強皮症は日本では全身性硬化症と呼び名が変わりましたね。ただし、指定難病ではまだ強皮症のままです。
Lung function and skin fibrosis changes as predictors of survival in SSc-associated interstitial lung disease: a EUSTAR study. Vincent Sobanski et al. Rheumatology 2025.
はじめに

全身性強皮症(SSc)に合併する間質性肺疾患(ILD)は、SSc患者における主要な死因の一つです。
実際、SSc患者の半数以上がILDを発症し、15〜33%がこれにより命を落とすと報告されています。
特に診断後数年以内に肺機能(FVCやDLCO)が低下することがあり、進行性の線維化が認められるケースも少なくありません。
しかし、全ての患者が同じように進行するわけではなく、進行する患者を早期に見極めることが大きな課題です。
そこで、治療選択においても、どの患者が高リスクなのかを見極めることが重要ですね。

これまでの研究では、短期の肺機能検査の変化(特にFVCやDLCO)が予後に関係する可能性が示唆されていましたが、皮膚線維化(mRSS)や指の潰瘍(DU)との関連性については不明でした。
本研究は、それらの指標の変化が死亡率とどのように関連するのかを、多施設の大規模コホート(EUSTAR)を用いて検証したものです。
背景・目的
本研究では、全身性強皮症に関連する間質性肺疾患(SSc-ILD)の主要な死亡原因となる状態において、肺機能、皮膚線維化、指潰瘍(digital ulceration, DU)の変化が死亡率の予測因子となるかを評価した。
方法
2009年以降にEUSTARデータベースに登録された成人SSc-ILD患者を対象とし、診断日、12ヶ月以内の評価訪問、さらなる訪問または死亡情報が記録されていることを条件とした。
肺機能(予測肺活量(FVC%pred)と一酸化炭素拡散能(DLCO%pred))、改訂Rodnan皮膚スコア(mRSS)、DUの変化について、年齢、性別、喫煙状況、免疫抑制療法で調整した多変量Cox回帰分析を用いて生存との関連性を検討した。。
結果
対象となった893人のSSc-ILD患者のうち、平均39ヶ月の追跡期間中に94人(10.5%)が死亡した。
12ヶ月以内にFVCが10%以上悪化した患者(78/638人)は、生存率が有意に低く(HR 3.81、95%CI: 1.67–8.66)、以下の複合指標も死亡と関連していた:
(i) FVC>10%の低下またはmRSSの悪化(HR 2.82、95%CI: 1.43–5.56)、
(ii) FVCが10%以上または5–9%低下し、DLCOが15%以上低下した場合(HR 3.42、95%CI: 1.68–7.00)。
一方、DLCO、mRSS、DUの単独変化は死亡率と有意な関連を示さなかった。
結語
12ヶ月間の肺機能および皮膚線維化の変化は、死亡リスク評価において考慮すべき重要な指標である。
これらの指標の安定化を目的とした薬物療法の効果は、今後の臨床試験で前向きに評価されるべきである。

勉強したいと思います!!
なにがわかったか?
🔺要注意ポイント①:FVCの10%以上の低下!
→ 1年以内にFVCが10%以上落ちた人は、死亡率が約4倍(HR 3.81)に上昇。
🔺要注意ポイント②:「複合的な悪化」もリスク!
以下のパターンでも死亡リスクが高まりました:
- FVCが5~9%下がって、DLCOが15%以上低下
- FVCが10%以上下がる or mRSSが5点以上かつ25%以上上がる
🧠つまり、1つ1つの変化より、複数の異常が合わさったほうがヤバいということですね。
⛔逆に、DLCO単独や指潰瘍だけでは、有意な予測因子にはなりませんでした
明日からの診療にどう活かす?
SSc-ILD患者をフォローアップする際に、FVCの変化を特に重視すべきであるということです。
たとえば、外来でFVCが前回より明らかに低下していた場合、以下のように対応する必要がありますね。
- 免疫抑制治療(MMFやステロイドなど)の強化を検討する
- 抗線維化薬(例:ニンテダニブ)導入の検討
- リスクを再評価(肺高血圧症や他の要因の検索)
皮膚線維化(mRSS)やDLCOも単独では弱いものの、FVCとの組み合わせでリスクが高まるため、複合的に評価する重要性も示されましたね。
<スマートフォンをご利用の皆さまへ>
他の記事をご覧になりたい場合は、画面下の「メニュー」や「サイドバー」からジャンルを選択してお楽しみいただけます。
また、気になる話題を検索することもできますので、ぜひご活用ください。
<PCをご利用の皆さまへ>
他の記事をご覧になりたい場合は、画面上部のメニューバーや画面右側のサイドバーをご利用いただき、気になる話題をお探しください。