える影響(身体的および心理的)は深刻であり、性機能障害は多面的な疾患度面韻によって生じている。

性の健康は包括的な患者ケアにおいて重要な要素である。


勉強してみます。

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どういう結果だったの?

性行動への影響は想像以上に深刻だった・・・

CARE-PF(カナダ)の登録患者(n=2,759)では…

  • 74%が「性行動中に息切れ」を経験
  • 息切れが強い人は、FVC%、DLCO%が低く、咳のスコアも高い傾向
  • 男性の方が有意に多く息切れを訴えていた

PROFILE(英国)の臨床患者(n=225)では…

  • 23%が「性に関連した苦痛」を報告
  • 特に、若年男性・DLCO低値・咳が重い人に多い

オンライン国際調査(n=140)では…

  • 性機能障害の有病率:男性86%、女性83%
  • すべての言語圏(英語・スペイン語・フランス語・オランダ語)で一貫した結果
  • 高齢・酸素使用者に多い傾向

インタビューから見えてきたこと

  • 「性行動が制限された」「羞恥心や自己否定感」「パートナーとの関係悪化」など
  • 全員が「信頼できる医師に性の悩みを話したい」と回答

考察|QOL全体への波及を見逃さない

患者さんは病気による身体的制限だけでなく、心理的ストレス、関係性の変化、薬の副作用(例:抗線維化薬の嘔気や下痢)など、多角的に性機能の低下を経験しているようです。

また、「性行動に関する困難は、肺機能が悪い人ほど強い」というデータからは、呼吸リハビリや症状コントロールの重要性を改めて感じさせますね。


臨床にどう活かすか?

  • 性に関する悩みは、患者さんにとって非常に大切なQOLの一要素です。「信頼できる医師に性の悩みを話したい」と思っている患者さんも多い。だからこそ、医療者の側からも、可能な範囲で積極的に問いかける姿勢が求められるかもしれません。
  • 咳や息切れの症状のコントロール、酸素療法の最適化は、性行動への支援にもつながる可能性があります。呼吸器リハビリテーションのプログラムに、性に関する教育やカウンセリングの要素を取り入れることも、有効な手段となるかもしれません。
  • 若年のPF患者さんにとっては、性的な悩みはより深刻な問題になりやすく、精神的な負担も大きいと考えられます。しかしながら、現在の日本の医療現場や啓発パンフレットの多くでは、こうした視点はまだ十分に反映されていません。特に高齢の患者さんを主な対象とした資料には、性に関する項目が含まれていないのが現状ですのでこの点の改善が必要かも。
  • 現時点では、まとまったエビデンスや標準的な対応法が確立されているわけではなく、個々のケースに応じた対応が求められます。今後、こうした悩みに真正面から向き合い、より包括的なケアにつなげていく取り組みが必要になるでしょう。

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